意識せずとも立ち返った“復讐”の物語
――フュリオサというキャラクター自体は、そもそもどのようにして生まれたのですか?
「最初に『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を作るうえでの私たちを駆り立てた衝動は、追跡が続く映画を撮りたいということだった。しかし、最初の『マッドマックス』三部作のようなアナログ技術ではなく、デジタル技術を駆使して作りたいと考えた。そしてふたつ目のアイデアは、人間を奪い合うことから生じる軋轢だ。歴史的に多く見られる、寵愛される女性の奪い合いからインスピレーションを得て、独裁者イモータンにとらわれた5人の妻を助ける人がいなければならない、というストーリーが生まれた。それが誰かを考えたとき、女性の戦士であるべきだろうと思ったんだ。フュリオサは、そのような発想から生まれたんだ。じつは『怒りのデス・ロード』の時点で、フュリオサの過去はかたち作られていた。今回の新作はそれが主体となったんだよ」
――フュリオサ役のアニャと、彼女の母を殺した敵ディメンタスを演じるクリス・ヘムズワースは、本作にどんな影響をもたらしたのですか?
「彼らはたくさんのものをもたらしてくれた。彼らの直感と、論理的な思考によってフュリオサとディメンタスは作られていったんだ。劇中、フュリオサとディメンタスは何度か出会うが、出会う度に彼らの持っている力と、ふたりのバランスは異なってくる。それが最後には等しくなるんだ。彼らは、そのときどきでみごとな演技を見せてくれたが、最後に対峙する場面の撮影は本当に素晴らしくて感極まったよ。アニャもクリスもギリギリの感情を表現していて、私が思っていた以上に素晴らしい場面になった。こういう要素は監督が役者を操って引き出せるものではない。役者としてキャリアを重ねてきた者の本能がなせる技だ」
――『フュリオサ』は復讐というテーマの点では『マッドマックス』の一作目と似ていますが、『怒りのデス・ロード』がシリーズ2,3作目のような神話的な英雄談であるなら、今回は原点回帰と言えると思いますが、これは意識されたのでしょうか?
「その見方は正しいけれど、私自身は自覚していなかった。言われて気づいたよ。復讐の要素は確かに共通しているが、『フュリオサ』で描かれる主人公の時間は長い期間だ。そういう意味では、ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』にも似た壮大な復讐物語だ。面白いのは、やはり『フュリオサ』を観た方に「『ベン・ハー』(1959)のような映画だね」と言われたこと。ご存知のとおり、あの名作は復讐の物語であり、『怒りのデス・ロード』を撮る際にインスピレーションを受けた、アクション映画史に残る馬車レースのシーンがある。私はまったく意識していなかったが、こんな風に、観客に指摘されて気づくことは多いんだよ」
メカがキャラクター自身をも表現する
――メカについて、今回はどんな点にこだわりましたか?
「メカはキャラクターの延長であるべきだ。キャラクターの着ている物やヘアスタイル、武器、また目的といった、すべての要素が車の機能に繋がっているんだ。たとえば、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』ではマックスの車は早々に破壊され、それと同時に彼自身も小さな存在となってしまうように、メカがキャラクターを表わしていた。本作のディメンタスの愛車にしても、最初はバイクで、その後は派手な車になっていく。それは彼がどんどん荒野の王様のような気持ちになっていくことの表われだ」
――フュリオサがクライマックスで乗る車にも意味があるのですか?
「私たちはあの車をクランキー・ブラックと呼んでいる。元々はイモータン・ジョーの息子の車で、フュリオサはそれを奪って乗る。この段階での彼女の頭には、もはや復讐しかない。クランキー・ブラックには特徴的な機能はない。怒りに燃えて突っ走る、ひたすらアグレッシブなメカだ。それもまた、フュリオサというキャラクターの延長線上にあるんだよ」
――アクション主体の『怒りのデス・ロード』とは異なり、本作はドラマが主体となっていますが、どんなことを心がけて作ったのですか?
「どんな映画でも、どのシーンでも、求められるものは違ってくる。撮り方、音の鳴り方、リズム、役者の演出など、いろいろなツールを使って映画が表現されていく。音楽のセッションでいろいろな音が鳴らされていくようなものだね。それぞれのシーンでもっとも的確な表現を選んでいく。それが何より大事なことだ」
『マッドマックス:フュリオサ』5月31日(金)全国ロードショー!
日本語吹替版同時上映 IMAX®/4D/Dolby Cinema®/SCREENX
配給:ワーナー・ブラザース映画
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