キーワードは「孤立」
──チョン・ドンウォンさんのエピソードだけアイリスアウトにされたのは何か意図があるのでしょうか。
『ニューノーマル』はそれぞれのチャプターごとに独自のコンセプトがあります。具体的には、チェ・ジウさんのチャプターはアメリカのホームコメディ、ドンウォンくんのチャプターは白黒のオールドディズニーアニメ、イさんのチャプターは正統派スリラー、チェ・ミンホさんのチャプターはメロドラマ、ピョさんのチャプターはブラックコメディ、ハさんのチャプターは社会派スリラーというコンセプトです。
アイリスアウトはドンウォンくんのチャプターにふさわしい表現だと思い、効果的に使用しました。
──チャプターごとに独自のコンセプトがあるとのことですが、それを違和感なく1つの作品に編集するのは難しかったのではありませんか。
この作品はチャプターごとにトーンは違いますが、ジャンル映画としてきちんと成立している、もしくは、その作品が絶対に面白いと思えれば、観客に負担なく見てもらえると思ったので、とにかく作品の完成度を上げようという気持ちで作っていました。
ホラー映画はリズムやテンポ、呼吸が大事です。編集の段階でそれについて悩むことは多かったのですが、構成については悩むことはありませんでした。
──エンドロールの一人飯が印象に残りました。そこに込めた監督の思いをお聞かせください。
私たちの「日常」がいつどこでも「恐怖」になる可能性があることを扱う上で、『ニューノーマル』は「孤立」というキーワードを持ってジャンル的にアプローチしました。パンデミックを経験して「孤立」は深刻な社会問題として浮上し、それによって多くの事件と事故が発生するようになったと思います。数年前まで、韓国では一人でご飯を食べる姿は見慣れない風景でしたが、今は一人でご飯を食べることが自然な日常になってしまいました。
そこで、エピローグで「一人めし」のシーンを見せることで、一人で食事をするその姿は、もしかしたらこの時代を生きる私たちの孤独で寂しい自画像ではないかと観客の皆さんと共感したかったのです。
また「一人めしエピローグ」は、『ニューノーマル』で熱演してくれた俳優たちのカーテンコールのようなシーンでもあります。
<PROFILE>
チョン・ボムシク監督
1970年生まれ。
一貫してジャンル映画への愛情を示してきたチョン・ボムシク監督は、美しくも切ないホラー要素で知られる傑作『1942奇談』でデビュー。 第27回韓国映画批評家協会賞新人監督賞、第10回ディレクターズカット賞新人監督賞、第8回釜山映画批評家協会賞新人監督賞など数々の賞を受賞。 近作『コンジアム』では、「体験型ホラー」というジャンルを開拓し、商業的な成功と人気を獲得した。同作は韓国ホラー映画で歴代2位の興行収入を記録し、 「Kホラー・マスター」「韓国ホラー映画の誇り」というニックネームを得た。巧みなジャンル・バリエーション、予測不可能なストーリーテリング、 高いクオリティで知られるチョン・ボムシクは、最新作『ニューノーマル』で再び韓国映画界にセンセーションを巻き起こす。
『ニューノーマル』2024年8月16日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開
<STORY>
ソウルでは、女性ばかりを狙う連続殺人事件が多発し、世間を賑わせていた。 ある日、マンションで一人暮らしをしているヒョンジョン(チェ・ジウ)の元に火災報知器の点検をしに来たという中年の男性が訪ねてくる。 図々しく家の中に入ってくる怪しげな男性に不安を覚えるヒョンジョン。
一方、デートアプリでマッチングした相手と待ち合わせをしているヒョンス(イ・ユミ)。 しかし、そこに現れたのは思いも寄らない人物だった。交差する2つの出来事が予想だにしない結末を巻き起こす…。
<STAFF&CAST>
監督・脚本:チョン・ボムシク『コンジアム』
出演:チェ・ジウ「冬のソナタ」、イ・ユミ「イカゲーム」、チェ・ミンホ(SHINee)「ザ・ファビュラス」、 ピョ・ジフン(Block B)「ホテル・デルーナ」、ハ・ダイン、チョン・ドンウォン
2023年/韓国/韓国語5.1ch/113分 /原題:뉴 노멀(英題:NEW NORMAL)/字幕翻訳:根本理恵
提供:AMGエンタテインメント、ストリームメディアコーポレーション
配給:AMGエンタテインメント
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