季節も秋になり、そろそろ次年度の映画賞レースが始まるシーズンに突入。重要な映画祭も開催され、早くも受賞予想がちらほら聞こえ始めていますが、賞を狙う年末公開作品が待機する中、2つの有力作品が日本公開されます。今回は『憐れみの3章』よりエマ・ストーン&ジェシー・プレモンスのインタビューとキャストコメントをお届けします。(構成:スクリーン編集部/デジタル編集・スクリーン編集部)
カバー画像:©Giulia Parmigiani

エマ・ストーン&ジェシー・プレモンス インタビュー

この映画で私たちが物語や役ごとに変えたのは見た目とテンポだったんです エマ・ストーン

映画のテーマやムードは頭の中ではさっぱりでしたが体がすぐに反応したんです ジェシー・プレモンス

 俳優にとって一つの作品で三つの異なる役を演じる『憐れみの3章』はとてもやりがいのある仕事だということをエマ・ストーンとジェシー・プレモンスは教えてくれる。しかも「監督は誰もが組みたがるヨルゴス・ランティモス」という点も大きなボーナスになっていることが彼らの話から納得できる。

エマ・ストーン(以下エマ)「これでヨルゴスとは三作目になりますが、誘われる時は彼はあまり説明しないですね。おおまかなストーリーやどんな役とかは教えてくれますが『大体そんな感じだよ』という言うだけです(笑)。『憐れみの3章』のことは数年前からヨルゴスとエフティミス(フィリップ)が脚本を書いていることを知っていましたから、どんな映画になるのか楽しみでした。出来あがった脚本をすごく気に入って、一つの映画で三つの役を演じ、それが3部作になっていくのもエキサイティングだと思いました」

ジェシー・プレモンス(以下ジェシー)「僕の場合、エージェントから『ランティモス監督から話が来ています』と言われて、即決でした(笑)。台本をむしゃぶるように読んでいろいろな感情が沸き上がったんですが、読み終わると『あれ、どんな内容だっけ?でもこれは絶対“あり”だ』と思い、全力でぶつかることにしました。ヨルゴスは非常に特殊でユニークなやり方をする達人なんです。僕は枠にはまろうとせず、枠があればそれを壊そうとする準備のある人に会うと勇気づけられるんです。それは探求心に満ちた仕事のやり方で、大好きなんです。一方でヨルゴスはあまり多くの答えをくれる人ではないんですが、その時はもどかしく感じても、後になって物語に最も共鳴する部分や、没頭するためのエキサイティングな方法を自分自身で発見できることに気づき、ありがたく感じるようになります」

エマ「ヨルゴスは何事も一筋縄でいかないんです。『憐れみの3章』で私たちが変えたのは物語そのものや登場人物に加えて、見た目とテンポだったんです。それぞれの物語をオープンな気持ちで受け止めるようにしました。3本の短編映画を続けて撮影するようなものですから」

ジェシー「映画の順番通りに撮影してくれたのも助かりました。そうでないと大混乱になっていたでしょうから(笑)。僕が1話目で演じたロバートは狂乱し、歓喜し、戦慄するという感情がないまぜになっていて、すごく濃厚な演技を必要としたために、撮影が終わるころには彼の心理状態そのままになっていました。役者として初めての体験でしたが、クランクアップした夜に髪を切り、一日半後には2話目の役になるために警官の衣装に袖を通していました。3話目のアンドリューを演じるころには出演シーンも減ってきて楽になってきましたから、前の2話とは全く違う雰囲気を出すことができました。全体的に撮影進行を急いでいたので、方向を見失いそうになりましたが、どんな映画にも撮影の始まりと終わりがあります。ここでは3度もそれを味わいましたが(笑)」

エマ「私が1話目で演じたのはジェシーが演じるロバートとバーで出会うリタです。それが仕組まれたものかまったくの偶然かはわかりません。2話目ではジェシーが演じるダニエルの妻で海洋学者のリズを演じますが、彼女は調査中に無人島に取り残され、救助されて家に帰ったものの、ダニエルの記憶と違った人物になっているという役です。3話目のエミリーはあるカルト教団のメンバーという役で、ジェシー演じるアンドリューと一緒に、救世主となる人物を探し求めているんです。このようにキャラクターは全く違いますが、私が見つけた彼女たちの共通点は『愛されたい』『受け入れられたい』『支配されたい』という気持ちと同時に『自由でありたい』『自己管理したい』という気持ちとのバランスのようなものです。でもそのために愛を失ってしまうんです」

ジェシー「僕自身は映画のテーマやムードはかなり早い時点で体の中に入っていましたが、頭の中では何のことだかさっぱりわかっていませんでした。理性ではわかってないのに、体はすぐに反応していきました。台本を読み込んでいくうちに稽古の回数も増え、議論はほとんどないのに自然とまとまっていきました」

エマ「ジェシーと仕事をしたのは今回が初めてでしたが、私もヨルゴスも彼が参加してくれるということで感激しました。もともと彼のファンでしたが、ますます素晴らしくなっていました。とても優しくて面白い夢のような人なんですよ」

ジェシー「新人でもベテランでも常に刺激を受けるような方々と仕事をするのは大切です。独自の味を持っていて、そこから学べるような方々です。俳優の仕事はいつも違うことをすることに面白みがあります。毎回新しい体験をし、新しいことを学びます。今までに身を置いたことのない領域に挑戦することが、この仕事に関わる者の重要な役割と思います。台本を読んでそれを自分なりの言葉にするなら、『その人物を掘り下げること』だと思いました。人間の営みには説明のつく側面と説明できない側面があります。いずれにしても知性で片付けられないものです。五臓六腑が反応した結果です」

エマ「ここしばらく、自分で見てみたいと思うような作品に出演できることが続いたので、撮影現場でもストーリー全体を把握することは楽でした。でもだからこそ脚本に惹かれるんです。ストーリー、一緒に働く監督、俳優が好きなんです。映画そのものは少し客観的になりやすいんですが、いつも確実に取り組むべきことが見つかりますね」

『憐れみの3章』
2024年9月27日(金)公開
イギリス=アメリカ/2024/2時間44分/配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
監督:ヨルゴス・ランティモス
出演:ジェシー・プレモンス、エマ・ストーン、ウィレム・デフォー、マーガレット・クアリー、ジョー・アルウィン、ホン・チャウ

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