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ポール・メスカル プロフィール
1996年2月2日生まれ、アイルランドのメイヌース生まれ。TVドラマ初出演にして主演を務めた「ノーマル・ピープル」(20)で一躍ブレイクを果たし、英国アカデミー賞(BAFTA)テレビ部門の主演男優賞を受賞。
『aftersun/アフター・サン』ではアカデミー賞、主演男優賞にノミネートされた。待機作には、ジョシュ・オコナー共演の『The History of Sound(原題)』。
“とにかく今までの人生には満足しています。かなり一生懸命、自分の大好きな仕事をしてきたわけですから”
アカデミー賞作品賞に輝いた不朽の名作『グラディエーター』に、24年ぶりとなる待望の続編が完成。ストーリーもちょうど十数年後を描く『グラディエーターⅠⅠ 英雄を呼ぶ声』は、前作でラッセル・クロウが演じたローマ帝国のマキシマスの“息子”ルシアスが主人公だ。アフリカから奴隷としてローマに連れて来られたルシアスは、復讐心と不屈のスピリット、そして父から受け継いだ強靭な肉体で、コロセウム(円形競技場)での最強剣闘士=グラディエーターとなる。
そのルシアスに抜擢されたのが、現在28歳ながら、『aftersun/アフターサン』でアカデミー賞主演男優賞ノミネートなど、実力で世界的トップスターとなったポール・メスカルだ。巨匠リドリー・スコット監督の下で、初のアクション大作の主役はどんな経験になったのか。そして俳優業での成功の喜びや今後の新作についても聞いた。
──前作『異人たち』とは、まったくイメージの違う今回のルシアス役。俳優冥利に尽きるのではないでしょうか。
「まさにこの流れこそ、僕の仕事だと実感しています。必ずしも観る人にサプライズを与えたいわけではなく、俳優としてつねに別人格を演じているだけですが、特に『異人たち』のハリーと『グラディエーターⅠⅠ』のルシアスは極端な運命をたどりますよね。それぞれの役の行動への動機、性格などを自分なりに発見し、表現するアプローチは変わりませんが、このようにまったく違う役に僕は積極的に取り組みたいタイプかもしれません」
──本作に関わる以前、前作の『グラディエーター』やリドリー・スコット監督にどんな印象を持っていましたか?
「『グラディエーター』は僕だけでなく、多くの人の心に強いインパクトを残した映画でしょう。そしてリドリーに関してですが、僕は15歳か16歳の頃、『エイリアン』や『ブレードランナー』を初めて観て、人格形成に影響を与えられた気がします(笑)。『テルマ&ルイーズ』は演劇学校の授業でひとつの題材として親しみました。そういえば僕の父のベスト映画は『オデッセイ』。そんな風にリドリーは僕の家族の中でも人気者です」
──そのリドリーの演出について聞かせてください。彼はキャスティングした俳優に、ほぼすべての演技を任せることで有名です。
「たしかにリドリーの仕事は、キャスティングが90%の重要性を占めると思います。それくらい俳優を選ぶ能力や直感が優れているんです。そして撮影に入ると、あまりリハーサルをやりません。不安だった僕は彼に『もう少しリハーサルをお願いします』と頼んだくらい。リドリーからの指示は多くないのですが、少ない言葉で的確な指示を与えてくれる監督です」
──ルシアスはコロセウムなどで猛獣と戦いを繰り広げます。CGIも使われ、難しいシーンではなかったですか?
「その点でもリドリーは、われわれ俳優に演じやすい工夫をほどこしてくれました。猛獣に近いスタイルをしたスタントマンが多数参加し、本当にその場に相手がいるような気持ちにさせてくれたのです。僕らは実際に、動物のように動くスタントマンと戦っていました。そしてサイは3Dプリンターで作られたような本物感のあるモデルが用意され、瞬きをするなどリアルだったので、想像力を駆使せず現実的な反応ができたと思います」
──デンゼル・ワシントンとの共演シーンも多いですが、やはり特別な時間になりましたか?
「この映画に出た俳優すべてが、デンゼルとの共演を喜んだはずです。演劇学校に通っていた頃の自分に『将来お前はデンゼルと共演するんだぞ』と伝えたら、『嘘だろ!』と興奮して噛みついてくるかもしれません(笑)。デンゼルがすばらしいのは、決して相手の演技を台無しにしないこと。それはテクニックのひとつでもあり、僕は彼と一緒にカメラの前に立っているだけで幸せな気分を味わっていました」
──20代で俳優として大成功を収めている自分を、客観的にどう評価していますか?
「客観的に答えるのは難しいですが、とにかく今までの人生には満足しています。かなり一生懸命、自分の大好きな仕事をしてきたわけですから。監督たちと一緒になって、クリエイティヴの精神をキープできる時間が、これからも続いてほしい。ただそれだけですね」
──今後も話題作への出演が続きますが、リチャード・リンクレイター監督との『Merrily We Roll Along(原題)』はミュージカルなので新たな面を見られそうですね。
「撮影が始まるまでもう少し時間がありますが、リンクレイター監督の『6才のボクが、大人になるまで。』と近い手法で、約15年かけたプロジェクトになります。(『Mer-rily〜』の作曲家)スティーヴン・ソンドハイムは世界で最も尊敬するアーティストの一人ですし、何より舞台でのミュージカルが大好きなので、僕にぴったりの作品になると期待しています。15年後に作品を総括して話すのが今から楽しみですね」
──話を聞いていると俳優業を心から愛しているようですが、仕事以外に楽しい時間は?
「その質問をよく受けるのですが、生活のほとんどの時間を演技のために費やしているので、いつも答えが見つからないんです(笑)。多くの俳優と同じように、とにかく僕は演技に夢中。それ以外は、ありきたりですが家族や友達と過ごす時間を大切にしています。いま最も楽しみなのは『グラディエーターⅠⅠ』のロンドンプレミアに家族を連れて行くこと。僕の人生にとって特別な瞬間になりそうです」
『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』STORY
ローマ帝国が栄華を誇った時代。ローマを支配する暴君の圧政によって自由を奪われたルシアス(ポール・メスカル)は、グラディエーター(剣闘士)となり、コロセウム(円形闘技場)での闘いに身を投じていく。
『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』
2024年11月15日(金)公開
アメリカ/2024年/2時間28分/配給:東和ピクチャーズ
監督:リドリー・スコット
出演:ポール・メスカル、ペドロ・パスカル、コニー・ニールセン、デンゼル・ワシントン、ジョセフ・クイン、フレッド・ヘッキンジャー
©2024 PARAMOUNT PICTURES.