“イマジナリーフレンド”の概念を覆して誕生したチョンシー
本作は、可愛らしいテディベアと友情をはぐくむ少女と家族の周囲で巻き起こる、不可解な現象と想像を絶する恐怖を描くホラー作品。タイトルとなっている「イマジナリー」は、子どもが空想上でつくった友達の「イマジナリーフレンド」を意味する言葉。
NHK連続テレビ小説「虎に翼」では、故人たちが劇中に「幻影」として現れる演出を“イマジナリー”描写として表現し、連日ネットニュースで話題になるほど「イマジナリー」というワードがお茶の間に浸透しつつある。
また近年では、少女アマンダの空想から生まれた少年ラジャーが、彼と同じく想像から生まれた仲間たちと出会い、現実と想像を超える大冒険を描いたアニメーション映画『屋根裏のラジャー』(23)や、母親を亡くして心に深い傷を抱える少女ビーと、子どもにしか見えない不思議な存在“もふもふ”ブルーの交流を描いた心温まる冒険の物語、『ブルー きみは大丈夫』(24)といった「イマジナリーフレンド」を題材した作品が相次いでいる。
これらの作品に共通するように、「イマジナリーフレンド」は子どもたちの寂しい気持ちに寄り添って、創造力を養ってくれる存在として広く認識され、子どもたちが空想の友達を通じてスピリチュアルな世界とつながるというユニークな手法は、いくつかの文化圏に共通している。
しかし、もし空想の友達が現実に存在していて、本当は友達ではないとしたら?「空想の友達は素晴らしい仲間にもなるし、恐ろしい怪物や恨みを抱いた悪霊にもなりえる。この映画では自分がどちらを目撃しているのか分からなくなるんだ」とジェフ・ワドロウ監督が語るように、本作では子供の空想と邪悪な世界の境界線をあいまいにし、テディベアのチョンシーを異世界の恐ろしい存在として描くことで「イマジナリーフレンド」の概念を覆している。
プロデューサーのジェイソン・ブラムは制作の背景について「観客の不安感をあおり、皆が安全で無害だと思っていた存在を恐怖の源にすることが我々の目的だった」と解説し、誰しもが持っているような幼少期の体験を題材として恐怖をあおるために、「幼少期の無邪気な思い出が持つ親しみやすさを足掛かりに、そこから不気味で心がざわつくような要素を加えていった」と共感できる要素に特化しつつ、そこに観客が動揺するようなひねりを加えることが重要だったと明かしている。
子供の持つ無邪気さは、遊びや想像の世界と相まって平和で温かなものとして受け入れられがちだが、それが「暗い隅に潜んでいる不確かさとぜい弱さ」の象徴でもあると紐解くジェシカ役のディワンダ・ワイズは「本作は私たち全員の中に今もいる“子供のままの自分”のためのホラー映画よ」とメッセージを送っている。
『イマジナリー』
11月8日(金)より全国公開
配給:東宝東和
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