“ニュー・クィア・シネマ”のムーブメントを牽引したグレッグ・アラキが監督を務め、日本では長らく未公開となっていた『ミステリアス・スキン』が製作20年を経て劇場初公開。世界中で再評価が高まる今作の見どころをご紹介します。(文・児玉美月/デジタル編集・スクリーン編集部)
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『ミステリアス・スキン』には未成年への性加害の描写がございます。鑑賞されるお客様によっては、フラッシュバックを引き起こすことやショックを受けることが予想されます。本作のご鑑賞にあたりましては、予めご了承くださいますよう、お願い申し上げます。

イントロダクション

映画批評家B・ルビー・リッチは、ジェニー・リヴィングストン監督作『パリ、夜は眠らない。』(1990)やトッド・ヘインズ監督作『ポイズン』(1991)をはじめとして、1990年代初頭に国際映画祭で同時多発的に上映された一連の作品群とその実践に、「ニュー・クィア・シネマ」と名前を授けた。ロサンゼルスに生まれた日系3世であるグレッグ・アラキは、そのインディ映画界におけるムーブメント「ニュー・クィア・シネマ」を牽引した映画作家として知られ、近年ますます再評価の機運が高まっている。2024年には日本でも、「若者の終末」を描いたとされる『ドゥーム・ジェネレーション』(1995)と『ノーウェア』(1997)がリバイバル公開された。

こうした作品の背景には、1980年代に世界的に広がっていったエイズ禍と、それを巡る世間の同性愛嫌悪的な偏見と政府による無策に抵抗するためのエイズアクティビズムがあった。なかでも『リビング・エンド』(1992)はロードムービーの装いで、HIVに感染したゲイ男性たちが世界から放り投げられてしまったかのような残酷な構図を強調している。

性的虐待を取り上げた『ミステリアス・スキン』は、アラキにとって代表作の一つに数えられる。2005年の東京国際レズビアン&ゲイ映画祭(現・レインボーリール東京)で上映されただけだった本作は日本では長らく劇場未公開だったが、およそ20年もの時を経て、今回ようやく公開される運びとなった。

画像: イントロダクション

あらすじ

子供時代を1980年代のカンザス州の田舎町ハッチンソンで過ごしたニールとブライアン。ニールは、留守がちな母親のいない間に自宅に招き入れてくれた野球チームのコーチから性的虐待を受けてしまう。一方、ブライアンも同様に性的虐待を受けていたものの、そのときの記憶を消失し、宇宙人に連れ去られてしまったのだと自ら思い込ませていた。そして成長し、別々に生きていた彼らの人生が運命の手綱に引き寄せられ、ついに交じり合う……。

登場人物

画像: ブライアン・ラッキー(ブラディ・コーべット)

ブライアン・ラッキー(ブラディ・コーべット)

ブライアン・ラッキー(ブラディ・コーべット)
宇宙人に連れ去られたと思い込んでいるが、失ってしまった幼い頃の記憶を取り戻す旅に出る。

画像: (左から)ニール、エリック、ウェンディ (ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ジェフリー・リコン、ミシェル・トラクテンバーグ)

(左から)ニール、エリック、ウェンディ
(ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ジェフリー・リコン、ミシェル・トラクテンバーグ)

ニール・マコーミック(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)
数多くの男たちと関係を持ち、セックスワーカーとしてお金を稼ぎながら日々を送っている。

エリック(ジェフリー・リコン)
ニールの友人で、彼に密かに思いを寄せている。ある日偶然ニールの「秘密」を知ってしまう。

ウェンディ(ミシェル・トラクテンバーグ)
ニールより一つ年上で、彼が「ソウルメイト」だと呼ぶ相手。田舎町に閉塞感を感じている。

画像: コーチ(ビル・セイジ)

コーチ(ビル・セイジ)

コーチ(ビル・セイジ)
ニールとブライアンが所属していた野球チームのコーチで、児童虐待の常習犯でもある。

ABOUT )原作「謎めいた肌」(スコット・ハイム著)

1995年に発売された小説「謎めいた肌」は、エイリアン・アブダクション(宇宙人による誘拐)現象と性的虐待の記憶における類似性からアイディアを得て、スコット・ハイムが自身の体験をもとに25歳で書き上げた。これが初めての原作ありの映画化となったアラキは、この小説が「郊外で育った人間が懐かしく覚えている子供時代のイメージ」に彩られていると語る。

「謎めいた肌」 
著者:スコット・ハイム / 訳者:仔犬養ジン
出版社:ハーパーコリンズ・ジャパン

『ミステリアス・スキン』
2025年4月25日(金)公開
アメリカ/2004年/1時間45分/配給:SUNDAE
監督・脚本:グレッグ・アラキ
出演:ブラディ・コーベット、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ミシェル・トラクテンバーグ、ジェフリー・リコン、ビル・セイジ、メアリー・リン・ライスカブ、エリザベス・シュー

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