“呪われた一家”と呼ばれたプロレス界の伝説を映画化
巨大な手で相手をわしづかみにする必殺技“鉄の爪(アイアンクロー)”で一世を風靡したプロレスラー、フリッツ・フォン・エリック。やがて彼は自身のプロレス団体を立ち上げ、息子たちを花形プロレスラーに育て上げようとするも、家族は次々と悲劇に見舞われる…。
気鋭の映画スタジオA24が、『マーサ、あるいはマーシー・メイ』(2011)『不都合な理想の夫婦』(2019)のショーン・ダーキンと組んで映画化したのは、“呪われた一家”と呼ばれたプロレス界の伝説、フォン・エリック・ファミリーの衝撃の実話。ダーキン監督は1980年代プロレス界を舞台に、本作でも植え付けられた価値観からの解放を描き出している。
物語の核となる兄弟役として「ハイスクール・ミュージカル」のザック・エフロン、「一流シェフのファミリーレストラン」のジェレミー・アレン・ホワイト、『逆転のトライアングル』(2022)のハリス・ディキンソン、新鋭スタンリー・シモンズら注目キャストが集結。
さらに「ER 緊急救命室」のモーラ・ティアニー、「マインドハンター」のホルト・マッキャラニー、2015年版『シンデレラ』のリリー・ジェームズらを迎えて、兄弟たちの愛、そして栄光と悲しみを紡ぐ。
あらすじ
1980年初頭。元AWA世界へビー級王者の父フリッツのもと、プロレスラーとして鍛えられていた次男ケビン。彼に続いて三男デビッドと四男ケリーもプロレスラーとなり三兄弟として売り出されるが、華のある弟たちに人気が集中し、父の期待が自分から弟たちに移っていることにケビンは気づく。
嫉妬を抑えながら健気に弟たちを支えるケビンの心の拠り所は恋人のパムだった。パムの妊娠を期に、二人は家族に祝福されながら結婚。
そんな中、一家の念願である世界ヘビー級タイトルマッチを控えたデビッドが急死してしまう。さらにケリーが不慮の事故に見舞われ、リングデビューした五男マイクも試合中の負傷から後遺症を患ってしまう…。
登場人物
ケビン(ザック・エフロン)(画像左から2番目)
次男。兄弟では最初にレスラーに。口下手だが優しく家族思い。
デビッド(ハリス・ディキンソン)(画像左)
三男。ケビンに次いでレスラーに。マイクパフォーマンスが得意。
ケリー (ジェレミー・アレン・ホワイト)(画像右)
四男。五輪代表選手だったが、ボイコットの影響でレスラーに転身。
マイク(スタンリー・シモンズ)(画像右から2番目)
五男。ミュージシャンを目指している。ある事から彼もリングへ。
パム(リリー・ジェームズ)
ケビンの聡明な恋人。悲劇の連鎖に巻き込まれる彼を支える。
フリッツ( ホルト・マッキャラニー)
父親。元レスラー。家族を“史上最強の一家”とする野望がある。
ドリス(モーラ・ティアニー)
母親。敬虔なキリスト教徒で、信仰で家族を守ろうとする。
注目ポイント
"呪われた一家"フォン・エリック・ファミリーとは
元AWAヘビー級王者の父フリッツが率いるフォン・エリック・ファミリー。父の必殺技“鉄の爪(アイアンクロー)”を受け継いだ息子たちが活躍した1980年代に絶頂期を迎えるも、日本で巡業中の三男デビッドの急死から始まり相次いで家族を失う不幸に見舞われる(長男のジャックJr.は幼少期に亡くなっている)。
現在6人兄弟で存命なのはケビンのみ。映画では“フォン・エリック”の名前を恐れたケビンが子どもに父フリッツの改姓前の姓“アドキッソン”で出生登録する場面も描かれる。
エキストラが「子供の頃見たのと同じ」と感動! 80年代プロレスを徹底再現
フォン・エリック・ファミリーだけでなく、ハーリー・レイス、リック・フレアー、ファビュラス・フリーバーズなど1980年代プロレススターたちの徹底再現に挑んだ本作。
迫力のプロレスシーンは、米プロレス団体AEWの現役王者であるマクスウェル・ジェイコブ・フリードマンがエグゼクティブ・プロデューサー、元WWE王者のチャボ・ゲレロJr.がレスリング・コーディネーターを務めたことで実現。キャスト陣はリングの上がり方から学び、スタントのほとんどを自身でこなした。
また、『哀れなるものたち』のジェームズ・プライスら美術チームが作り上げたリングセットにも注目だ。
ザック×ジェレミー×ハリス! 肉体面も演技面も注目!
監督自体は体づくりにはゆるめのスタンスだったが、撮影開始後も鍛え続けて驚異的な肉体改造を行ったザック・エフロン、ジェレミー・アレン・ホワイト、ハリス・ディキンソン。旬のスターたちは演技面でも魅せる。
中でも甘い表情を封印して弟思いの次男ケビンを演じたエフロンの演技はサンディエゴ映画批評家協会賞の主演男優賞にノミネートされるなど大絶賛を受けている。
ディキンソン演じる三男デビッドにケビンが本音をこぼす場面や、ホワイト演じる四男ケリーが限界に達して弱音をケビンにぶつける場面など、注目スターたちの掛け合いも要注目だ。
ザック・エフロン インタビュー
ザック・エフロン プロフィール
1987年10月18日、アメリカ・カリフォルニア州出身。2000年代初頭からテレビドラマに出演し、「ハイスクール・ミュージカル」シリーズ(2006-2008)で大ブレイク。
『ヘアスプレー』(2007)や『グレイテスト・ショーマン』(2017)などのミュージカル映画のほか、近年では殺人鬼役を演じた『テッド・バンディ』(2019)、父親役に挑戦した『炎の少女チャーリー』(2022)など活躍の幅を広げている。2023年12月にハリウッド殿堂入りを果たした。
“これまでで一番、肉体的にやりがいのある挑戦のひとつだったよ”
──この映画のテーマについて教えてください。
この映画は、自分の家族に対する悲劇の連鎖を断ち切る男の物語なんだ。ケビンはそれを乗り越えて、自らの人生を愛と共に前進しようとする。
一方で、父フリッツは自分の息子たちを利用して、若い時に思い描いた自分の夢を実現させようとする。そして、自分が知っている唯一の方法、つまり、『最もタフで最も強いチャンピオン』にならなければいけないと教える。劇中でもそう語るシーンがあるんだけど、その教えが息子たちを追い込み、ケビンも自分の周りに壁を築いてしまうんだ。
──兄弟の中でケビンだけが逃げ道を見出します。それは、妻のパム(リリー・ジェームズ)と共に築く家族の存在でした。その点についてどうお考えですか?
ケビンにとってパムは、無条件の愛を象徴している。彼女と出会ってすぐに、これまでとは全く違った感情を体験する。ケビンは彼女のおかげで、プロレスにおいても人生においても、完璧でなければならないという圧力から初めて解放され、無条件で支えてくれる人がいると理解するんだ。
──本作では大幅な肉体改造を行っていますね。
これまでで一番、肉体的にやりがいのある挑戦のひとつだったよ。経験したことのない過酷なトレーニングと食事制限をして、はじめは辛かった。でも最終的にはそれが、ケビンとは何者なのかという深い洞察につながった。彼が自身の運動能力や肉体に捧げようとしたものや、プロレスにおける完璧さを求める姿勢が見えてきたんだ。
──本作は元WWE王者のチャボ・ゲレロJr.がレスリング・コーディネーターを務めています。プロのもと、プロレスシーンを演じてみて、いかがでしたか?
1日目は本当に辛かった。最悪だったよ。プロレスではマットに倒れるんだけど、これが本当に硬いんだ。スプリングが入っているとはいえ、当たりどころが悪いと、下に入っている金属の棒に当たってしまう。でも、最終的には他のみんなと一緒に完全に楽しんだよ。
『アイアンクロー』
2024年4月5日(金)公開
アメリカ/2023/2時間12分/配給:キノフィルムズ
監督:ショーン・ダーキン
出演:ザック・エフロン、ジェレミー・アレン・ホワイト、ハリス・ディキンソン、モーラ・ティアニー、スタンリー・シモンズ、ホルト・マッキャラニー、リリー・ジェームズ
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