アルツハイマー型認知症を発症した父が助手席に座り、朗々と歌う姿を息子はスマートフォンで撮影し、その動画をインターネットにアップすると瞬く間に拡散され、父にCDデビューの話が舞い込んでくる。『父と僕の終わらない歌』はイギリスでの実話を日本に置き換え、父に寺尾聰、息子に松坂桃李を迎えて、映画化された。自身が主宰するライターズルームで開発した脚本でメガホンをとった小泉徳宏監督に新たな試みでの脚本開発、キャストへの演出などについて語ってもらった。(取材・文/ほりきみき)

謙虚で、誰にでも優しい松坂桃李


──息子・間宮雄太を松坂桃李さんが演じています。キャスティングの決め手を教えてください。

原案においては、お国柄もあってか父と息子が互いに思い合っていることを自然と言葉に出し合いますが、それをそのまま日本の親子関係に置き換えるとかなり違和感が出ます。日本の親子、特に父と息子においては一定の距離感があった方が自然だろうと。派手好きのお父さんを恥ずかしく思うこともあるけれど、根っこの部分では大切に思っている。言葉にしなくてもそれが伝わるような、繊細なお芝居ができる俳優は誰か。普段からとても謙虚で、誰にでも優しい桃李さんであれば、口では文句を言いながらも実はお父さんを想っている、そういうお芝居ができると思いました。


──松坂さんのことをそう評する方は多いですね。

これまでに主演作品が何本もあり、人気も実力も十分すぎるほどある方なのに、そこに胡坐をかくことがなく、現場に軽やかに現れて、スタッフやキャストの皆さんとにこやかにコミュニケーションをとって、本番になるとストイックに仕事をして、また軽やかに帰っていく。正直、想像以上に自然体な方で僕も驚きました。奇跡の俳優ですね。実力も人柄もここまで素晴らしければ、監督たちから引く手あまたなのも当然だと思いました。

画像1: 謙虚で、誰にでも優しい松坂桃李


──アルツハイマー型認知症を発症する父・間宮哲太を演じた寺尾聰さんはいかがですか。

俳優としてのキャリアも歌手としてのキャリアも圧倒的。寺尾さんほど俳優と歌手を両立されている方は他にいません。唯一無二の方です。「寺尾さんしかいない」と思ってオファーしました。もし受けていただけなかったら、企画が実現したかどうか怪しいです。


──企画の段階で、洋楽にするか日本の楽曲にするか、迷ったと聞きました。寺尾さんのキャスティングが決まったから洋楽になったのでしょうか。

それはありますね。映画をご覧になる日本のお客さんにとっては日本の楽曲の方が聞き馴染みがいいでしょう。けれども、原案の舞台がイギリスで、実際の親子が歌っていたのは洋楽ですから、それもなかなか諦めきれない。しかも、父親役をどなたが演じるかによっても、この判断が大きく左右される。洋楽にするか、日本の楽曲にするか、ギリギリまで議論になっていました。


──ではキャスティングと脚本は並行して進んでいったのですね。

その通りです。寺尾さんが決まって、音楽も洋楽に決まりました。寺尾さんご自身も洋楽じゃなきゃ自分には難しいだろうとおっしゃってくださったので、僕らも覚悟が決まった感じです。

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