カバー画像:Photo by Axelle/Bauer-Griffin/FilmMagic
私の本来の感情をリリー役に重ねるように演じたことを誇らしく感じるんです
全米でこの夏大ヒットを記録した『ふたりで終わらせる/IT ENDS WITH US』に主演したブレイク・ライヴリーは、まずオファーがあった時、原作者のコリーン・フーヴァーの名前を知らなかったと告白する。
「車に乗っていた時、仕事仲間から電話があって、ある新作の出演オファーが来ていると言われたんです。彼が原作者コリーンの名前を出すと同乗していた20代の女性が叫び出したんです。若い世代の彼女が名前を聞いただけでこんなに反応するなんて、と最初に興味を引かれました。彼女に聞くとみんな知っていますよ、というので書店に行ってコリーンの本がウィンドウに大量に置かれているのを見て驚きました。その晩脚本を読んで、主人公のリリーが大好きになったんです。気に入ったのはリリーが繊細なだけの女性でなかったことです。彼女は主体性があって地に足がついていて、ユーモアのセンスもある。そして過去の出来事のせいで翳りもあって、影響されやすく弱い面もある。そんな全ての側面を持っていながらエンパワメントされた女性です。子供の頃の家庭内のトラウマがあって、絶対母親のようにはならないと心に決め、警戒しています。それなのに彼女が同じパターンに陥ってしまった時の衝撃はより大きなものになります。どんなに主体性があって自信に満ちた女性でも危険信号を見逃すことがあるということが重要でした。それと絵に描いたような女性らしさを男性らしさが支配するといった構図にしたくありませんでした。2人の男女が対等な立場にあれば、その関係がおかしくなっていく時のリリーの戸惑いがより大きくなると思ったんです」
女性たちが夢中になる大ヒット小説の中に描きたいことがきちんと見えているブレイクの賢明さが伝わる言葉だ。
「リリーと私は全然違います。私が映画に出始めたころは内気で緊張していました。何を求められているかもわかりませんでした。そんな時、メリル・ストリープやトム・ハンクスの映画を見ると、彼らは役柄に入り込んでいても彼ら自身を感じさせます。私が好きな演技は完全に自分を消してしまうのではなく自分の上に役柄を重ねる人たちです。もちろん自分を全部隠して演技する人も素晴らしいですが、私はメリルやトムのようになりたいと思ったんです。リリーは私が演じた中で一番タフな女性で徹底的にこだわりぬいて演じたつもりです。私自身は悲しい時、痛みに対処するかのように逆に明るく振る舞ったりします。脚本に描かれたリリーの反応とは違うんですが、そういう私の本来の感情をリリーに重ねるようにしました。だからこそ今回の自分の演技を誇らしく思っています。彼女の感情の旅路に忠実だと思えるからです。その場に立った時、自分ならどうするだろうと考え抜いて自分らしい演技をすることで、最も本物らしいリリーを見せることができると思ったんです。なぜならリリーは誰かのふりをしていないから。本物の感情なんです」
と今回の演技について、誇りを感じていると胸を張るブレイク。彼女はこの映画の持つ意義についても語ってくれた。
「この映画の素晴らしさは人間のあらゆる感情の彩りがあるところだと思います。明るさ、喜び、ユーモアだけでなく悲劇、暴力、トラウマなど負の感情まで女性だけでなく人が生きる中で経験することの万華鏡です。リリーだけでなく男性キャラもパワフルですし。そして若いころのリリーと現在のリリーの物語にそれぞれ始まりと終わりがあって、二つを重ねると、より大きな美しいアーク(弧)が見えてきます。エモーショナルな映画ですが、悲しみだけでなく様々な彩りがあるからここまで観客の心をつかむんだと思います。これは自分のことに目を向けた作品だという女性たちもいることを知っていますが、そういう人にはその状況から抜け出せることを知ってほしいです。自分がパターンに壊されるのでなく、自分からパターンを打ち破るんです。この方法でなければだめというのではないですが、インスパイアを受けてほしいなと思います。そのつもりで作り始めた作品ではないんですが、心に響くオーセンティックな映画、観客が笑って泣いて、何かを感じられる作品を目指して作ったものなんです」
『ふたりで終わらせる/IT ENDS WITH US』
2024年11月22日(金)公開
アメリカ/2024/2時間10分/配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
監督・出演:ジャスティン・バルドーニ
出演:ブレイク・ライヴリー、ジェニー・スレイト、ブランドン・スクレナー