(文・池田敏/デジタル編集・スクリーン編集部)
カバー画像:Photo by Kevin Winter/Getty Images
この場に立てる事を誇りに思います。
奇跡です。
FX、ディズニー、Hulu、ありがとう。
クルーとキャストの皆様、
SHOGUNに関わってくれた皆様、
最後まで私を信じて、サポートしてくれてありがとう。
本作は東と西が(壁を越えて)出会う夢のプロジェクトでした。
とても難しいプロジェクトでしたが、全員が一致団結しました。
私たちは全員で奇跡を作る事ができました。
そして我々は共により良い未来を作ることができます。
本当にありがとう!
(第76回エミー賞主演男優賞受賞時のコメント/英語より翻訳)
これまで時代劇を継承して支えてきてくださった全ての方々
そして監督や諸先生方に心より御礼申し上げます。
あなた方から受け継いだ情熱と夢は海を渡り国境を越えました。
(第76回エミー賞作品賞受賞時のコメント/日本語)
西暦1600年前後の日本を舞台にした戦国ドラマ(日本でいう時代劇)「SHOGUN 将軍」は見どころ満載だからこそ世界中で支持された。それぞれ複雑な過去を持つ人々の宿命を描いた群像劇であり、誰が当時の日本の指導者になるかをめぐる政治ドラマであり、そこで生まれるバトルを描いたアクション&スペクタクルでもある。各話に万人を魅了する、普遍的な要素が詰まった秀逸なエンタメだから、エミー賞を制覇したのだ。
そんな「SHOGUN 〜」で主演・プロデューサーを務めた真田広之の功績は大きい。子役時代から日本で活躍した真田だが、海外進出したいという夢を以前から抱いていた。同時に、海外の作品が日本文化をきちんと描いていないことに不満を感じていた。しかしハリウッドで俳優の発言権は大きくない。本作で悲願だったプロデューサーになった真田は、脚本が作られる時点から本作に参加。そして海外の人々の視点から物語を描くのではなく、「日本人の役は日本人か日系人が演じる」「日本語であるべき台詞は日本語に」という従来のハリウッドでは困難だった方針を主張。当初めざした日本ロケは実現しなかったが、海外(主にカナダ)での撮影に、日本で時代劇を作ってきた職人や当時の日本文化に詳しい専門家を多数、現地に招いた。さらに真田は自身の出番がない日もセットを訪ねて、日本人から見て違和感がないよう俳優陣にアドバイスをするほど、情熱を注いだ。
エミー賞の授賞式の壇上、真田はそれまで英語で話していたのを日本語に切り替え、これまで時代劇を継承して支えたすべての日本人に敬意を捧げた。また真田は、これからハリウッドは日本だけでなく他の国の文化も重視するべきだと語る。多様性が求められる時代になるずっと前から多様性を大切に考えていた真田。製作が決まった「SHOGUN 将軍」シーズン2・3などで、今後も世界のエンタメの常識と戦う覚悟はたっぷりだ。
POINT1 日本人初の主演男優賞
エミー賞の主演男優賞を受賞した日本人は真田が史上初。1980年版で同じ役を演じた名優・三船敏郎ですらノミネートのみで終わった。まさに歴史的快挙!
POINT2 史上最多18部門での受賞
単年度で18部門も受賞したのはエミー賞史上で最多。第60回で13部門を制したミニシリーズ「ジョン・アダムズ」から一気に5部門も増えたのは驚異的。
POINT3 日本人の最多受賞記録も更新
本作は日本からキャスト&スタッフが多数参加。プロデューサーとしても参加した真田を含め、9人が受賞。もちろんこれも史上最多となる偉大な記録だ。
「SHOGUN 将軍」第76回エミー賞受賞一覧
作品賞、主演男優賞(真田広之)、主演女優賞(アンナ・サワイ)、監督賞
撮影賞、編集賞(三宅愛架ほか)、ゲスト男優賞、キャスティング賞(川村恵ほか)
音響編集賞(山内あや子ほか)、音響賞(赤工隆ほか)、視覚効果賞
スタント・パフォーマンス賞(南博男、帯金伸行ほか)、メインタイトルデザイン賞
メイクアップ賞/歴史劇&ファンタジー、衣装デザイン賞(田中謙一ほか)
ヘアースタイリング賞、プロステティック メイクアップ賞
※日本人受賞者のみ名前を記載
※ドラマシリーズ部門以外では、短編部門のノンフィクション/リアリティシリーズ賞にて、特別番組「The Making Of Shōgun」も受賞