能登半島地震で被災された方々に心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。冴えない中年男性のヨンタクが大災害後、マンションの住民代表に祭り上げられた。権力に魅入られた彼は次第に狂気を帯びていく。映画『コンクリート・ユートピア』でイ・ビョンホンがヨンタクを円熟味たっぷりに演じ、4回目の大鐘賞映画祭主演男優賞を受賞した。ヨンタクはイ・ビョンホンがこれまでに演じてきた役どころとはかなり違うが、どのようにアプローチして作り上げていったのか。SCREEN ONLINEではイ・ビョンホンにメールインタビューを実施し、たっぷりと語ってもらった。(取材・文/ほりきみき)

ヨンタクの裏の顔が露わになるシーンに注目してほしい

──オム・テファ監督の演出はいかがでしたか。

俳優はただ台本のセリフを言うだけでなく、作品の中で生きているキャラクターそのものにならなければならないと考えています。まさに俳優の努力が必要な部分です。私は"生きているキャラクター"になるために監督とたくさんの会話をするタイプで、オム・テファ監督ともよく話をしました。

監督は口数が少ない方なので、会話から演出を引き出したこともありました。普段、私は演技をするときにあれこれアイデアを出すのが好きなのですが、オム監督はそれを喜んで受け入れてくれました。

──具体的にはどのようなアイデアを出されましたか。

冒頭の辺りで住民が集まって代表を決める場面で、住民台帳に名前を書く時に‘ミ音(ム)'を先に書こうとして戸惑うヨンタクの姿です。大きなネタバレになりかねないものの、監督に提案しました。本当に細かい部分なのですが、そのシーンからヨンタクの全てが分かり、作品全体の流れが左右されるように感じることができます。オム・テファ監督もこのアドリブをとても気に入ってくれて、私としてもうれしかったです。

画像: ヨンタクの裏の顔が露わになるシーンに注目してほしい

──注目してほしいシーンとその理由を教えてください。

ヨンタクの裏の顔が露わになるシーンがあります。監督の演出とシーンの意図を知った時に、この物語にとって、とても良いシークエンスになると感じました。監督のポストプロダクションのおかげで、映画の中でも注目すべきシーンになったのではないかと思います。

他にも、韓国の観客は「アパート」を熱唱するシーンをとても気に入ってくれました。絵コンテがあったので、そのシーンを頭の中で描くことができ、感情的に演じるのに役立ちました。かなり長いテイクで撮ったシーンなのですが、とても盛り上がる曲でした。歌っている最中に突然過去がフラッシュバックして、再び現実に戻り、私の顔がクローズアップされます。その時の一瞬の感情の変化を監督が求めていたので、歌いながらも意識してその撮影に臨みました。

──本作で4回目の大鐘賞映画祭主演男優賞を受賞されました。受賞が決まったときのお気持ちをお聞かせください。

コロナ禍で劇場は大きな打撃を受けました。現在もまだコロナの影響が続いていますが、それでも多くの観客の方々が映画に興味を持ち、『コンクリート・ユートピア』を観覧してくださったことは本当に感謝の気持ちでいっぱいでした。

<PROFILE>
イ・ビョンホン

画像: 【インタビュー】『コンクリート・ユートピア』主演イ・ビョンホンが「ディテールを活かして自分とはまったく違う人物を演じた」と語る

1970年7月12日生まれ。1991年、TVドラマ「アスファルト、我が故郷」で俳優としてのキャリアをスタート。1995年『誰が俺を狂わせるか』で映画主演デビューし、同年に出演した『ラン・アウェイ -RUN AWAY-』との2作品で各映画賞の新人賞を受賞した。2000年には、『JSA』で第1回釜山映画評論家協会賞の主演男優賞を受賞。『甘い人生』(05)では映画評論家協会賞をはじめ3つの主演男優賞、翌2006年には韓国人俳優として初めてフランス政府から文化芸術勲章を授与され、確固たる地位を築き上げる。2009年『G.I.ジョー』でのハリウッドデビューを皮切りに、『ターミネーター:新起動/ジェニシス』(15)、『マグニフィセント・セブン』(16)などに出演。韓国を代表する俳優として世界的に活躍。近年では、Netflixドラマシリーズ「イカゲーム」(21)でのフロントマン役や『非常宣言』(22)での好演が話題となっている。

『コンクリート・ユートピア』全国公開中

画像: 1月5日(金)公開 『コンクリート・ユートピア』|本予告 youtu.be

1月5日(金)公開 『コンクリート・ユートピア』|本予告

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<STORY>
世界各地で起こった地盤隆起による大災害で一瞬にして壊滅したソウル。唯一崩落を逃れたファングンアパートには、居住者以外の生存者たちが押し寄せていた。救助隊が現れる気配は一向になく、街中であらゆる犯罪が横行し、マンション内でも不法侵入や殺傷、放火が起こりはじめる。危機感を抱いた住人たちは、生きるために主導者を決め、住人以外を遮断しマンション内を統制することに。臨時代表となったのは、902号室のヨンタク。職業不明で頼りなかったその男は、危険を顧みず放火された一室の消火にあたった姿勢を買われたのだった。

安全で平和な“ユートピア”になるにつれ、権勢を振るうヨンタクの狂気が浮かび上がる。そんなヨンタクに防犯隊長として指名されたのは、602号室のミンソン(パク・ソジュン)だ。妻のミョンファ(パク・ボヨン)はヨンタクに心服するミンソンに不安を覚え、閉鎖的で異様な環境に安堵しながら暮らす住民たちを傍目でみながら生活をしていた。生存危機が続くなか、ヨンタクの支配力が強まったとき、予期せぬ争いが生じる。そこで目にしたのは、その男の本当の姿だった………。

<STAFF&CAST>
監督:オム・テファ
出演: イ・ビョンホン、パク・ソジュン、パク・ボヨン、キム・ソニョン、パク・ジフ、キム・ドユン
配給:クロックワークス
© 2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CLIMAX STUDIO, INC. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:https://klockworx-asia.com/CU/

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