疎遠だった姉が事故で亡くなり、一人遺された姪を勢いで引き取ってしまった小説家。初めて見るタイプの大人である叔母に、興味津々な女子高生。年齢も性格も生きてきた環境も全く違うふたりがかけがえのない関係性へと変わっていく。新垣結衣主演『違国日記』はヤマシタトモコの人気同名コミックの実写化である。原作ファンで、脚本も担当した瀬田なつき監督に原作の魅力や脚本化で大事にしたこと、キャストへの演出などについて語ってもらった。(取材・文/ほりきみき)

事前に立ち位置をかっちり固めるのではなく、その場で生まれた動きを優先して撮影


──新垣結衣さんとは今回、初めてですね。

脚本をお渡しして、出演が決まった後に、お会いしました。脚本も原作もしっかり読み込んでくださり、こちらの意図も受け取って、きちっと考えてくださっていました。槙生というキャラクターに対して誠実に向き合ってくださっているのを感じ、新垣さんが槙生を演じるのであればとても良いものができそうだという安心感が、まずありました。


──早瀬憩さんはオーディションで決まったとうかがいました。

早瀬さんとオーディションでお会いしたとき、朝と同じ15歳でした。ちょっと素朴な雰囲気を持ちつつ、どこか達観した感じがあって、朝を自分のこととして演じてくれそうな気がしました。何より演技が好きそうだったので、楽しく撮影ができそうな気がしたのです。実際に、現場では等身大で朝を、全力で演じてくれました。あの瞬間しか映せない早瀬さんが詰まっていると思います。

歌に関しては、最初は苦手意識があったようですが、ボイストレーニングに何回か通って練習して、本番を楽しく乗り越えてくれました。その、初々しさも加わって、とてもいいシーンになりました。


──現場でのお二人はいかがでしたか。

現場ではお二人とも穏やかでした。新垣さんは早瀬さんがのびのび演じられるように見守っているというか、緊張感を与えるわけではなく、かといって馴れ合うこともなく、いい距離感で接してくださっていました。

こちらも事前に立ち位置をかっちり固めるのではなく、登場人物がどこに動いてもカメラや照明でキャッチできるようにしてもらい、現場で思いついた演出や、その場で生まれた動きを優先して撮影しました。


──槙生の友人の醍醐が訪ねてきて、餃子パーティーをするシーンはいい雰囲気で、3人とも本当に楽しそうでした。

「槙生も朝もこんな顔をするんだ」というそれまでとは違う表情が撮れるといいなと思いながら撮影をしていましたが、夏帆さんがそれを引き出してくださって、醍醐が入ったことで関係が変わっていくということをダイレクトにやっていただいた気がします。

フードコーディネーターの方に餃子のタレは原作を参考に作っていただいたのですが、具は入れたら面白いものを用意して、後は芝居の中で自由に演じていただきました。カメラは結構長く回していて、いい表情のところを編集してあのシーンになりました。


──作品を見終わったら餃子を食べたくなりました。

私もあのシーンを編集していたときは、お昼に餃子を食べに行きました(笑)。


──槙生だけでなく、朝にも親友が登場します。大人の友情、高校生の友情の違いを意識されましたか。

友情とは何か、と考えると難しいですが、高校生の友情も、大人の友情もそんなに大きくは違わないと思っています。大人と子供、性別、年齢…、というカテゴライズではない関係が描けたらいいなと考えていました。

ただ、槙生と醍醐は長い付き合いなので、特別な距離感というか、それまでのふたりの時間が、説明することなく見えてくると良いなと思っていましたが、新垣さんと夏帆さんの二人の演技によって、憧れてしまうような友情が表現されていました。

画像5: 新垣結衣が演じることで安心感を得たと『違国日記』瀬田なつき監督が語る
画像6: 新垣結衣が演じることで安心感を得たと『違国日記』瀬田なつき監督が語る

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