『ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人』は18世紀のフランス、ヴェルサイユの宮廷を舞台に、59年間の長きにわたり国王に在位したルイ15世の最後の公式の愛人となったジャンヌ・デュ・バリーの波乱に満ちた生涯を描いた本格派エンタテインメント作品。第76回カンヌ国際映画祭オープニング作品に選出され、ジョニー・デップがルイ15世を演じることで世界中から注目を集めた。自ら脚本を書き、ジャンヌを演じたマイウェン監督にジャンヌに対する思いやジョニー・デップについて語ってもらった。(取材・文/ほりきみき)

ジョニー・デップは見ていて美しい

──本作でデュ・バリー伯爵夫人がとても魅力的に描かれていたので、私がこれまで持っていたイメージが一新しました。日本には「ベルサイユのばら」というフランス革命を舞台にした人気コミックがあり、デュ・バリー伯爵夫人は浪費家として描かれているため、ネガティブな印象を持っていたのです。監督はデュ・バリー伯爵夫人を描くにあたって、どこにポイントを置き、何を大事にされましたか。

ジャンヌを描いた他の映画でも彼女はあまりよく描かれていないことが多いのですが、ジャンヌのことをリサーチしてみて、彼女は誤解されていると思いました。ジャンヌは性格に起伏があり、シンプルな人ではありません。映画ではいろんな側面を見せようとしました。

画像: ジョニー・デップ(左)と話すマイウェン監督(右)

ジョニー・デップ(左)と話すマイウェン監督(右)

──デュ・バリー伯爵夫人が国王ルイ15世の公妾としてヴェルサイユ宮殿の鏡の間でお披露目されるとき、国王の前まで歩いて行ってお辞儀をします。そこではセリフはありませんが、見つめ合う2人の表情から愛し合う喜びが伝わってきました。国王を演じたジョニー・デップとどのようにあのシーンを作り上げたのでしょうか。

ヴェルサイユ宮殿の鏡の間で国王とジャンヌが顔を合わせるシーンは2回ありました。まずは国王がジャンヌに出会うシーンです。ジョニー・デップには一目惚れしたことを強いまなざしで表現してほしいと伝えました。ジャンヌも国王を見て惹かれるのですが、私はそれをジャンヌ自身が信じられないような感じで国王を見るようにして表現しました。

ご質問の国王の公妾としてお披露目されるときは、国王の娘たちや臣下の多くはジャンヌとのことを快く思っていません。しかし、愛し合っている2人はそんなことを意に介さず、世界には2人しかいないという状態にしたいと伝えました。

画像: マイウェン監督が演じるジャンヌとジョニー・デップ演じるルイ15世

マイウェン監督が演じるジャンヌとジョニー・デップ演じるルイ15世

──ジョニー・デップの俳優としての魅力を監督目線と共演した女優としての目線、それぞれでお答えください。

監督としても、女優としても見ていて美しいと感じました。そもそも魅力は主観的なもの。自然とあふれ出てくるもので、本人が自分で作り上げるものではありません。

ジョニー・デップは感性が非常に豊かで、教養もユーモアもある。一方で悪魔的で気難しいところもある。ジョニー・デップに気難しい面が出ているとき、魅力的な人に戻すのが大変。困ったなと感じるときもありましたが、そういった2つの面を持っているところが魅力だと思います。

──マリー・アントワネットとの確執についての有名なエピソードが描かれています。その呪縛が解け、階段を駆け上がる後姿から喜びが満ちあふれていました。

ヴェルサイユ宮殿に行ったときにあの階段を見て、すごく印象に残ったのです。「あの階段は絶対にどこかで使いたい」と思ったのですが、その時点ではどこで使うのか、思い浮かびませんでした。

画像1: ジョニー・デップは見ていて美しい

マリー・アントワネットからやっと声を掛けてもらった喜びをどう表現するかを考えたときに、自然とあの階段を思い出しました。最下層からひたすらに駆け上がり、お城に入って、ようやく認められた彼女の人生にメタファーのように重なっています。

──ご自身の監督作品に出演されたことはこれまでにもありましたが、主演は初めてかと思います。監督・脚本・主演をやり遂げた今のお気持ちをお聞かせください。

撮影が終わっても、監督としては編集をしたり、ミキシングをしたりという仕事があります。本編が完成したときは終わったという事実を受け入れるのが大変でした。多少は肩の荷が下りましたが、自分の心に正直になれば、もっともっといろいろ直したい。でも、どこかで諦めて止めなくてはなりません。そのことにフラストレーションが溜まるのです。

画像2: ジョニー・デップは見ていて美しい

作品が完成すれば、インタビューを受けるなどの仕事が待っています。今はこのプロモーションの仕事で忙しいのですが、本心としては映画本編を作っているときの方が好きです。

<PROFILE>
マイウェン:監督・脚本・出演

1976年フランス出身。俳優、映画監督、脚本家。子役から活躍し、『殺意の夏』 (1983) でイザベル・アジャーニが演じた主役の子ども時代を演じた。その他の出演作に『フィフス・エレメント』(1997)、『パリ警視庁:未成年保護特別部隊』(2011)、『モン・ロワ 愛を巡るそれぞれの理由』(2015)など。監督としては、『PARDONNEZ-MOI(原題』』(2006)で長編映画監督デビュー。カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した2011年の『パリ警視庁:未成年保護特別部隊』では、出演・監督・脚本を務めた。その他に『モン・ロワ 愛を巡るそれぞれの理由』(2015)。本作が7本目の監督作となる。

『ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人』
2024年2月2日(金)TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー

画像: 予告編30秒『ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人』2/2公開(ナレーション:叶姉妹) youtu.be

予告編30秒『ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人』2/2公開(ナレーション:叶姉妹)

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<STORY>
貧しい家庭の私生児として生まれ、娼婦同然の生活を送っていたジャンヌ(マイウェン)は、類まれな美貌と知性で貴族の男たちを虜にし、社交界の階段を駆け上がっていく。ついにヴェルサイユ宮殿に足を踏み入れたジャンヌは、時の国王ルイ15世(ジョニー・デップ)と対面を果たす。二人は瞬く間に恋に落ち、彼女は生きる活力を失くしていた国王の希望の光となっていく。そして、国王の公式の愛人、公妾となったジャンヌ。しかし、労働階級の庶民が国王の愛人となるのはヴェルサイユ史上、前代未聞のタブー。さらに堅苦しいマナーやルールを平気で無視するジャンヌは、保守的な貴族たちから反感を買う一方で、宮廷に新しい風を吹き込んでいく。しかし、王太子妃のマリー・アントワネットが嫁いできたことで立場は弱まり、やがて運命は大きく変わっていく・・・。

<STAFF&CAST>
監督:マイウェン  
脚本:マイウェン、テディ・ルシ=モデステ、ニコラ・リヴェッチ 
出演:マイウェン、ジョニー・デップ、バンジャマン・ラヴェルネ、ピエール・リシャール  、メルヴィル・プポー、パスカル・グレゴリー
配給:ロングライド
©︎2023-WHY NOT PRODUCTIONS- FRANCE 2 CINEMA-FRANCE 3 CINEMA-LA PETITE REINE-IMPALA PRODUCTIONS
©︎Stéphanie Branchu - Why Not Productions
公式サイト:https://longride.jp/jeannedubarry/

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