トム・クルーズが約30年にわたって挑み続けてきた“不可能”な任務が、ついに“ファイナル”に突入。シリーズ最新作『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』で描かれるのは、危険なAI“エンティティ”との世界の命運を左右する最終決戦、そしてトム自身が体を張って作り上げてきたアクション映画の進化の到達点。シリーズの集大成をレビューします。(デジタル編集:スクリーン編集部)
※物語の展開に触れている箇所があります。鑑賞前の方はご注意ください。
カバー画像:写真:Paramount Pictures/JLPPA/Best Image/アフロ

『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』
トム・クルーズが自らと映画の限界に挑み続けた30年の到達点

画像: 『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』 トム・クルーズが自らと映画の限界に挑み続けた30年の到達点

トム・クルーズの代名詞にして、彼のキャリアそのものを象徴する「ミッション:インポッシブル」シリーズ。その最新作『ファイナル・レコニング』は、まさしく約30年のシリーズの歴史が凝縮された“決定版”とも呼ぶべき超大作に仕上がった。

シリーズ八作目であり、前作の直接的な続編となる本作では、『デッドレコニング』で張り巡らされた伏線や謎が次々に回収されていく。さらに、シリーズ1作目の宙吊り侵入や、3作目で描かれた「ラビットフット」といった過去の象徴的な要素までもが、主人公イーサン・ハント(トム・クルーズ)の選択の集積として結実していく構成は圧巻。予告編でも印象的に使われている「人生はすべての選択の結果」というセリフは、そのまま本作のテーマを言い表しており、物語に強い“集大成”の手応えをもたらしている。

物語は、イーサンが情報を支配する存在である危険なAI“エンティティ”を制御できる二つの鍵を手に入れた前作の2か月後から始まる。イーサン率いるIMFチームは、この鍵の使い方を突き止めるべく、宿敵ガブリエル(イーサイ・モラレス)の行方を追い、エンティティの打倒という壮大なミッションに挑む。

今回の最大の敵“エンティティ”は単なるシステムではなく、世界の秩序を揺るがすほどの力を持ち、さらには信奉者さえ生み出す“現代の神”のような存在として描かれる。その圧倒的な支配力と非情さに、「仲間や人命を重んじるヒーローとしての信念」を持つイーサンがどう対峙していくのか。現代社会の問題ともリンクしながら、シリーズの根幹にある「信頼」「選択」といったテーマが掘り下げられていく。

その重厚なドラマを支えるのがトム・クルーズの命がけともいえる超人的アクション。シリーズを追うごとに過激さを増してきたスタントは、今回さらに凄みを増している。深海に沈む潜水艦での孤独で危険な水中任務、二体のプロペラ機の翼の上で繰り広げられる空中アクション。そのスピード感や重力のリアルさ、トムの肉体や表情に表れる生の圧力は、CGでは決して到達できない本物の説得力を持つ。さらに、監督が初めて見たとき恐怖のあまり「吐き気を催した」という驚異のスタントがサプライズとして観客を待ち受けている。

シリーズの“集大成”を感じさせる縦のつながりは、キャストたちの顔ぶれからも感じ取れる。ベンジーやルーサー、グレースといったIMFの仲間たちはもちろん、第1作のキーパーソンだったキトリッジやダンロー、そして元CIA長官のエリカ・スローンなどが再登場。彼らがそれぞれに物語の重要なカギを握り、シリーズの過去のエピソードが“布石”として機能していく。

過去作とのつながりを巧みに織り込み、一つの線として結んでいく本作の構成は、シリーズを束ねるような充実感とカタルシスをもたらしてくれる。これまでの積み重ねなくしては成立しなかったこの映画は、すべての観客に捧げられる極上のプレゼントであり、トム・クルーズが映画と自らの限界に挑み続けた30年の到達点だ。

STORY

人類を脅かすAI「エンティティ」に立ち向かったイーサン・ハント(トム・クルーズ)は、激闘の末にその制御の鍵となる“2つの鍵”を入手。そのミッションから2か月後、イーサンは相棒ベンジー(サイモン・ペッグ)とともに盟友ルーサー(ヴィング・レイムス)のもとを訪ねる。ルーサーは潜伏中に、エンティティに対抗できるデジタルの“毒薬”という突破口を見出していた。イーサンは、鍵の秘密を知る宿敵ガブリエル(イーサイ・モラレス)の行方を追い、殺し屋パリス(ポム・クレメンティエフ)や諜報員ドガ(グレッグ・ターザン・デイヴィス)とも共闘することに。だがIMFの新たな仲間グレース(ヘイリー・アトウェル)とともに敵に囚われてしまう。ガブリエルがグレースの身柄と引き換えに要求したのは、エンティティを止める手段となる、潜水艦“セヴァストポリ”とともに海底に眠る“ポドコヴァ”。命がけの作戦の末、エンティティの恐るべき計画を知ったイーサンは、新たな“不可能ミッション”に挑むことになる。

『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』
公開中/配給:東和ピクチャーズ
監督:クリストファー・マッカリー
出演:トム・クルーズ、ヘイリー・アトウェル、ヴィング・レイムス、サイモン・ペッグ、イーサイ・モラレス、ポム・クレメンティエフ、ヘンリー・ツェニー、ホルト・マッキャラニー、ジャネット・マクティア、ニック・オファーマン、ハンナ・ワディンガム、アンジェラ・バセット、シェー・ウィガム、グレッグ・ターザン・デイヴィス、チャールズ・パーネル

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