助演であっても強烈なインパクトを残し、インタビューでは自身について多くを語らず、職人的な役者としてキャリアを積み上げてきたキリアン・マーフィー。アカデミー賞初ノミネートにして主演男優賞を受賞した『オッペンハイマー』で見せた彼の“真価”とは?(文・よしひろまさみち/デジタル編集・SCREEN編集部)
カバー画像:©Marco Grob for Universal Pictures © Universal Pictures. All Rights Reserved.

【インタビュー】キリアン・マーフィー、『オッペンハイマー』を語る

画像: ©Marco Grob for Universal Pictures © Universal Pictures. All Rights Reserved.
©Marco Grob for Universal Pictures
© Universal Pictures. All Rights Reserved.

「この映画にはみんなそれに関係しているという普遍性がある」

━━クリストファー・ノーランの新作で、これだけの錚々たるキャストの中で主人公J・ロバート・オッペンハイマーを演じるというのは、あなたにとってどういう意味があったのでしょうか。

本当に夢のようでした。一つの映画の中で、これだけの俳優たちと共演できるとは夢にも思いませんでした。クリストファー・ノーランが集めた、現代でも最高のキャストだと思います。

でもそれは一方で、どれだけみんなクリス(監督)と仕事をしたかったかという印でもあるんです。みんなクリスの映画、彼の脚本が好きだからこそ集まってくるんですから。信じがたい監督です。

そう、僕にとっては毎日が贈り物でした。毎朝起きて、自分はマット・デイモンと、ケネス・ブラナーと、エミリー・ブラントと、ゲイリー・オールドマンと共演しているんだと思うと、ゾクゾクしてきます。だから自分も演技のレベルを上げないといけないなと思うんです。

━━あなたはクリストファー・ノーラン監督の様々な映画に出演してきましたが、見ていて彼が変化した点はありますか。

自分がどんな種類の物語を語りたいのか、より確信を深めているように思います。それに、観客を試すような映画をスタジオシステムの中で作ることに、以前より自信をもってきている。彼は観客に十分なレベルの知性がある、自分についてこられるだけ賢いと思っていて、決して見下したりしません。そういうところがずっと彼を好きな点です。

彼は決して映画で人に指図したり、説教したりはしない。彼の映画はあなたに対する一種の挑戦で、あなたはそれに立ち向かう必要があります。しかしその報酬は莫大なものです。僕は彼から多くのものを学びました。クリスと一緒に仕事をすることで、僕の創造上の、職業上の人生は変わりましたし、これからもそうであってほしいと願っています。

━━『オッペンハイマー』の物語が、私たち全員に共鳴し、関係すると思われるのはなぜですか。

そう、この映画にはみんなそれに関係しているという普遍性があるのです。誰もがこの映画の主題を理解しています。観客に投げかけられている大きな問題があり、その答えは映画では与えられていません。これこそ見事な映画術というべきです。でもこれはスリラーでもあり、ラブストーリーでもあり、僕に言わせればホラーの要素もある。そのすべてが観客の心に響くでしょう。

そしてこの時代設定、1945年に起きた出来事を観客が知ろうと知るまいと、その中に見る者は包み込まれます。この映画は始めからあなたの喉元を押さえつけ、始めから終わりまで息をもつかせません。僕たちは、あの時起こった出来事のせいで、今も核の時代にいます。オッペンハイマーが世界を変え、それ以降、あの出来事の影響の中で生き続けているのです。 

▶︎『オッペンハイマー』関連記事はこちら

『オッペンハイマー』
2024年3月29日(金)公開
アメリカ/2023/3時間/配給:ビターズ・エンド
監督:クリストファー・ノーラン
出演:キリアン・マーフィー、エミリー・ブラント、マット・デイモン、ロバート・ダウニーJr.、フローレンス・ピュー

This article is a sponsored article by
''.