(文・SYO/デジタル編集・スクリーン編集部)
© 2024 STUDIOCANAL SAS – CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION

見どころ

時間軸がシャッフルして描かれる斬新な脚本

本作では「アルムートとトビアスが出会い、共に過ごした4年」「アルムートの余命1年」「エラを出産する1日」という3つの異なる時間軸が、異なるテンポ&過去と現在が入り乱れる形で進行していく。人生の中で「ある瞬間は時間が速く過ぎ去り、重大な出来事においてはゆっくり進むように感じられる」という当事者感覚を観客に追体験させる効果を生み出した。

ワンテイクで実際に髪を刈ったフローレンス・ピュー!

2人の生活にリアリティをもたらすべくヌードシーンにも挑戦するなど、フローレンスの作品にかける並々ならぬ覚悟が随所に見られる本作。白眉といえるのはがん闘病に伴う断髪式のシーン。つらい決断に意気消沈せず、家族と共に笑い合いながら臨む絆のドラマに心震えるが、彼女は自身の髪を本当に刈りたいと提案。その献身性が、画面に特別な輝きをもたらした。

今を最大限に生きること、愛の力を描いたジョン・クローリー監督

「現代においてラブストーリーはかなり数が減ってきており、あったとしてもラブコメ要素が強い」と憂慮するクローリー監督。人生における愛がもたらす影響、いまを全身全霊で生きる美しさを惜しみなく描き出すため、「多くの人々が直面するであろう問題を観た人がそれぞれの視点で考えられるように、一つの正解を提示しない」バランス感覚にこだわったという。

手持ちカメラでキャラクターの心の機微を捉えた撮影監督

現代のロンドンのありのままを映し出した本作。『ウェイストランド』(12)や『ストレンジ・アフェア』(19)の撮影を担当したスチュアート・ベントリーは、「観客に真実味を感じてもらえるように」と手持ちカメラを中心に据えた撮影プランを採択。徹底的にアルムートとトビアスの感情に寄り添うあまり、感極まってカメラの元を離れないといけない瞬間もあったとか。

ジョン・クローリー監督インタビュー

画像: ジョン・クローリー監督 Photo by Getty Imeges

ジョン・クローリー監督
Photo by Getty Imeges

ーー主演2人の相性はどうでしたか?

「こういうことは、実際にやってみるまで分からないものです。彼らは、アカデミー賞で一緒にプレゼンターをした事がありますが、その時もピッタリと息が合っていました。その時に誰もがこのふたりがいいペアになると思ったようですね。ただ、撮影が始まる前の週に、テーブルを囲んで読み合わせをした時に、場面のリハーサルをするふたりを見て、僕は期待感が高まるのを感じました。ふたりは、まだ自分の役の感覚を掴もうとしている感じで、完全に本気を出している感じではなかったのですが、時折、実際にセットに立った瞬間を楽しみにできるような場面が垣間見えました。そして実際に、セットでのふたりは最高の演技を見せてくれましたよ」

ーー2人が演じたそれぞれのキャラクターは、現実の社会を反映しているのでしょうか?

「たとえば、社会の中で積極的に活動し、キャリアを大切にしている人というのは沢山いますよね。彼らは未来に向けて計画を立て、さまざまなことを成し遂げようとします。そんな人にとって、突然“時間が限られる”と、それまでの人生では見えなかった感情が引き出されることになるでしょう。この物語の一部では、『限られた時間の中で、どうやって生きるか』という現実の中で、ふたりがどのようにその混乱を乗り越えていくのかが描かれています。そして、とても重要な問いが投げかけられます。『残された時間をどう使うのか?』『治療に専念するのか、それとも世界に出て過ごすのか?』という選択です。どちらが正しい、という答えはありません。ただ、その状況において、それぞれの人がどのように感情的に向き合うのかが大切なんです」

ーーラブシーンでのインティマシーコーディネーターとの仕事はどうでしたか?

「最近は必要ないと俳優たちが言わない限り、インティマシーコーディネーターをつけるようにしています。また、以前一緒に仕事をした事がある助産師もついてくれて、出産シーンの監修をしてくれました。彼らのおかげで、全員が十分なケアを受けることができ、説得力のある場面を作ることができたと思います」

『We Live in Time この時を生きて』
2025年6月6日(金)公開
イギリス=フランス/2024年/1時間48分/配給:キノフィルムズ
監督:ジョン・クローリー
出演:フローレンス・ピュー、アンドリュー・ガーフィールド

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