(文/デジタル編集・スクリーン編集部)
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フローレンス・ピュー

画像: Photo by Karwai Tang/WireImage

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“皆さんもこの映画を観て、愛を感じ、愛を与えて生きたいと思ってもらえたら嬉しいです”

──最初に本作の脚本を読んだ印象を教えてください。

「私は、『ノッティングヒルの恋人』や『フォー・ウェディング』、また『アバウト・タイム 〜愛おしい時間について』などの映画を観て育ったので、恵まれていたと思います。これらの映画はイギリスらしい、とても美しく身近に感じられるもので、観る人は誰でも作品の世界を体験したい、あるいはいつか自分もそうなりたいと思うようなストーリーラインがあります。本作の脚本は、これらの映画と似たようなかたちで愛を表現しているので、読んでいてとても懐かしい気持ちになりました。舞台は今の時代ですし、おまけに自分が常に話す訛りで演技をすることができました。私の演じる役柄は、いろんな意味で私自身に似ています。彼女は、成功を目指すロンドンっ子で、時に自分自身の考えや願望にこだわりすぎてしまいます。すぐに入り込める役を演じるのは、楽しかったですね」

──アンドリュー・ガーフィールドとの共演はいかがでしたか?

「現場でアンドリューの演技を見て、他の映画で見た彼の演技について納得がいきました。彼はとてもプロフェッショナルなんです。こだわりを持って仕事に取り組み、瞬間瞬間をキメていく人なんです。だからアンドリューとの共演によって彼から学ぶことができたのは、とても素敵な経験でした。作品に対する自分の取り組み方についても、何をどう変えていったら良いのかも学びました。もっと一生懸命頑張って上手くなって、立派な役者になり、自分の仕事に対して責任を持ちたいと思いました。そういう風に、他の人から刺激を受けるって素晴らしいことですよね」

──アルムートの病気が物語の一部を担っていますが、準備したことはありますか?

「この物語において、アルムートの病気は大きな要素ではありますが、彼女を演じる際に、その点をあまり前面に出したくないと思いました。彼女自身も、病気が自分の人生の“見出し”にはなりたくないと考える人物で、彼女は周囲の人々に病気を悟られたくない。そのため、病気はたとえ物語の大きな転換点であったとしても、私の演技の転換点にはしたくありませんでした。準備の面では、化学療法や病気による吐き気、痛み、体のこわばりなどについて詳しく調べ、演技に臨みました」

──劇中では頭を剃るシーンが出てきます。このシーンはいかがでしたか?

「実は出演が決まってからジョンから電話をもらい、頭を剃るシーンについて話さないかと提案されました。私がどういうことか尋ねると、ジョンはこう言いました『僕は、軽く考えたくないんだよ。とても大きなことだから。もし君がやりたくないならば、ボールドキャップでやることも可能だよ』と。私は『ジョン、この映画に出演する限りは、絶対にちゃんと頭を剃ります』と答えました。このような役どころの作品に出演する時は、頭を剃るような行為も演技の範囲だと思います。だから、アルムートのように重病にかかっている人の役を演じるなら、説得力のある演技をしなければならない。死生観が一つのテーマでもある作品において、実際に頭を剃ってシーンを撮ることはとても意義深いと思います。そして、私がこの家族の一員で娘がいたら、髪をとっておきたいと思うはずです。そこで私が提案して、エラ(娘)がママの髪を集めて小さな箱に入れることになりました。様々な工夫ができたと思うけれど、このアイデアが物語に息を吹き込んでくれました。私が実際に頭を剃らなかったら、エラが髪を集めるという場面も加えられなかったと思います」

──アルムートは最初、家族を持つことに否定的です。彼女は家族を持つことをどう受け入れていったと思いますか?

「多くの女性が関心を持っている話題だと思います。特定の年齢までにキャリアを持ちたいとか、何かを達成したいとか、子供を持ちたいとか思っている女性たちは、皆考えることだと思います。映画の中の彼女は、仕事と家庭の両立に特に悩んではいないけれども、ただ両方のために意識的に時間を作る必要がありました。キャリアを確立した後に子供を産んだ女性たちも、いつも両立に悩むと思います。『良い母親でありながら、職場では強いリーダーにならなければ』と考えるでしょう。アルムートも人生でどういう道に進むべきか考え、事業を経営し、職場で他の人たちを指導し、どうやって自分の目標を達成するか、またどうやったら良い母親になれるかを考えます。劇中では、その旅路が描き出されているんです」

──観客にこの映画から何を受け取って欲しいと願っていますか?

「この映画を観て、生きる意欲を感じてほしいですね。そして、今与えられている時間を最大限に活用したいと思ってほしい。試写会に来てくれた友人は号泣してしまって、映画が終わっても私の方を見ることができませんでした。そしてやっと私の方を向くと、ただ私の手をぎゅっと握りました。私が『大丈夫?』と尋ねると、『この映画を観たら、生きる意欲が湧いてきた。恋をしたくなったし、これまで自分がやるべきだと考えていたことを、全てやりたくなった。とにかく生きたいと思った』という答えが返ってきました。だから、皆さんもこの映画を観て、愛を感じ、愛を与えて生きたいと思ってもらえたら嬉しいです。愛は私たち全員に必要なことですからね」

Florence Pugh

1996年1月3日、イングランド・オックスフォード州生まれ。『フォーリング 少女たちのめざめ』(14)で長編映画デビュー後、『レディ・マクベス』(16)で映画初主演を務め、2019年『ミッドサマー』で世界的にブレイクし、同年公開の『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』でアカデミー賞助演女優賞にノミネート。21年にはマーベル・シネマティック・ユニバースの『ブラック・ウィドウ』で、スカーレット・ヨハンソン扮するナターシャ/ブラック・ウィドウの妹エレーナ役に抜擢。現在は同役を演じた『サンダーボルツ*』が絶賛公開中。

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