カバー画像:『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
CHECK 1 )BEHIND THE SCENE
〜緻密に魂が込められた制作の舞台裏〜
5年間におよぶトレーニング

新型コロナのパンデミックによって製作がストップしていた本作。しかしその遅れによって、ディラン役のティモシー・シャラメはじっくり時間をかけてボイストレーニングに、ギターやハーモニカなど楽器のマスター、音楽全般の勉強を積み、ディランの曲の真髄をつかむことができた。ひとつの役の準備としては異例の5年にもおよぶ期間が、ミュージシャンとしてだけでなく、「人間」としてのディランをスクリーンに焼き付けることになったのだ。
ミネソタの「空気」で役作り

ティモシー・シャラメは撮影が始まる前に、ボブ・ディランの故郷であるミネソタを訪れた。その時の思いを彼は次のように語っている。「役作りのために具体的な何かを調べるつもりはなく、ただミネソタの空気を感じようとしました。太陽の光、道路の感触、鉄鉱石の香りなどを感じながら、人々に驚きと感動を与えるボブの声がどう完成され、名曲を書くことができたのかに思いを巡らせたんです。肉体に何かを“浸透”させるプロセスでしたね」
1960年代を鮮やかに再現

本作のメインの舞台は、1960年代前半のニューヨーク。リーバイスが復元した衣装や、ヘア・メーク、小道具で当時のムードを伝えるが、実際にディランがステージに立った場所の再現にも注目を。カーネギーホールやライブハウスのギャスライトはニュージャージー州の古い劇場やバーで撮影が行われた。ニューポート・フォーク・フェスティバルのシーンは、当時のテントの色まで忠実なオープンセットが作られ、タイムトリップした気分を味わえる。
©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
CHECK 2 )BOB DYLAN
〜ボブ・ディランという"生きる伝説"〜
いかにボブ・ディランが影響力のある存在であるかを知れば、本作で描かれる“一人の青年”の部分にさらに惹かれるはずです。

1960年代当時のボブ・ディラン。目元にはレイバンのサングラス。
フォーク&ロック音楽の歴史で“最も重要なアーティスト”とされ、ザ・ビートルズをはじめ同時代、および後のミュージシャンへ与えた影響は計り知れないボブ・ディラン。デビュー翌年の1962年にリリースしたアルバムの中の「風に吹かれて」は歌詞のメッセージ性も含めて空前の名曲となり、1960年代には歴史的名アルバムを次々と世に送り出した。その後、ロックの殿堂入りを果たし、過去11回のグラミー賞、アカデミー賞(主題歌賞)など数々の栄誉に輝く。全世界でのアルバムセールスは1億2500万枚を超え、世界中で2000回以上のライブを敢行。ローリング・ストーン誌が選ぶ偉大な500曲の1位に輝いた「ライク・ア・ローリング・ストーン」のほか、「時代は変る」など1960年代のディランの代表曲は時代を超えて聴き継がれている。一度聴いた曲のフレーズが頭にこびりつく「イヤーワーム」という現象は、ディランの曲が源という説もある。1941年に生まれ、83歳の現在も現役。ここまで長く第一線で活躍を続けるミュージシャンは稀で、まさに「生きる伝説」! 2016年には“詩人”としてノーベル文学賞を受賞。授賞式に欠席したことも大きな話題に。もじゃもじゃの無造作なヘアスタイルに、黒いサングラス(レイバンのウェイファーラーモデル。現在に至るレイバン人気のきっかけに)をかけた姿はディランのトレードマークとなり、1960年代はファッションアイコンでもあった。

「風に吹かれて」が収録された2ndアルバム「フリーホイーリン・ボブ・ディラン」。ボブと歩く女性はスージー・ロトロ。
映画でも重要!ボブ・ディランを知るキーワード
【 CAFE WHA? 】
NYグリニッチビレッジのライブも行われるカフェ。ディランがたびたびステージに立ち、今もファンの聖地になっている。
【「風に吹かれて」】
1963年リリースのディランの代表曲。公民権運動を発端に「反差別」「反戦」のメッセージソングとして歌い継がれる。
【 スージー・ロトロ 】
シルヴィのモデルとなったアーティスト。ディランと腕を絡ませて歩く写真が、彼のアルバムジャケットに使われた。
【 ニューポート・フォーク・フェスティバル 】
1959年から休止期間も挟み現在も続くフェス。1965年、エレキギターで伝説を作ったディランは2002年に戻ってきた。
Photo by GettyImages
CHECK 3 )PRESS TOUR
〜ティモシーが話題を振りまいたプレスツアー〜
本作のPRで世界各地に降臨したティモシー。ファッションのみならず、多くのサプライズにも注目が集まりました。
Los Angels ▶︎ 片手には“ベイブレード”?

LAプレミアには、灰色のシャツの上にプラダのレザーブレザーを纏い登場したティモシー。缶バッジ、ポケットに入れられた「Bob Dylan」と書かれたサングラスがなんともロック。謎を呼んだのは、アクセサリーのごとく右手に握られた日本発の現代版ベーゴマ「ベイブレード」。実写映画化も噂されているため「ティモシーが出演するのでは?」と考察をするファンも。
New York ▶︎ まさかのブロンドヘア!


ニューヨークで開催されたプレミアでは、トレードマークであるカーリーヘアーを封印し、青いビーニーからハニーブロンドの前髪を流したティモシー。これは、2003年に映画『ボブ・ディランの頭のなか』でサンダンス映画祭に登場したボブ・ディランにオマージュを捧げたもの。この日に限らず、プレスツアーの衣装からもボブへのリスペクトが溢れている。
London ▶︎ 先輩トム・クルーズと2ショット!


ロンドンプレミアには「Lime」の電動自転車でレッドカーペットに駆け付けたティモシー。リップサービスかもしれないが、後日トーク番組では「駐輪場所が適切じゃなかったので罰金を取られた」とコメント。ロンドンでは、特別上映会にトム・クルーズがサプライズ来場!モニカやエルらキャスト陣、そしてマンゴールド監督とも旧知の仲のトムだが、ティモシーにとってもアドバイスをくれる良き先輩とのこと。
Paris ▶︎ フランスには「シャネル」と登場

パリでは、フランスを代表するブランド「シャネル」のレザージャケットに細見のピンクのスカーフとタイダイ染めのキャップを合わせて登場。
Rome ▶︎ ここでもスカーフがアクセントに!

ローマでは緑のスカーフを巻いて。プレスツアー中、ファッションにスカーフを度々取り入れているのは、スカーフ好きのボブ・ディランへのリスペクト。
Photos by Getty Images
『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』
2025年2月28日(金)公開
アメリカ/2024年/2時間21分/配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:ティモシー・シャラメ、エドワード・ノートン、エル・ファニング、モニカ・バルバロ、ボイド・ホルブルック
©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.