カバー画像:©2024 The Apartment S.r.l., FremantleMedia North America, Inc., Frenesy Film Company S.r.l.
メイキング
1 )「クィア」の映画化を熱望していたルカ・グァダニーノ監督
実は、「クィア」の映画化企画はこれまでにも存在していた。2011年には『レザボア・ドッグス』『ファーゴ』の俳優スティーヴ・ブシェミが監督、『メッセンジャー』のオーレン・ムーバーマンが脚本、ガイ・ピアース、ベン・フォスター共演でプロジェクトが始動。しかしうまく着地せず、巡り巡ってルカ・グァダニーノ監督が約30年越しに自身のライフワークを叶えることとなる。自ら映画化権を獲りに行ったグァダニーノ監督をはじめ、10年間企画に取り組んだというムーバーマンほか、時を超えて幾多の映画人を魅了し続けている小説なのだ。

ルカ・グァダニーノ監督
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2 )ダニエル・クレイグとドリュー・スターキーの完璧なケミストリー
リーと原作者バロウズに多くの共通点を見出したクレイグは、役づくりにおいてバロウズの内面を知るべく、多くの資料を参照して研究に没頭。過去のインタビュー映像や講義風景、テレビ番組「サタデー・ナイト・ライブ」の記録映像をインプットして仕草や話し方を染み込ませたという。その相手役を務めたスターキーは、なんと300人の候補から選出された逸材。2人は振付師やインティマシー・コーディネーターの力を借りて数カ月にわたる練習に励み、物語の終盤に用意された幻想的でエモーショナルなラブシーンを創出させた。

ダニエル・クレイグとドリュー・スターキー
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3 )こだわりあふれる挿入歌にも注目!
『ソーシャル・ネットワーク』や『ドラゴン・タトゥーの女』等デヴィッド・フィンチャー監督作で知られる作曲家コンビ、トレント・レズナー&アッティカス・ロスがグァダニーノ監督と3作目のタッグ。エンドクレジット含む多数の楽曲を書き下ろした。バロウズを敬愛するニルヴァーナやシネイド・オコナー、プリンス、ニュー・オーダーの楽曲もふんだんに使用され、情熱と切なさが混在した世界観に誘う。ニュー・オーダーの「Leave Me Alone」、ニルヴァーナの「Come as You Are」といった名曲と映画のケミストリーを堪能いただきたい。
4 )ジョナサン・アンダーソンにより1950年代のスタイルを再現!
JW ANDERSONやLOEWEといったブランドを手掛けてきたファッションデザイナーで、『チャレンジャーズ』をきっかけに映画衣装の世界に足を踏み入れたジョナサン・アンダーソンが参加。50年代の衣装を再現しつつ、当時のバロウズの着こなしを「乱れのある洒落た男」と解釈してリーのスタイルに反映。上着の一番上のボタンを外し、下のボタンはかけたままにしたという。対照的にユージーンには「バリアになるような」少々堅苦しいものをチョイス。ジャングルのシーンでは実際に衣装を1着しか用意せず、リアルな汚れの表現にこだわった。

ジョナサン・アンダーソン
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ヒストリー
絶望や贖罪を糧に生み出されたウィリアム・S・バロウズ著「クィア」

1984年ごろのウィリアム・S・バロウズ
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1914年にアメリカに生を受け、1997年に没した米文学界の異端児ウィリアム・S・バロウズ。「ジャンキー」や「裸のランチ」、あの伝説的映画のタイトルにインスピレーションを与えた「ブレードランナー」などで知られる彼が「クィア」の執筆に挑んだのは、活動初期の1951年から53年のこと。彼自身が40年代にメキシコシティで暮らしていた時期を虚実織り交ぜながら描いているが、当時のバロウズはヘロイン中毒であり、妻がいる身でありながら軍人と恋仲になり、さらには誤って妻を銃殺してしまうなどの事件を起こし、荒んだ生活を送っていたという。妻の死、恋人との破局といった絶望や贖罪を糧に生み出された「クィア」であったが、同性愛に関する内容やセンセーショナルなテーマもあり、当時のアメリカでは日の目を見る可能性が低いのでは、とみる向きもあった。
そうして未完のまま時は過ぎ、30年以上経った1985年にようやく出版。そして運命のいたずらか、10代の多感な時期を過ごしていたルカ・グァダニーノ少年はこの小説を手に取り、瞬く間に虜になった。主人公リーが抱く「可能な限り深い部分で理解し合える人物と出会いたいという強い思い」に共鳴したグァダニーノは、21歳の頃から具体的に映画化に向けて動き始め、自身で脚本を執筆する傍ら映画化権の取得に奔走。だがなかなか実現せず、『チャレンジャーズ』の制作中だった2022年に遂にその切符を勝ち取った。
グァダニーノは同作の脚本を手掛けたジャスティン・クリツケスを再び招へいし、「未完の小説を完成させてほしい」と依頼。原作者バロウズ自身の足跡や日記をリサーチして採り入れつつ、映画ならではの正解を導き出そうと腐心した(「僕は、クィアではない。心が体から分離しているんだ」というセリフは、バロウズの日記から引用したもの)。2023年の早期に脚本執筆を終えると、20年来タッグを熱望していたというダニエル・クレイグに送付。脚本を読んだ彼はすぐさま出演を快諾し、6カ月後には撮影が始動した。
「クィア」ウィリアム・S・バロウズ著
山形浩生/柳下毅一郎訳
発行元:河出書房新社
あわせてチェック!
JW ANDERSON×『クィア/QUEER』のカプセルコレクションが登場!
クィア スウェットシャツ フォト ¥49,500
クィア テキスト フーディ ¥53,900
A24作品といえばハイセンスな映画グッズもファンに嬉しいところ。今回は特別に、映画を超えてJW ANDERSONとのコラボが実現。カメラやタバコといった映画内に登場する所持品が大きくプリントされたビビッドなカラーのスウェットやタイトルが大きくあしらわれたフーディ、シンプルな中にも遊び心あふれるTシャツにキャップ、トートバッグといった多種多様なアイテムの一部が5月9日(金)よりJW ANDERSON 渋谷店、JW ANDERSON 伊勢丹新宿メンズ店にて再販売される。お買い上げごとに、『クィア/QUEER』のムビチケを先着順でプレゼント!
【取扱店舗】
★JW ANDERSON 渋谷店 東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO 3階
TEL:03-6277-5277(直通) 営: 11:00-21:00 無休
★JW ANDERSON 伊勢丹新宿メンズ店
東京都新宿区新宿3-14-1 伊勢丹新宿店 メンズ館 6階 メンズクリエーターズ
TEL:03-3352-1111(大代表) 営:10:00〜20:00 無休
『クィア/QUEER』
5月9日(金)公開
イタリア=アメリカ/2024年/2時間17分/配給:ギャガ
監督:ルカ・グァダニーノ
出演:ダニエル・クレイグ、ドリュー・スターキー、ジェイソン・シュワルツマン、レスリー・マンヴィル
©2024 The Apartment S.r.l., FremantleMedia North America, Inc., Frenesy Film Company S.r.l.