ニコラス・ケイジがフルスロットルで狂気をまき散らす!
現代の映画界において、ニコラス・ケイジほど特異な個性をみなぎらせているスター俳優は、世界中のどこにもいないだろう。名門、コッポラ一族の血を引くサラブレッドとして1980年代初頭に映画デビューし、1995年の『リービング・ラスベガス』では米アカデミー賞主演男優賞を受賞した実力派でありながら、ひとクセもふたクセもあるキャラクターを好み、『キック・アス』『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』のような破格の異色作、怪作に出演してきた、そのキャリアは、まさに自由奔放にして縦横無尽。
近年も『PIG/ピッグ』『マッシブ・タレント』などで多くの映画マニアを唸らせたケイジは、A24とアリ・アスターがタッグを組んだ『ドリーム・シナリオ』(公開中)での妙演も記憶に新しい。全米スマッシュ・ヒットを飛ばしたサイコ・ホラー『LONGLEGS(原題)』も待機中である。
そんな新たな絶頂期のまっただ中にあるケイジがプロデューサーを兼任し、持ち前の“怪優”ぶりを全編フルスロットルで披露する最新作が本作である。
ケイジの役どころは、素性が謎のベールに覆われた名無しのカージャック男。真っ赤に染めた髪に赤いヴェルヴェットのジャケット、さらに無精ひげを蓄えた風貌からして強烈なインパクトを放つ。もうひとりの主人公である運転手のデイビッドを翻弄し、観客を行き先不明の恐怖のドライブへと誘っていく。
デイビッドを演じるのは、リブート版『ロボコップ』や『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』で脚光を浴び、ジョン・ウー監督作品『Silent Night(原題)』も控えるジョエル・キナマン。
監督を務めたのは、イスラエル出身のユヴァル・アドラー。ポリティカル・アクション『ベツレヘム 哀しみの凶弾』で数々の賞に輝き、続くノオミ・ラパス主演『マヤの秘密』でハリウッド進出を果たした気鋭が、本作でも巧みなストーリーテリングと複雑なキャラクター描写に手腕を発揮。不条理なまでに予測不能のストーリー展開に引き込まれ、随所に炸裂するハードなバイオレンスに息をのまずにいられないアクション・スリラーを完成させた。
動機も目的地もわからない一夜のカージャック事件の顛末を描く本作は、観る者にノンストップで極限のスリルを体感させる。拳銃を振りかざして主導権を握った男は、あるときはゲームを楽しむかのように、またあるときはサディスティックに弄ぶかのように、無力なデイビッドを心身共に追いつめていく…
ケイジとキナマンが密室的な車内で繰り広げる一触即発の駆け引きは、『ヒッチャー』のルトガー・ハウアーとC・トーマス・ハウエル、『コラテラル』のトム・クルーズとジェイミー・フォックスの関係性を想起させる。ちなみに本作には、ローリング・ストーンズの名曲「悪魔を憐れむ歌」と同じ原題がつけられている。“悪魔への憐れみ/共感”とは果たして何を意味するのだろうか。
<STORY>
突如現れた“謎の乗客”──彼の行き先はどこなのか。本当の目的とは。悪夢のような一夜のドライブが行き着く果てとは?
ある夜、実直な会社員のデイビッドは、愛する妻の出産に立ち会うため、ラスベガス中心部の病院へ車を走らせていた。ところが病院の駐車場で、見覚えのない男が後部座席に乗り込んでくる。「車を出せ」。拳銃を突きつけられ、やむなく指示に従ったデイビッドは、ハイウェイを走行中にあの手この手の脱出策を試みるが、非情にして狡猾な男にことごとく阻まれてしまう。支離滅裂な言動を連発する正体不明の男は、なぜデイビッドに異常な悪意を向けるのか。やがて狂気を剥き出しにした男の暴走はエスカレートし、デイビッドとともに立ち寄ったダイナーで大惨事が勃発するのだった……。
『シンパシー・フォー・ザ・デビル』
2025年2月28日(金)TOHOシネマズ日比谷他全国公開
監督・脚本:ユヴァル・アドラー
出演:ニコラス・ケイジ、ジョエル・キナマン
2023年/アメリカ/英語/90分/カラー/シネマスコープ/5.1ch/原題:Sympathy for The Devil
配給:AMGエンタテインメント
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