デイミアン・チャゼル監督の長編デビュー作『セッション』が、公開10周年を機に『セッション デジタルリマスター』として、4月4日(金)より全国公開される。この度、本作をはじめ数々のチャゼル作品で音楽を手掛けてきたジャスティン・ハーウィッツが来日。『セッション』の音楽の制作秘話などを語ったインタビューが到着した。

デイミアン・チャゼルとは「とにかく色々な面において最高にマッチしているとしか言いようがない」

ーー『セッション』が初公開されてから10年の時を経て、美しく蘇ったデジタルリマスター版でリバイバル公開されることについて、今思われることをお話いただけますか?

本当にワクワクしています。僕は『セッション』という作品をとても愛していて、自分にとって一番パーソナルな映画だと思っています。作品の持つ世界観やメッセージが、自分に響くものがあるんですよね。また、今でもしっかりと文化的な存在感を放っているところは、とてもスリリングでもあります。何といっても低予算で、それまでは学生映画しか作っていなかった僕らの最初の作品です。脚本を読んだ時から好きな作品で、大きな期待はありましたが、まさかここまで大きな作品になるとは思っていなかったし、今でもこのように来日して取材を受けることになろうとは思ってもいませんでした。

今回来日している『ラ・ラ・ランド シネマ・コンサート2025』と同じように『セッション』の方もコンサートという形で世界中を回らせてもらっていますが、こんなことになるなんて予想もつかなかったからね。

画像: デイミアン・チャゼルとは「とにかく色々な面において最高にマッチしているとしか言いようがない」

ーーDolby Atmos上映での映画音響の凄さについて教えてください。

Dolby Atmosというのは、とにかく没入感ですよね。特にラストのカーネギーホールでのフィナーレ、そしてドラムソロも、より引き込まれてドキドキしながら観ることができるのではないかなと思います。

ーーデイミアン・チャゼル監督とハーバード大学時代在学中に出会って以来、お二人の長年にわたるコラボレーションについてお話ください。デイミアンとの仕事はどのようなものですか?

僕とデイミアンの二人は、とにかくものすごくお互いがシンクロしている。僕が彼の映画の音楽を書き、彼が彼の作品で僕の音楽を使う、というのは当たり前のことなんです。二人とも、ものの見方や世界観というものが全く一緒なんです。

また、二人とも、偉大な作品、素晴らしい作品というものを追及したい、ということをテーマとしています。それは『セッション』のテーマでもあるから、パーソナルな作品でもある。言い換えれば、容赦なく偉大なものを追求したいという気持ちが二人ともに共通しているので、それが自分たちのなかで大きいこと、世界観が似ていること、とにかく色々な面において最高にマッチしているとしか言いようがないんです。

ーー『セッション』では「WHIPLASH」、「CARAVAN」が効果的に使われていますが、曲選びについて、監督とはどのような経緯で進められたのでしょうか?

ご存じのように、彼自身が大きなバンドのジャズのドラマーだったこと、そして先生も厳しかったというデイミアンの自伝的な物語が基になっているので、彼自身がプレイした楽曲がそのまま取り入れられている脚本でした。僕にとっても、これは良いんじゃないというような感じでした。

ーー『セッション』のオリジナルスコアの制作について、苦労された点や、楽曲の制作秘話があればお話しいただけますでしょうか?

19日間という撮影期間で日数が少なかったんですが、編集もかなり厳しくて、撮影が終わったのが10月で、11月の感謝祭にはサンダンス映画祭の締切があり、それに間に合わせなければいけなかったんです。その中でスコアも終わらなければいけないし、ミックス、編集もあったから、ずっと徹夜の日が続きました。編集室から出るともう早朝になっているという強烈な日々でした。

画像: ジャスティン・ハーウィッツ

ジャスティン・ハーウィッツ

ーースコアは脚本段階から作り、撮影期間内で作曲したわけではないですよね?

その後の作品では6カ月から9カ月をかけて編集していますが、『セッション』に関しては、「CARAVAN」やオリジナル楽曲を事前に演奏してレコーディングはしていて、それを使いながら演奏できるような状況を作っていた。ポスプロで一番大変だったのはアンダースコアの作業でした。

これは全く別の大変なプロセスで、僕自身にとっても大きなクリエイティブなチャレンジでした。というのは、まず音をどんなものにするか。例えばオーケストラ、電子音、シンセでは合わないわけですよね。

結局どうしたかというと、使われているビッグバンドの楽器の音を使うのですが、それを凄くゆっくりにしたり、すごく伸ばしてみたり、ちょっと歪めさせたりして使っています。まるで、演奏されている、あるいは自分がプレイしているジャズの楽曲が、凄く歪んだかたちでアンドリューの頭の中でクルクル回っているような、それがスリラーの要素もあるこの作品と非常にマッチしたのではないかと思っています。ちょっと怖い感じもあるからね。

ーーアメリカでは昨年10th Anniversaryでリバイバル公開されたと聞いていますが、観客の反応はどうでしたか?

2024年9月に行った上映だよね、それは観に行ったよ!大きなスクリーンで再び観ることができて、周りの人たちも最高!と言っていました。個人的なことですが、昔の映画で観ていない作品がたくさんあります。観られていない理由として、映画というものは、サウンドしかり、スクリーンしかり大きなもの、映画館で観るべきものとして作られているから、テレビで観ることができないタイプなんです。

大きなサウンドや大きなスクリーンがあること以上に大事なのは、全くの他人と一緒に映画館で映画を体験すること。それこそが、映画を観ることだと思うのです。これは、どんなに素晴らしいホームシアターがあっても出来ないことだと思います。それを、僕らが誇りに思う大好きな作品でできたことは最高だったし、観客の皆にも観て貰えたし、僕が観ることができていない多くの映画も映画館でたくさん上映して欲しいなと思います。

ーー日本にもいる沢山の『セッション』ファンと、今回のデジタルリマスターで初めて観る観客に、メッセージをお願いします。

『セッション』のファンにはデジタルリマスター版を楽しんでくれると嬉しいです。僕の大好きな作品だし、自分にとってこの物語は意味があって、刺激を受けて、芸術や音楽を作る上で思っていることが表現されています。『セッション』を初めて観る方にはたくさんある伏線とラストの仕掛けを楽しんで欲しいです。映画館で楽しい時間を過ごしてください。

(日本語で)『セッション』観て、そして聴いてね!

ジャスティン・ハーウィッツ プロフィール
JUSTIN HURWITZ 作曲家/1985年生まれ。
ハーバード大学で音楽を学び、デイミアン・チャゼル監督のミュージカル映画『Guy and Madeline on a Park Bench』(09)の歌と音楽を作曲する。その後も、チャゼル監督の『セッション』(14)をはじめ、アカデミー賞作曲賞と歌曲賞、ゴールデン・グローブ賞音楽賞を受賞した『ラ・ラ・ランド』(16)、ゴールデン・グローブ賞音楽賞を受賞した『ファースト・マン』(18)、アカデミー賞作曲賞にノミネートされ、ゴールデン・グローブ賞音楽賞を受賞した『バビロン』(22)の音楽も手掛ける。

『セッション』は、高校時代にバンドでジャズドラマーとして活躍するも、厳しい指導者に苦悩したチャゼル監督の体験から生まれた2014年の作品。若きドラマーと鬼教師の究極の師弟関係をマイルズ・テラーとJ・K・シモンズが熱演し、シモンズは第87回アカデミー賞にて助演男優賞を受賞。第87回アカデミー賞では5部門でノミネートされ、助演男優賞のほか、編集賞と録音賞の3部門で受賞した。日本では2015年に公開され、本年で10周年。4K & Dolby Atmosのデジタルリマスターで劇場に帰ってくる。

『セッション デジタルリマスター』
2025年4月4日(金) 全国公開
監督・脚本:デイミアン・チャゼル
出演:マイルズ・テラー、J・K・シモンズ
音楽:ジャスティン・ハーウィッツ
撮影:シャロン・メール 編集:トム・クロス 
録音:クレイグ・マン、ベン・ウィルキンス、トーマス・クルーレイ 
提供:カルチュア・エンタテインメント、ギャガ 
配給:ギャガ 
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