小説、映画、ミュージカルを経て「今につながる私たちの物語」が再映画化
1985年に公開された『カラーパープル』は大きな衝撃を持って世間に受け止められた。原作は黒人女性の人生を描いたピューリッツァー受賞の同名小説。
このシリアスな題材に、当時『E.T.』(1982)などで人気を集めていたスティーヴン・スピルバーグが挑んだことはあまりに意外で、「賞狙いだ」と揶揄され「黒人の世界を描き切れない」と物議を醸し、アカデミー賞で10部門11ノミネートされながら無冠に終わった。
しかし観客はこの映画が持つパワーを見逃さなかった。口コミで感動が広がり公開38日目に興行収入ランキング1位を獲得。その後5ヶ月以上のロングランヒットとなった名作が、ミュージカル映画となってスクリーンに登場する。
小説および2005年にブロードウェイ初演、2015年のリバイバルも絶賛されたミュージカル版を下敷きに、1985年版とミュージカル版に縁のあるスタッフ&キャストが結集。愛と再生を描いた「今につながる私たちの物語」だと感じさせてくれる映画は、ぜひスクリーンで目撃したい。
あらすじ|多くの苦難の中セリーは自分の価値を知る
1900年初頭の米国南部ジョージア州。父にメイド同然の扱いをされているセリーの唯一の支えは妹ネティだ。10代で父の子を2度出産し、子供たちを連れ去られたセリーは農家のミスターと望まない結婚。ネティも姉の家に身を寄せるが、ミスターの暴力から逃げて行方知れずになってしまう。
時が経ち、大人の女性に成長したセリーは人気歌手シャグとの交流を通して、初めて自分の価値に気づいていく。そしてある出来事をきっかけに人生が大きく動き出す。
色褪せない“シスターフッド”の物語
離れ離れになっても相手を思い続けるセリーとネティの姉妹、生き方はまるで違うのにお互いを理解し、信頼し合うセリーとシュグ、そしてソフィア。
彼女たちが絆を育み力強く人生を切り拓いていく姿は、時代を超えて共感を呼ぶはず。やがて自分を解放していくセリーと奇跡のようなラストは自己肯定感と多幸感に包まれて感動的だ。
注目ポイント
1. 主演はブロードウェイ版キャスト!
ミュージカル版のセリー役でブロードウェイデビューを飾ったファンテイジア・バリーノが同役を続投。不遇な日々の中でも希望を失わず、生きる力を蓄えていくような主人公の感情を、パワフルかつ透明感のある“芝居歌”で聴かせる。
出色はブロードウェイでショーストッパーとなった「I’m Here」。胸打つ歌唱にスクリーンの前で拍手を贈りたくなる。
2. 現代のサウンドも交えた集大成的な音楽
1985年版とミュージカル版の楽曲、新たなオリジナル曲を融合させつつ、ヒップホップなど現代のサウンドが投入された音楽は本作の最大の魅力。
セリーとネティが何があろうと魂は汚されないと歌う「Keep It Movin」は姉妹の前向きなスピリットを感じる軽快な曲。ソフィアのビッグナンバー「Hell No!」は彼女の不屈の精神に心を揺さぶられる。
3. 舞台のような躍動感! ダンスに演劇的手法
ダンスシーンには演劇的手法が生かされている。例えば前半の「Mysterious Ways」は町の人々が歌い、踊る1曲の間にセリーたちが育った町の背景がわかるとともに、舞台を見ているような躍動感!
セリーが少女から大人になるまでの時代を彩るのは、ゴスペルからブルース、ジャズへと移り変わる音楽だ。それはそのままアメリカの音楽の歴史と重なる。
登場人物
セリー(画像左)
(ファンテイジア・バリーノ/少女時代:フィリシア・パール・エムパーシ)
父に疎んじられた末に農家のミスターとの愛のない結婚。辛苦の中でもユーモアと希望を失わずに生きていく。
ネティ(画像右)
(少女時代:ハリー・ベイリー)
美しく賢いセリーの妹。父親からの虐待から逃れセリーの元に身を寄せるが、ミスターの暴力で姉と生き別れに。
ミスター
(コールマン・ドミンゴ)
ネティを妻にしたいと願っていたが彼女の父親に否定され、セリーと結婚。彼自身も父親との間に問題を抱えている。
ハーポ(画像右)
(コーリー・ホーキンズ)
ミスターの息子。父親とは対照的に、自分の意思をはっきりいうソフィアに惚れ込んで結婚。彼女に振り回される。
ソフィア(画像左)
(ダニエル・ブルックス)
黒人であること、外見にとらわれずに生きている型破りな女性。だが、ある出来事が人生に影を落とすことに。
シュグ
(タラジ・P・ヘンソン)
町の教会の娘。歌手として成功し恋愛に関して奔放。ミスターの家でセリーと出会い、彼女の人生に影響を与える。
このコラボに注目!
マルチな新鋭ブリッツ・バザウーレ
ガーナ生まれのミュージシャン・映画監督であるバザウーレは母国を舞台にした監督デビュー作『コジョーの埋葬』(2018)が高く評価され、ビヨンセの主演映画『ブラック・イズ・キング』(2020)を共同監督。
この作品で2020年グラミー賞にノミネートを果たした。初挑戦となった今回のミュージカル映画では、音楽と映像をシームレスに繋ぐセンスを開花させている。
バザウーレ監督コメント
“スピルバーグから学べたことは幸運”
彼がいてくれるだけで、励みになったよ。編集の過程でとても助けてくれた。大作や素晴らしい映画をいくつも作っているから必要ないものに気づくのがとても早いんだ。
彼は編集室にやってきてほんの数分間で「そのシーンは長すぎるよ、ブリッツ。もっと早くやれるよ」と言うんだ。彼から学べたことは幸運だったよ。
製作総指揮にスピルバーグ!
「ブラック・ライヴズ・マター」運動が巻き起こる半世紀以上前に映画『カラーパープル』でブラックカルチャーの礎を築いたと言われるスピルバーグ、1985年版のソフィア役オプラ・ウィンフリー、ミュージカル版のプロデューサーでもあるクインシー・ジョーンズが参加。小説・映画・舞台の魅力が結実した作品を作り上げている。
1985年のスピルバーグ版が4K&日本語吹替収録で新発売!
スティーヴン・スピルバーグが監督を務めた1985年版も新たな仕様でリリース決定! 田中信夫、此島愛子、横尾まり、青木和代らによる日本語吹替音声も収録される。
『カラーパープル 』
日本語吹替音声追加収録版 〈4K ULTRA HD & ブルーレイセット〉(2枚組)
2024年1月24日(水)発売
価格:7480円(税込)
発売元:ワーナー ブラザース ジャパン/販売元: NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
©1985 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
『カラーパープル』
2024年2月9日(金)公開
2023/アメリカ/2時間21分/配給:ワーナー・ブラザース映画
監督:ブリッツ・バザウーレ
出演:ファンテイジア・バリーノ、タラジ・P・ヘンソン、ダニエル・ブルックス、コールマン・ドミンゴ、コーリー・ホーキンズ、H.E.R.、ハリー・ベイリー
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