カンヌ国際映画祭で「若き才能が爆発した作品」として絶賛された『ナミビアの砂漠』が9月6日公開。男性を振り回すようなエキセントリックな主人公・カナを河合優実が演じている。山中瑶子の初監督作『あみこ』を観て衝撃を受け、河合は「いつか出演したいです」と山中監督に直接伝えたという。それから7年。山中監督の初の長編作で主演を果たした彼女に、撮影中のエピソードなどを聞いた。(取材・文:佐久間裕子、写真:久保田司、編集:SCREEN編集部)※一部質問文内で役名に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。(2024年9月10日)

念願叶っての山中瑶子監督との協業は「すごく幸運」

ーーハヤシ、なかなか痛い男子だなって。ふたりの恋愛についてはどう感じていらっしゃいますか。

「私の感覚では恋人とあんなに肉体的なケンカはしないです。でも一般的にみんな恋バナをいっぱいするけど、家の中のことまで見えてくるような話はしないじゃないですか。コミュニティの中で恋人同士の常識や関係性についての当たり前みたいなものの認識ができていくから、家の中のことって恥ずかしすぎて、みんなに話せないですよね。

だからカナのしている恋愛について、私も観てくださる方の感想が気になります。すごくわかるって方もいれば、嫌悪感を示す人もいらっしゃるだろうし。みんなどういう風に恋人との関係性を築いているのか、私もいろんな人たちに聞いてみたいなと思います」

ーーハヤシはカナと激しいケンカもするけど、それでも別れようとは言わないんだなと。

「別れた方がいいですよね、絶対。私もそう思う。ハヤシは絶対にカナと一緒にいない方が幸せになれるって、外から見たらわかり切っているけど……。でも好きなんだと思います、カナのことが」

画像: カナ(河合)とハヤシ(金子大地)

カナ(河合)とハヤシ(金子大地)

ーーハヤシとのケンカのシーンは格闘技かっていう激しさでビックリしました。

「ケンカのシーンはリハーサルを重ねて、本番は怪我がないようにちゃんと成功させることが目標って感じでした。でも部屋の外、廊下まで出て行ったりして面白かったです。声を出すから喉も疲れました。

途中で『お前には実家があるからいいよな。プチブル死ね』って言うセリフがあって、その言い方に山中さんはこだわっていた気がします。激し過ぎず、でも冷たくてもいけない、一番面白いトーンを探っている感じがしました」

ーーカナの前彼のホンダを演じた寛一郎さんが道路に突っ伏して号泣するシーンも強烈でした。

「あそこはスタッフさんの実体験を元に書かれたシーンなんです。女性のスタッフさんで彼氏が泣き崩れたってエピソードで、『映画みたいに膝から崩れ落ちたのか』など、寛一郎さんがその方に詳細を聞いていらっしゃいました。そしたら『スムーズに地面に近づいていました』みたいなことをおっしゃっていて、寛一郎さんもけっこうスピーディーに倒れていましたね(笑)」

ーーあの倒れ方も笑えました(笑)。では最後にずっと望んでいた山中監督と一緒に作品に作るということが叶いました。山中監督との撮影は、河合さんにとってどんな経験になりました?

「特別ですね。山中さんとは出会った経緯も特別でしたし、漠然ですが、山中さんとならすごく面白いものができる、自由になれるんじゃないかって気持ちがずっとありました。今回そう感じていた通りに、自由に映画を作ることができたと思います。

日本公開より先にカンヌ国際映画祭で上映されて、世界中の人から良い反応をいただけたので、出来すぎているんじゃないかみたいな話をしましたが、そのぐらい山中さんと一緒にこんな形で物作りができたのはすごく幸運でした。『面白い映画を作る』という、すごくシンプルな目標だけを持ってここまで来られるということを実証できたというか。『妥協しないでやりたいことをやり続ければ形にできるじゃん!』って実感できました」

画像: 念願叶っての山中瑶子監督との協業は「すごく幸運」

PROFILE
Yuumi Kawai

2000年生まれ、東京都出身。2021年、『サマーフィルムにのって』『由宇子の天秤』での演技が高く評価され、第64回ブルーリボン賞<新人賞>ほか数々の映画賞で受賞。2022年には『ちょっと思い出しただけ』、『愛なのに』、『女子高生に殺されたい』、『冬薔薇』、『PLAN 75』、『百花』、『線は、僕を描く』、『ある男』など数多くの話題作に連続で出演。 近年では『少女は卒業しない』(23)、『ひとりぼっちじゃない』(23)、『四月になれば彼女は』(24)、『あんのこと』(24)、劇場アニメ『ルックバック』(24)、ドラマでは「不適切にもほどがある!」(24/TBS) 、「RoOT / ルート」(24/TXほか)など話題作への出演が続く新進気鋭の女優。

interview& text/佐久間裕子 photo/久保田司
styling/髙山エリ hair& make/村上綾
衣装:トップス¥20,350 スカート¥28,600(共にMARILYN MOON/MARILYN MOON ONLINE STORE) イヤーカフ 各¥16,500(SHUN OKUBO) 他スタイリスト私物
問い合わせ先:SHUN OKUBO:03-6753-4203
MARILYNMOON ONLINE STORE:https://marilynmoon.jp/

『ナミビアの砂漠』9月6日(金)公開

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2017年、19歳で撮影、初監督した『あみこ』国内外の映画祭で評判を呼んだ山中瑶子監督の本格的な長編第一作。主役にはテレビドラマ「不適切にもほどがある!」で人気を集め、映画『あんのこと』、『ルックバック』など出演作が続々と公開される河合優実が抜擢された。河合演じるヒロインを愛する二人の男性を演じるのは金子大地と寛一郎。日本映画界を牽引する3人の俳優が強烈な個性を発揮し、カンヌ映画祭でも「東京のZ世代を鮮烈に描きだした作品」として若者を中心に支持を集めた。

<STORY>
東京の片隅で暮らす21歳のカナ(河合)。やり場のない感情を持て余したまま優しいけれど退屈な恋人のホンダ(寛一郎)と同棲生活を送っていた彼女は、自信家の映像クリエイター、ハヤシ(金子大地)に乗り換えて新生活を始めるが、しだいに退屈な世の中と自分自身に追い詰められていく。

監督:山中瑶子
出演:河合優実、金子大地、寛一郎
配給:ハピネットファントム・スタジオ©2024
『ナミビアの砂漠』製作委員会

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