アニメーション映画『花緑青が明ける日に』で声優に初挑戦した萩原利久。声のみを使った芝居は「不思議な経験」としながらも、機会があればまた挑戦したいとのこと。萩原が惹かれた声の表現の面白さや作品で描かれる「大切なものの終わりとの向き合い方」や自身に多大な影響を与えている存在・言葉について語ってもらった。(文・タナカシノブ/写真・稲澤朝博/ヘアメイク・カスヤユウスケ(ADDICT_CASE)/スタイリスト・TOKITA/デジタル編集・スクリーン編集部)
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声で出演することに手応えを感じるフェーズには至っていないけれど、すごく面白かったので今後も機会があればいろいろとやってみたいです。

画像: 声で出演することに手応えを感じるフェーズには至っていないけれど、すごく面白かったので今後も機会があればいろいろとやってみたいです。

萩原利久 プロフィール

1998年2月28日生まれ。埼玉県出身。2008年にデビュー。映画・ドラマを中心に多くの話題作に出演。主な出演作はドラマ「美しい彼」、「めぐる未来」、「リラの花咲くけものみち」、映画『劇場版 美しい彼〜eternal〜』(23)、『ミステリと言う勿れ』(23)、『朽ちないサクラ』(24)など。2025年は映画『世界征服やめた』、『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』などに出演。

──声のお芝居を経験した感想を教えてください。

「機会があればいずれやってみたいと思っていました。僕のバラエティ番組『萩原利久のwkwkはぎわランド』で、声優の勉強をする企画をやり『ONE PIECE』でニコロビン役の山口由里子さんに教えていただくというとても贅沢な経験をさせていただきました。その直後にこの作品のお話をいただいて。偶然だったのですが、決まっていたのかってくらい綺麗な流れでした」

──実際の現場で役立ったことはありましたか?

「映像に合わせてセリフを言うテンポが思っている以上に速いこと。マイクの性能がよくていろいろな音を拾ってしまうこと。そういった基礎の心構えができていたので、テンポには驚かなかったし、山口さんの真似をして台本を捲りやすいように端を折って臨みました。上下二段に分割された台本を見たのもこの時が初めて。もし今回が初見だったら、どこをどう読んでいいのか分からなかったと思います」

──敬太郎というキャラクターにはどのような印象を持ちましたか?

「10代前半も僕が演じると聞いて、声変わりもある時期だし、正直『できるかな、怪しいぞ』とは思いました。それでも台本を読んでやってみたいと思ったのは、自分も10代を通ってきたからこそ分かる感情のようなものを感じたから。彼と同じ状況になったことはなくても、10代特有のエネルギー感みたいなものも含めてどこか知っているみたいな感覚を覚えて。親近感とは違うけれど、分かるみたいなところに強く惹かれました」

──役作りで、普段との違いはありましたか?

「やりながら掴んでいった感じです。普段のお芝居なら、自分のこれまでの経験値がベースにあって、いろいろカスタマイズするような感覚でできるのですが、声の表現に関してはあまりにも何もない(笑)。何をもって準備と言えるのかも正直自分ではキャッチできていないので、現場で言われたことを素直にやろうという気持ちが強かったです」

──作品を経て、声のお芝居への思いに変化はありましたか?

「今回に関しては、みなさんの感想を聞いて初めて『声で出演した』と実感できる気がしています。まだ指一本程度、ほんの少し入らせていただいた形。これが経験と言えるのかどうか……。言われたことをやるのでいっぱいいっぱいの現場だったし、手応えを感じるフェーズには至っていないけれど、すごく面白かったので今後も機会があればいろいろとやってみたいです」

── 一番難しいと感じたのは?

「まず一人でいる空間に違和感しかなくて。古川(琴音)さんと一緒にアフレコした時は、隣から声が聞こえてくることに安心しました。いるだけで心に余裕ができるというか。お互いに経験がなさすぎて、空き時間は『頑張ろう』みたいなほぼ励まし合いの会話ばかりしていました。難しかったのは“間(ま)”です。普段はある程度自分の“間”で言葉を言っているけれど、それを自分で決められないのも不思議な感じでした。喋るスピードまでも画に合わせるのは本当に難しくて。画を追いながら台本も見るのも大変だったけれど、慣れるしかないという気持ちでやっていました」

──敬太郎の話し方などで萩原さんからの提案があったと聞いています。

「敬太郎ならこんなふうに言うかも……みたいな言い方のニュアンスの話は割としたと思います。ただ、僕の経験した10代の感情を参考にしているので、リアルな世代からしたらまた違う表現だったりもするのかなんて思ったり。でもニュアンスみたいなところなら敬太郎を演じる立場としての解釈という意味でいろいろとアイデアは出せたかなとは思っています」

──立ち退きで大切な場所が失われるという状況にどう向き合って前に進んでいくのかという物語が描かれます。萩原さんだったら大切なものの終わりにどう向き合いますか?

「どんなものでも時代や環境に合わせて適応させて繋いでいく必要があると考えています。もちろんそこに対する感情の浮き沈みはあるかもしれないけれど、なんとか受け入れる努力をして残す方法を探すのが僕の向かい方だと思います」

──父親の残した言葉や資材、考え方が敬太郎たちの運命を大きく変えますが、萩原さん自身に多大な影響を与えている言葉や考え方、存在といえば、NBA選手ステフィン・カリーという存在とコービー・ブライアントの“マンバ・メンタリティ”という言葉でしょうか?

「その通りです。全く変わらず、そして変える気もないし、変わる気もしないし、変わるはずもないと思っています」

──ブレないですね。

「“マンバ・メンタリティ”という言葉は誰でも真似できるんですよね。当たり前すぎてこれ以上の言葉はないです。僕らの本番を彼の試合に重ね、彼の練習を僕らの準備と捉える。間違いないです!」

──では最後に。最近観たアニメを教えてください。

「『チ。—地球の運動について—』。こんなに食い入るように観たのはいつぶりだろうってくらいどハマりしました。めちゃくちゃ面白かったです。スケールは壮大だし、何より着眼点がすごい作品。地動説に興味が出て、今、毎日YouTubeで地動説を解説している人の動画を観ています。自分が触れたことのない世界に触れるのって面白いですよね」

※SCREEN 2025年7月号の転載となります

『花緑青が明ける日に』

画像: 『花緑青が明ける日に』

日本画家として活動しつつ、新海誠や片渕須直などのアニメーション作品に参加するなど幅広く創作活動を行ってきた四宮義俊が自身のオリジナル脚本で青春物語を描く、初の長編アニメーション作品。フランスの気鋭スタジオMiyu Productionsとの日仏共同製作。

あらすじ 町の再開発により立ち退きを迫られている花火工場・帯刀煙火店。帯刀敬太郎はそこに4年間立てこもり、幻の花火〈シュハリ〉を完成させるため花火作りに没頭していた。立ち退きがいよいよ明日に迫る中、地元を離れ東京で暮らしていた幼馴染のカオルが敬太郎の兄・千太郎から知らせを受け、帯刀家を訪れる。三人は失われた花火の秘密に迫るため驚きの計画を企てる。その鍵を握るのは美しい青色の顔料「花緑青」だった。

帯刀敬太郎(声:萩原利久)

緑豊かな森の中にある老舗の花火工場「帯刀煙火店」の次男。町の再開発により立ち退きを迫られているが、4年間そこに立てこもり失踪した父親に代わり幻の花火〈シュハリ〉を完成させようと奮闘している。

『花緑青が明ける日に』
全国公開中
脚本・監督・原作:四宮義俊
出演:萩原利久、古川琴音、入野自由、岡部たかし
キャラクターデザイン:うつした(南方研究所)
作画監督:浜口頌平
美術:馬島亮子
音楽:蓮沼執太
配給:アスミック・エース

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