いよいよ映画界は大作や話題作が続々公開されるサマー・シーズンに突入! お待ちかねの大ヒット・シリーズの最新作や、映画ファンなら絶対に見逃せない注目作までズラリとご紹介しましょう。これらの作品は役柄上のコンビやデュオ、または実の親子など、そのカップリングもチェックしたいものばかり!今回はアダム・ドライヴァー主演『フェラーリ』について。(文・米崎明宏/デジタル編集・スクリーン編集部)

アダム・ドライヴァー(エンツォ・フェラーリ役)インタビュー

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“メイクは毎回大変な時間がかかったけど、エンツォの倦怠感を醸し出すのに役立った”

イタリアの高級ブランドのお家騒動の核心を描いた『ハウス・オブ・グッチ』でグッチ創業者の長男マウリツィオを演じたアダム・ドライヴァーは、続いてイタリアが誇る自動車メーカー、フェラーリの創業者エンツォ・フェラーリを演じる。その話題作『フェラーリ』は、マイケル・マン監督が長年温めてきた企画で、イタリアのレジェンド的存在である人物の光と影を描く壮絶な伝記映画だ。

偉大なるF1レースチームのオーナーにして、スポーツメーカーの創設者として今も有名なエンツォを演じることになったアダムは、その人生を調べ上げ、彼が下してきた決断など歴史的なことから、歩き方や呼吸の仕方など個人的な立ち居振る舞いまで事細かに研究してきた。

映画ではいくつかの時点でのエンツォが描かれるが、主に1957年時点、コメンダトーレ(社長)という愛称で呼ばれた59歳のエンツォが中心となるため、毎日2時間以上のヘアメイクを行ったという。

そんな入念な役作りを行ったアダムは、エンツォ・フェラーリについて、

「彼については世間一般的に様々な見方があるよね。悪者だという人もいれば、カリスマのある魅力的な人物という人もいる。意地悪な奴と言われることもあるし、堂々としていて巧みに人を操る男と思われていたり、もういろいろだ。そんな彼の全部の面を見せるのは不可能だと感じたので、僕は脚本に立ち返って、そこに書かれているエンツォを演じることにしたんだ」

と複雑な人物であることを強調している。

「僕が演じたエンツォがそうした様々な顔をまとめあげたものになっていることを願うばかりなんだけど、情に流されやすくて、常に心のエンジンが動いている人物である彼は、感情面で他者と繋がることが苦手でもあるんだ」

エンツォの仕事面だけでなく私生活の愛情面についてもアダムはこう言及している。

「彼と恋人のリナ(シャイリーン・ウッドリー演)との生活は、妻のラウラ(ペネロペ・クルス演)との生活とは全く異なっていた。エンツォにとってはリナと過ごす時間は多忙な日々の中で寛ぎの時間だったのだろう。

一方でラウラとは一緒に過ごしてきた時間の中での悲しみなどを共有し、夫婦としての忠誠心はあったのだろうけど、愛情を感じることができなかったんだろうね。僕が知っている限りでは、エンツォはしきたりにこだわりを持つ人で、驚くほど頑固者だったという印象だ」

世界的自動車会社を共同設立したフェラーリ夫妻

エンツォとラウラのフェラーリ夫妻は1947年に共同でフェラーリ社を創設。数年で大きな成功を得たが、2人の愛息ディーノが筋ジストロフィーによって若くして死去。さらにエンツォは別に愛する女性リナと家庭を築いており、夫婦関係は悪化するが、ラウラの社の未来を思う気持ちは変わることはなく、イタリアの当時の法律もあって離婚することはなかった。

エンツォへのこだわりは、監督のマイケル・マンにも並々ならぬものがあり、

「仕事では常に正確で論理的なのに、私生活では衝動的で防衛的というアンバランス感や矛盾がエンツォを人間的に魅力ある人物にしている」

と語っている。そんな監督との仕事については、

「マイケルは僕に自信を与えてくれた。彼は俳優たちの演技に試行錯誤する自由を与えてくれるんだけど、自分が求めていることや目指している映画についてのビジョンを明確に示してくれる。例え抽象的であっても、それがより良いアイデアに繋がることもあるので、僕はそういう明確さが好きなんだ」

と絶賛。大変だったヘアメイクに関しても監督と同意見だったそう。

「メイクは毎回時間がかかったけど、エンツォの倦怠感を醸し出すのに役立った。最近の映画ではメイク技術があまりに精巧で、下手するとメイクの下にある人物像を見逃してしまいそうになる。感情の繋がりというものが失われがちになるんだ。監督もそれを望んでいなかった。1957年頃のエンツォは活発とは言えないが、けして弱くもない。とはいえどこか重苦しい感じも漂っている。僕は撮影初日からそれをはっきり感じることができた」

アダムは他にも役作りについてこんなエピソードも明かしてくれた。

「若いころのエンツォは工場で育ったから、車に乗る時は猫背になったんじゃないかと想像した。他の人のために動くことはしなくても良かった人間だったんだ」

演技派のアダムは売れっ子の状態が続いていて、次いで先日カンヌ国際映画祭で上映されたフランシス・フォード・コッポラ監督の最新作『メガロポリス』にも主演。こちらの世界公開も待たれている。

ペネロペ・クルス(ラウラ役) コメント

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ラウラを演じたペネロペはリサーチのためフェラーリ夫妻が住んだアパートを訪ねた時、

「どこか重苦しさを感じる部屋だった。精神的に苦しんでいる人はこういう柄のカーテンや壁紙を選ぶのかと、その光景から多くの答えをもらった気がする」

と語り、身体的な特徴としてどこかぎこちない歩き方をしていた彼女を演じるにあたり、

「ラウラには常に何かうまくいかないことがあったの。まるで慢性的に軽い痛みを抱えているような感覚。そんな彼女の感情的な痛みをどう表現するかが重要だと思ったわ」

と役作りを明かしている。

画像: ロンドン・プレミアでマン監督を囲んで勢ぞろいした『フェラーリ』キャスト Photo by Getty Images

ロンドン・プレミアでマン監督を囲んで勢ぞろいした『フェラーリ』キャスト

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『フェラーリ』
2024年7月5日(金)公開
アメリカ=イギリス=イタリア=サウジアラビア /2023/2時間12分/配給:キノフィルムズ
監督:マイケル・マン
出演:アダム・ドライヴァー、ペネロペ・クルス、シャイリーン・ウッドリー、ガブリエル・レオーネ、サラ・ガドン、ジャック・オコンネル、パトリック・デンプシー

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