現実世界を反映したサスペンス映画を作りたい
──前作『コンジアム』の悪霊的な怖さと違い、本作では自分の身の回りで起こり得る、現実的な怖さが描かれていました。この題材を取り上げた理由を教えてください。
『太陽はいっぱい』(1960)の原作者であり、サスペンス小説の巨匠パトリシア・ハイスミスは「サスペンスとは、暴力行為、さらには死の可能性が身近にあることだ」と言いました。
その言葉通り、白昼堂々と見知らぬ人に凶器を振り回される、インターネット上で殺害予告が投稿される、世界各地で無意味な戦争が起こり多くの人が死んでいくこの世界こそ「サスペンス」に満ちた世界ではないかと思い、このような現実世界を反映したサスペンス映画を作りたいと思いました。
──さまざまな事件が起こりますが、それぞれの物語に着想のきっかけがあるのでしょうか。
ニュース、小説、映画、ウェブ漫画、ドキュメンタリーなどからサスペンスジャンルのネタになりそうなストーリーをソースとして集め、それぞれの物語を作りました。
ストーリーを選ぶ際の共通点は、テレビニュースで見かけるような事件であり、不気味でありながら奇妙なニュアンスが加わるようなストーリーであることでした。
──オムニバスで描かれていますが、そこには意外な繋がりが張り巡らされていました。しかも、時系列をバラバラにして描くことで、その繋がりに対する驚きが倍増しました。描く順番など、脚本開発での苦労について、お聞かせください。
シナリオを書いていて難しかったのはまさに今、おっしゃっていただいたところでした。時系列をどう組み立てたらいいのか、順序をどうしたらいいのか、大小さまざまな繋がりをどのように描いたらいいのか。登場人物ごとに時間帯を決め、細心の注意を払いながらチャプターの順番を構成していきました。
──本作はタイプの異なった6人のメインキャストが登場します。キャスティングの決め手をお聞かせください。
キャスティングにおいて、キャストのパブリックイメージや外見も大切ですが、私としてはあくまでも役に合うかどうかが重要だと思っています。その上で予想を覆すようなキャスティングだと更にいい。チェ(・ジウ)さんの役どころは作品をご覧いただくとわかるのですが、日本の方々はとても驚かれることと思います。
(チョン・)ドンウォンくんとピョ(・ジフン)さんは映画出演が初めてで主演というキャスティングを心配する声もありました。しかし、ステージ上での彼らの目を見ればできる人たちであることがわかります。特にピョさんに関してはウィットに富んだトークができる方ですからね。
チェ(・ミンホ)さん、イ(・ユミ)さんに関しては、これまでに出演された作品でとにかく安定した演技を見せてくださってきた方々ですから、本作でもさらにいい演技を見せてくれるのではないかと思いました。
ハ(・ダイン)さんは誰もが驚いたと思いますが、オーディションのときに一目見て、彼女なら個性的なヨンジンを作り上げてくれると確信したのです。そして見事に、その期待に応えてくれました。
──メインキャスト6人はみな、恐怖に慄き、逃げ出そうとします。恐怖の表情はキャラクターによって演出を変えていたのでしょうか。
サスペンスのスタートなのか、中間なのか、クライマックスなのかによって恐怖の表情も変わってきます。そこで、キャストの方々にはそれを意識して演じてもらいました。ただ、実際に演技が始まったら、ご本人の正直な気持ちに任せました。