これまでに経験した最も楽しい撮影は、親友リヴァー・フェニックスとの撮影だと語るキアヌ。今もなお、彼にとってリヴァーという存在は“美しい魂”そのもの。今回は、2人に何度もインタビューした金子裕子さんに、印象深いエピソードや言葉と共に、その歩みを振り返ってもらいました。
(文・金子裕子/デジタル編集・スクリーン編集部)
カバー画像:『マイ・プライベート・アイダホ』写真:Album/アフロ

“君がやるなら僕もやる”
“君がやらないなら僕もやらない”

 1991年7月。『マイ・プライベート・アイダホ』を携えて来日したリヴァーは語る。
「最初に会った頃は“クールな奴だなぁ”と距離をおいていて、こいつと仲良くなれるのかなと思ったんだけどね(笑)。『殺したいほどアイ・ラブ・ユー』で共演して、キアヌも僕と同じで、じつは自分というものをちゃんと持っているから、誰とでも簡単に打ち解けないとわかって。それがわかったところで、おたがいに相手を理解できるようになった。僕としては、自分が理解されにくくて、敬遠されるタイプだとわかっていた。だからこそ、そんな僕をキアヌが好きになってくれたことがすごく嬉しかったんだ」 

 当時のキアヌはキャサリン・ビグロー監督のアクション大作『ハート・ブルー』(91年)への出演が決定し、役作りのために「初めてのサーフィンに四苦八苦」しながらスカイダイビングやフット・アクションのトレーニングに大忙しだった。そんな時に送られてきた『マイ・プライベート・アイダホ』の脚本。その役が“男娼”であることから「イメージダウンになる」という周囲の反対も多かったが、それ押し切って出演を決めた。

 後に、その決意についてのコメントは。
「リヴァーとは“君がやるなら僕もやる。君がやらないなら僕もやらない”という約束を交わしていた。リヴァーは本当に乗り気だったしね。それに自分の限界を超えるほど複雑なキャラクターへの挑戦は、反対の声をはねつけるほど魅力的でもあったんだ」

 そんなキアヌが、2023年はじめにアメリカの掲示板サイトRedditの質問コーナーに登場。 “もっとも楽しかった撮影は?”の答えにも、心動かされる。

「『マイ・プライベート・アイダホ』でリヴァーと一緒に撮ったシーン。僕が運転しているバイクの後ろに彼が乗って。本当は外に出る予定はなかったけど、僕たちはちょっと道をそれてヘルメットもしないままに走りまくって。ただただ2人で遊んでいた。あれは本当に良い日だったなぁ。リヴァーが恋しいです」

 そういえば、リヴァーも「撮影中に、しょっちゅう夜の街に2人で出かけていたんだ。遊びじゃないよ(笑)。男娼の役だったからさ。あくまで役作りのための人間観察だけど、すごく面白かったなぁ」と披露してくれたのが、最後のインタビューとなった。

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