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抗うことのできない思慮深さが滲む眼差し
ポール・メスカル プロフィール
- 誕生日
1996年2月2日 - 出身
アイルランド メイヌース - 好きな映画
『キング・オブ・コメディ』『日の名残り』 - 好きなドラマ
「トゥルー・ディテクティブ シーズン1」 - 好きな俳優
アンソニー・ホプキンス - 好きな食べ物
クリスマスに母が作るスープ(ブロッコリー、ジャガイモ、玉ねぎが入ったもの) - 嫌いな食べ物
トマト - 好きなアーティスト
The Gloaming - 好きなブランド
Simone Rocha (シモーネ・ロシャ)ヴィンテージの服が大好き
静かで繊細な表現力でセンセーションを巻き起こす
少年の様なピュア笑顔と、思慮深さが滲み出る大人びた眼差し…。スポーツで培ったガッチリめなボディで快活&爽やかに魅せたかと思うと、静かで繊細な表現力に涙させられたり…。その唯一無二のギャップの数々で私たちのハートを掴んで離さない、若き実力派俳優ポールのこれまでを振り返ってみましょう。
彼は1996年2月2日生まれ、アイルランドのメイヌース出身。16歳の頃ミュージカル「オペラ座の怪人」で舞台デビュー、その後ダブリン大学トリニティ・カレッジのリール・アカデミーで演技を学びます。
在学中も続けていたゲーリックフットボールを怪我で断念するも、演劇に夢中になった彼は2017年卒業直後、ダブリンの劇場で舞台「グレート・ギャツビー」に主演。華々しく俳優デビューを飾りました。
その後アイルランドやイギリス・ロンドンの舞台を中心にキャリアを積んだのち、2020年の青春恋愛もの「ノーマル・ピープル」でTVドラマ初主演。裕福な家庭のマリアンヌと恋に落ちる、運動も勉強も出来る労働者階級生まれのコネル役を全身全霊で演じ大ブレイク!
世界中でヒットした本作で一躍有名になった彼は、英国アカデミー賞テレビ部門主演男優賞の受賞や、エミー賞主演男優賞へのノミネートなどその実力もバッチリ評価され、演技派若手俳優としてその名を広く知られる様に。
実はそんな彼の最初のテレビ出演はアイルランドのソーセージブランド「Denny」のCMだったり。楽しげなティーンエイジャー姿に元気をもらえるこちらもポール好きは是非チェックを!
そして2021年にはマギー・ギレンホールの監督デビューとなった秀作『ロスト・ドーター』で、ビーチハウスで働く青年役で映画初出演。2022年の映画『aftersun/アフターサン』では、歳の娘とひと夏のバカンスへ出かける若き父親をノスタルジックに演じ、第95回アカデミー賞主演男優賞に初ノミネートの快挙!
2023年には舞台「欲望という名の電車」でスタンリー役を演じ、英国演劇界で最も権威あるローレンス・オリヴィエ賞で主演男優賞を見事受賞するなど快進撃は止まりません…!
もちろん2024年も目が離せないポール、日本では4月公開予定の話題の映画『異人たち』では、受賞は逃したものの第77回英国アカデミー賞助演男優賞にノミネート。1月に配信がスタートしたSF映画『もっと遠くへ行こう。』や、強く美しい次世代グラディエーター姿が拝めるであろうシリーズ映画『グラディエーター2』など、今最も注目すべき若手実力派スターとして今年も大躍進中!!
ポールのことをより深く知れるトリビア3
俳優になる前はゲーリックフットボールで活躍する選手だった!
俳優として活動する前はこのアイルランドの国民的スポーツ、ゲーリックフットボール(ラグビー+サッカーな競技だそう)のチームに所属する選手で、優秀なディフェンダーだったそう。「ノーマル・ピープル」でも魅せたあの運動神経やガッシリな大腿筋、そして彼が愛するスポーティーなショートパンツが物凄く似合うのも納得!
ティモシー・シャラメの演技レベルに恐怖!
リール・アカデミーのオーディションを通過、演技について学んだ彼。在学中にティモシー・シャラメの出演作『君の名前で僕を呼んで』を見て、同世代の俳優のレベルの高さに衝撃を受けたそう。恐怖を覚えつつ劇場を後にした経験を今も覚えている様で、刺激し合い切磋琢磨する存在がいるのって素晴らしい。いつかふたりの競演も見てみたいですね!
永遠に見ていられる…! ローリング・ストーンズ×ポールのMVも必見
曲名でもある“スカーレット”へのラブレターな動画を撮る青年がポールで、2020年当時ソーシャルディスタンスを守って撮影されたというこのMV。ロンドンの素敵なホテルでひとり飛んだり跳ねたり、愛を伝え踊り狂うポールを一曲まるまる堪能。ちなみにスカーレットは本楽曲に参加した一人ジミー・ペイジの娘の名。
『異人たち』インタビュー
“(映画に出られることは)とてつもない特権であり、軽んじることはありません”
──あなたは一定の期間、この作品の中に身を置いていました。製作中、感情の重みを感じましたか?
確かに心を動かされました。実際、この映画は作るのが難しい種類のものでした。ハリーはとても不安定な存在です。なぜなら、表面的にはとても愛に溢れ、楽しくて魅力的な人物であるかのように見せていつつも、暗く不安定な心を隠すために、それらの手段を用いているのです。
でもこのような映画を作ることの特権は、それを観客の前で表現するにあたり何らかの代償が伴う場合にあります。それこそが、私たちの仕事の大きな特権だと思います。
──ハリーのトラウマはどこから来ているのでしょうか?
彼のトラウマは、彼の家族のさりげない残酷さから来るものです。彼はそれを避けられない疎外感と同一視しています。それが彼の対処法であり、とても苦しいものです。
しかし、これは家族に対する警告でもあります。子どもへの接し方に気をつけないと、彼らに大きなダメージを与えることになります。ハリーは特に、子どもたちに取り返しのつかないダメージを与える可能性があるという、親に対する警告の役割を果たしていると思います。
──その残酷さの一部は、ハリーが自分のアイデンティティに正直であることによって現れています。脚本のそうした部分をどう思われましたか?
映画の中でアダムが『ご両親は君がクィアだと知ってる?』と聞き、ハリーが『ああ、知ってるよ。口に出さなければOKって感じ』と言う、真実味のあるセリフがあります。彼ら自身のスタンスをはっきりさせる以外に、どうやってその痛みに対処することができるでしょうか?
OKのように思わせること。それが、あのような事態を乗り切る唯一の方法なのでしょう。でも実際にはOKのように見せかけようとすればするほど、子どもたちを通して親自身へのダメージは大きくなります。なぜなら、子どもたちはとても多感で、親を通して自分の核となる価値観を学ぶからです。もし親がそのことに慎重にならなければ、子どもたちはダメになってしまうかもしれません。
──「ノーマル・ピープル」でブレイクを果たして以来、ここ数年あなたは素晴らしい活躍を見せています。そのおかげで、素晴らしい作品を世に送り出すことができるようになったと感じますか?
正直、考えないようにしています。後ろ向きに聞こえるかもしれませんが、自分自身を成功のための商品と捉え始めると、自分の仕事を見失い始めるような気がします。
質問に答えると、(映画に出られることは)とてつもない特権であり、軽んじることはありません。しかし、私が最も感謝しているのは、尊敬する監督たちが、私がこの種の仕事に敬意を持っていることを知っていて、それを求めて私のところに来てくれることです。これからもそれが変わらないことを願っています。
でも、それは私自身の責任でもあります。このような作品を作るために生じる痛みに耐えられる限り、そうした作品に出られるようにしなければなりませんね(笑)。