カバー画像:©Giulia Parmigiani
キャストたちが語るヨルゴス・ランティモス監督との撮影現場
ウィレム・デフォー
「『哀れなるものたち』の仕事は私にとって素晴らしい時間でした。今回もヨルゴス(ランティモス)とエマ(ストーン)が一緒に電話をかけてきて誘ってくれたんです。突然でしたが嬉しい心遣いでした。ヨルゴスは“シアター・ゲーム”(俳優たちがリハーサルや本番前に緊張をほぐすために行うゲーム)に長けているし、その場にいる全員がお互いを知ることができるようにしたんです。するとみんなが自由に自分自身をさらけ出すことができるようになる。一度そうなるとユーモアや遊び心のセンスが生まれてくるんです。ヨルゴスは演劇を知っている人なんです。建築も絵画も音楽も造詣が深い。彼はそうした形式を知っていて映画に持ち込んでくるんです。付け加えるとヨルゴスは本当に洋服が好きなんですね。いつも粋な服を着ているんですが、作品にもそれが表れていると思います(笑)」
ホン・チャウ
「撮影が始まる前のリハーサルが楽しかったです。俳優たちがシアターゲームをたくさんして本当にそれが役立ったと思います。その背景には仲間意識や集団のエネルギーを高めるという意図もあるんですけど。実際にしている時はなぜこれをしているのかわからなかったですけどね。こうやって楽しんでいるけどどのシーンで役立つんだろうと考えましたが、それぞれのシーンで何を得ようとしているのかわからないまま演じるのは楽しかったです。ヨルゴスは人間がいかに愚かなものであるか、正直に表現していると思います。彼の映画のユーモアや奇妙な側面はそこにあると思います。また彼の作品に呼ばれることを願っています」
マーガレット・クアリー
「前作の『哀れなるものたち』の撮影中に、ヨルゴスがこの映画の話をしているのを聞いて『私もキャスティングしてほしい!』と脚本も読まないで考えていました(笑)。脚本を読んでみると奇妙で楽しく、滑稽でもあり、激しくて悲しい。読んでいるだけで興奮したのに、みんなが演じるのを見てさらに興奮しました。ヨルゴスや素晴らしい俳優たちと一緒に仕事をする贅沢の一つは、製作している間、ずっと安全で自由でいられることなんです。映画製作中に食事や睡眠など、いつもの生活を維持することは本当に大変なんです。みんな自分の出番が終わってもずっと現場に残っていたんですが、そこにいたかったんでしょうね。こういうことは普通あまりないんです」
ママドゥ・アティエ
「ヨルゴスは自分が集めた人を信頼していると思います。『僕の映画の世界の一部となって、全身全霊でコミットしてくれ』という感じです。とにかくやるしかない、という感じで、準備をして現場に集まり、ヨルゴスが『アクション』と言ったら演じるんです。もう全てを捧げて飛び込みました。共演者の方々を見ていると、みんな本物だと感じます。見せかけでなく本当に演技を愛している人たち。今回は想像で補う部分が多く、共演の皆さんといろいろ意見を交わして、オープンに受け入れることが多かったですね。ここでは三つの物語を演じましたが、たとえ1本の映画でも、俳優たちの一団が同じ精神を持って撮影に取り組むということはとてもクールです」
ジョー・アルウィン
「『女王陛下のお気に入り」でもそうでしたが、ヨルゴスはキャラクターやテーマ、ストーリーについて説明しません。しかしリハーサルの間にみんなの絆が深まっていきます。演じたり、自由になるために何かを捨て去るという感じです。彼と一緒にいると、まるで大きな子供が砂場のようなところで遊ぶ機会を得た、みたいな感じになるんですが、“シアターゲーム”などをして私たちのバリアを取り払い、何でも挑戦できる気分にしてくれるんです。ゲームで恥ずかしい思いをしても、撮影の時に解放されて楽な気持ちになるんです」
ハンター・シェイファー
「ある日、ヨルゴスが『プレイ(遊び、演技)しに来ないか?』と誘ってくれたんです。私は自分が出るシーンの台本しか読んでいなかったのですが本当に遊んでいるかのようでした! 撮影当日、竜巻が接近してきて、私はマーガレットたちと一緒にクローゼットに引っ張り込まれ、竜巻が過ぎ去るのを待ったんです。通過した後、屋根の一部が剝がされていました! 死体と一緒に竜巻警報の解除を待っていたなんてクレージーですよね(笑)」
『憐れみの3章』
2024年9月27日(金)公開
イギリス=アメリカ/2024/2時間44分/配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
監督:ヨルゴス・ランティモス
出演:ジェシー・プレモンス、エマ・ストーン、ウィレム・デフォー、マーガレット・クアリー、ジョー・アルウィン、ホン・チャウ