イントロダクション

人間の脳を破壊し、凶暴化させるウイルスが蔓延したロンドンを舞台に、感染を逃れたわずかな者たちが感染者と死闘を展開するサバイバル・スリラー『28日後…』(02)、そしてパンデミック後の世界を描いた『28週後…』(07)に続くシリーズ最新作。
第1作のダニー・ボイル監督(『スラムドッグ$ミリオネア』)と脚本のアレックス・ガーランド(『シビル・ウォーアメリカ最後の日』)コンビが再度顔を合わせた本作は、2人がプロデュースも兼ね、恐怖の感染拡大から10228日後、ウイルスが蔓延し人間が人間でなくなる世界での新たな物語の始まりを徹底したリアリティと臨場感を追求して描く。ここで描かれるのは死者が蘇って生者を襲う超自然的なゾンビではなく、ウイルスに感染して凶暴化した「生きる人間」によって引き起こされる現実に起きうるパンデミックの恐怖だ。
出演は『クレイヴン・ザ・ハンター』のアーロン・テイラー=ジョンソン、『教皇選挙』のレイフ・ファインズ、『最後の決闘裁判』のジョディ・カマー、『フェラーリ』のジャック・オコンネルといった実力派キャストが揃い、新星アルフィー・ウィリアムズらも共演。第1作で主演を務めたキリアン・マーフィー(『オッペンハイマー』)がエグゼクティブ・プロデューサーとなって参加しているのも話題。
人間を凶暴化させるウイルス蔓延後の世界に残ったのは…

ロンドンで起きた人間を一瞬で凶暴化させるウイルスの流出により多くの死者が出る緊急事態から10228日後。感染を逃れたわずかな者たちはウイルスが蔓延した本土から離れ、孤島のホーリーアイランドに身を潜めて共同生活を送っていた。対岸にいる危険な感染者から身を守るため、この島では見張り台を建て、武器を備え、コミュニティの厳しいルールに全員が従うことで“安全な暮らし”を維持しているが燃料は不足していた。しかしある必須の任務を実行するため、そこで暮らす家族が本土に渡ることになる。ジェイミー(テイラー=ジョンソン)とスパイク(ウィリアムズ)の親子だ。
住人たちが期待と不安で見送る中、2人は頑丈な門を出て潮の満ち引きで現われる本土と島をつなぐ一本の土手道を渡っていく。一度島を出れば助は来ない。世界から見放されたイギリス本土は緑が広がる美しい土地になっていたが、感染者がどこに潜んでいるかわからない。時に変わり果てた姿の感染者が2人を襲い、親子は弓を構えて森を駆け抜ける。そんな世界で親子は感染を逃れて生きていたケルソン博士(ファインズ)と出会う。ケルソンは「感染者は進化している。もう別物だ」と2人に告げるが、それが意味するものとは?

恐るべき感染者の群れと戦う人間たち
左からジェイミー(アーロン・テイラー=ジョンソン)とスパイク(アルフィー・ウィリアムズ)
ジェイミー(アーロン・テイラー=ジョンソン)
ウイルスの感染を逃れた者たちが暮らす隔離された孤島から、ある任務を実行するために危険な感染者が残る本土に渡っていくが、そこで見たものは…。
スパイク(アルフィー・ウィリアムズ)
ジェイミーの息子で、父親と一緒に本土に向かう。「その子にはまだ早い」と周囲から心配されながらも父親は「この子なら大丈夫」と信頼を置いている。
ケルソン博士(レイフ・ファインズ)
ケルソン博士(レイフ・ファインズ)
感染者しかいないと思われていた本土で暮らしていた驚くべき非感染者。ジェイミーたちと出会い、感染者が劇的に進化したことを告げる。
アイラ(ジョディ・カマー)
アイラ(ジョディ・カマー)
まだ生まれたての赤ん坊を抱えるジェイミーの妻。スパイクと共に感染者の集団に襲われ逃げ回る事態に追い込まれる?
人類の危機を描いた前2作をプレイバック
これまでにないパンデミックの恐怖を描くサバイバル・スリラー『28年後…』だが、まずこの新たな始まりの前章となる2作を再度チェックしておこう。
すべての幕開けは2002年製作の『28日後…』からだった。主人公は病院で昏睡状態から目覚めた時には、ロンドンがゴーストタウンとなり愕然とする青年ジム。彼が事故に遭って病院に運ばれたのは少なくとも28日前。その後、感染するといきなり凶暴になり周囲の人々に襲いかかるウイルスによるパンデミックが発生していたのだ。彼は感染を免れたセリーナたちに助けられ、安全な場所を探すが、途中で感染者に襲われ仲間を失うことも。そして市民を守るはずの軍隊もあてにはならなかった…。ダニー・ボイル監督と脚本のアレックス・ガーランドが初コンビを組んだ作品で、ジム役にキリアン・マーフィーが扮し、セリーナはナオミ・ハリスが演じた。
世界的に成功した本作に続き2007年に製作されたのが第2弾『28週後…』でボイルは製作総指揮に回り、ファン・カルロス・フレスナディージョが監督になった。ウイルス感染発生から感染拡大、英国本土の隔離措置、本土から集団脱出、感染者の全消滅、復興宣言を経て、安全宣言が出された28週後のロンドン。主人公のドン(ロバート・カーライル)はウイルス拡大時、感染した妻アリスを見捨てて逃げたことを後悔していたが、なんと妻は28週後も生きていた。彼女は無症候性キャリアと判断されたが、アリスにキスをしたドンはそれが元で感染し、アリスを殺害してしまう。さらにウイルスを撒き散らしながら暴走するドン。ラストでウイルスの脅威がイギリス本土を越えるような描写があったが…?
『28日後...』デジタル配信中 株式会社ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
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監督&脚本家からの謎に包まれた『28年後…』に関する重要コメント
ダニー・ボイル(監督)
代表作:『トレインスポッティング』『スラムドッグ$ミリオネア』
本作では終末後の世界がどのように再建されるのかを想像しようと思いました。
映画の始まりとなるホーリーアイランドは一本の土手道で守られていますが、電気も燃料の供給もないので機械類も使用できなくなることもあります。私たちの生活を取り巻くあらゆるものが、突然役に立たなくなってしまいます。すると感染しなかった者たちが離れたイギリス本土は、希望と恐怖を併せ持つ場所に姿を変えるのです。しかしそこにいる感染者たちは並外れた恐るべき存在です。
映画を作る時は、人々を恐怖に陥らせるようなイメージを求めます。映画には限界をどこまでも押し広げる責任を伴う、本能的な要素があります。息詰まるような緊迫感が欲しいのです。続編という感じではなく、オリジナル作品のような感覚が欲しいのです。

演出中のボイル監督(左)
アレックス・ガーランド(脚本)
代表作:『エクス・マキナ』『シビル・ウォー アメリカ最後の日』
最初は「28年後とはどういう意味なのか、もし感染がまだイギリスで続いていたら、感染はどのようなものになっているか」といった想像について打ち合わせで話していました。世界の人々はそれに対してどう反応するでしょう? イギリスは隔離され、事実上、見放されたでしょうか? 何らかの理由で国が崩壊すると、しばしばその国は見捨てられます。こうした事態の展開では冷酷で、現実的で、弱肉強食の厳しい環境になってます。
彼らは死んで甦ったゾンビではありません。レイジウイルスに感染し、病気になった生きた人間なんです。その事実がいくつかのことを決定づけます。彼らは水を飲まなければならないし、食べ物も必要です。もし彼らがこのウイルスに感染して28年間生き延びたら、どんな姿になっているでしょう? 野生王国のように自然界に帰るでしょうか?
『28年後…』
2025年6月20日(金)公開
イギリス、アメリカ/2025年/2時間6分/配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
監督:ダニー・ボイル
出演:アーロン・テイラー=ジョンソン、レイフ・ファインズ、ジョディ・カマー、ジャック・オコンネル、アルフィー・ウィリアムズ