映画『BISHU ~世界でいちばん優しい服~』は世界三大毛織物(ウール)の産地として世界的に注目されている愛知県から岐阜県にまたがる尾州地域を舞台に、幾多の壁にぶつかりながらも、自らデザインした服を作り、家族のために役に立ちたいとまっすぐに突き進む主人公・史織の姿を描く。主演は『ミッドナイトスワン』で一躍注目を集めた服部樹咲。姉役に岡崎紗絵、父親役に吉田栄作が出演している。本作で商業映画デビューした西川達郎監督に作品に掛ける思いやキャラクターの演出について語ってもらった。(取材・文/ほりきみき)

“世界三大ウールの1つが尾州”と知ったときの驚きを取り込む


──ウールについて丁寧に描かれていますが、いかにもご当地映画という感じはありません。そのバランスが見事でした。

ご当地映画の括りに入るかと思いますが、それを全面に出さずに、物語の中でモチーフとして現れる方が映画としては面白いものになるという思いがありました。いきなりウールありきで物語に入るのではなく、“こういう主人公がいて、その子がウールの工場でこんな風に働いています”“主人公は布が好きで、ここまでこだわっています”とした方がすっと理解できるのではないかと思ったのです。

画像: “世界三大ウールの1つが尾州”と知ったときの驚きを取り込む


──“世界三大ウールの1つが尾州”ということをクイズとしてうまく作中に取り入れていたことで印象に残りました。この知識はずっと忘れないと思います。

劇中で描いているように、かなりハイブランドの服や大統領夫人の服に尾州のウールが使われていることを僕も今回、初めて知って、「そうなんだ!」と驚きました。その驚きをそのまま作品の中に取り入れたのです。


──撮影を振り返って、いちばん印象に残っていることはどんなことでしょうか。

素直に言えば、ランウェイシーンの撮影ですね。大事なクライマックスなので、いいショットを撮りたい。しかし、エキストラで参加された大勢のモデルの方だけでなく、お客さん役で集まってくださった地元の方もいて、最大人数での撮影でしたから、かなり大変でした。でもその分、楽しい時間もあったのが思い出深いです。


──『向こうの家』で取材させていただいたときに、「でんでんさんの姿を見て、『現場は楽しまなくっちゃいけない。監督も楽しめて初めていい作品になる』ということを学んだ」とおっしゃっていました。今回は楽しめましたか。

楽しかった部分もあり、苦しかった部分もあり…。まだまだ修行が足りませんね(笑)。

今回は栄作さんが現場でちょいちょい冗談を言って、現場を盛り上げてくれました。ベテランの俳優さんのそういう素晴らしい面を見ていて、僕も監督として、そういう思いを持って現場に臨まないといけないと改めて認識しました。


──『向こうの家』から本作まで5年掛かっています。コロナ禍で企画を進めることができなかったのではないかと思いますが、その期間をどう過ごされていましたか。

コロナ禍にドラマの仕事をやらせていただくようになりました。そこで商業の世界の経験を何度か積んだ上でこの作品に挑めたのは大きかったですね。ドラマで経験したことは僕の血肉になりました。もし『向こうの家』の後、すぐにこの作品を撮っていたら、もっと戸惑ったと思います。キャスティングに関しても、このタイミングで撮ったからこそ、集まってもらえました。映画はご縁の上で成立している部分が多分にあると思います。


──今後の方向性についてはいかがでしょうか。

ドラマもやっていきたいというポジティブな思いとともに、映画監督として映画を主体にやっていきたいという思いが強い。これからも映画をベースにしていきたいと思っています。

次のテーマの種はいくつか持っていて、それらを育てている最中です。

<PROFILE> 
西川達郎 監督・脚本  
福岡県出身。東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻監督領域卒。修了制作品の映画『向こうの家』(19)が、ええじゃないかとよはし映画祭初代グランプリを受賞した他、うえだ城下町映画祭実行委員会特別賞、はままつ映画祭観客賞など多数の映画祭に選出され、渋谷シアター・イメージフォーラム、イオンシネマむさしむらやま、イオンシネマ港北ニュータウン他にて全国劇場公開される。また、2021年、「ゲキカラドウ」でTVドラマ監督デビュー。続いて「ひねくれ女のボッチ飯」(21)でメイン監督を務める。その他に「treatment/あの日ボウリング場から出られなくなったこと」(23)、「万城目ユリコは優しくなりたい」(22)で脚本と全話の監督を務める。

『BISHU ~世界でいちばん優しい服~』2024年10月11日(金)全国順次公開

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<STORY> 
高校生の史織は、毎朝7時、目覚まし時計代わりの軽快な機織りの音で起きる。明るく誰に対しても優しい性格だが、配膳の配置や歩き出しの足など生活習慣へのこだわりが強く苦手なことも多い。ある日、史織が描いた服のデザインを、親友の真理子が校内のファッションコンクールにエントリーする。さらに、真理子の提案で一宮市のファッションショーにも出品することに…真理子の協力のもと史織の服作りが始まった。それを知った姉の布美は、挫折した経験を史織に重ね、応援したい気持ちと背中を押せない気持ちの板挟みになり、父の康孝は史織が傷つくことを恐れ猛反対するのだった。だが、史織自身は服作りへの挑戦を通して様々な人々と関わったことで、次第にある想いが強くなっていく...。

<STAFF&CAST> 
監督:西川達郎 
脚本:鈴木史子 西川達郎 義井 優 
音楽:小山絵里奈 
出演:服部樹咲 岡崎紗絵/吉田栄作 製作総指揮:神谷哲治 
プロデューサー:森谷 雄 竹田太郎 
配給:イオンエンターテイメント 
©2024映画「BISHU 世界でいちばん優しい服」製作委員会

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