手掛けたメガヒット作品は数知れず。ハリウッドの最前線で活躍してきたプロデューサー、ジェリー・ブラッカイマーの華麗な軌跡を新作『F1®/エフワン』の公開を前に改めて振り返ります。(文・相馬学/デジタル編集・スクリーン編集部)
カバー画像:Photo by Dan Mullan/Getty Images

大作シリーズはもちろん人間ドラマものも!

画像: 『アルマゲドン』 Photo by Getty Images

『アルマゲドン』
Photo by Getty Images

画像: 『コヨーテ・アグリー』 Photo by Getty Images

『コヨーテ・アグリー』
Photo by Getty Images

パートナーを失ったとはいえ、多くの企画を抱えるブラッカイマーには、立ち止まる余裕はなかった。『ザ・ロック』に続いてニコラス・ケイジと組んだアクション『コン・エアー』(97)に続き、スペクタクル大作『アルマゲドン』(98)をリリース。これが全米で2億ドル超え、日本でも135億円というメガヒットを記録。同じくマイケル・ベイ監督と組んだ『パール・ハーバー』(01)は論議を呼ぶ作品となったが、こちらも日本では65億円の興収を上げた。派手なアクション大作の印象が強いブラッカイマーだが、この頃には女性映画『コヨーテ・アグリー』(00)や、青春スポ根劇『タイタンズを忘れない』(00)のようなドラマ作品や、鬼才リドリー・スコットの戦争映画『ブラックホーク・ダウン』(01)のような力作も手がけている。

画像: 「パイレーツ・オブ・カリビアン」のジョニー・デップ、キーラ・ナイトレイ、オーランド・ブルームと Photo by Eric Charbonneau/WireImage for Disney Pictures

「パイレーツ・オブ・カリビアン」のジョニー・デップ、キーラ・ナイトレイ、オーランド・ブルームと
Photo by Eric Charbonneau/WireImage for Disney Pictures

そして2003年には、ディズニーランドの人気アトラクションに発想を得た冒険活劇『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』を世に放つ。これは、それまでのブラッカイマー作品の全米興収記録を塗り替える3億ドル超えの大ヒットを記録。さらに続編『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』(06)はそれを上回る4億ドルを突破。日本でも興収100億円越えという驚くべき数字を叩き出した。これがシリーズ化され、3〜5作目も大ヒットを飛ばしたのはご存じのとおり。企画が進行中という第6作には、アンバー・ハードとの法廷闘争のスキャンダルによってディズニーに解雇されたジョニー・デップの復活も噂されており、こちらも気になるところだ。

『トップガン』続編&『F1®』などまだまだ現役で大作を手掛ける

ブラッカイマーはさらに、これまた続編が作られたアドベンチャー『ナショナル・トレジャー』(04)やデンゼル・ワシントン主演のサスペンス『デジャヴ』(06)、ディズニーのクラシック作品『ファンタジア』に基づく『魔法使いの弟子』(10)、「パイレーツ〜」シリーズのゴア・ヴァービンスキー監督やジョニー・デップと組んだ西部劇『ローン・レンジャー』(13)など話題作を連打。シリーズ化された『バッドボーイズ』の続編3本もファンを大いに熱狂させた。しかしなんといっても極めつけは『トップガン』の36年ぶりの続編『トップガン マーヴェリック』(22)だ。企画段階でのトニー・スコット監督の急逝、コロナ禍などのハンデを乗り越え、10年以上を費やして製作された本作は全世界で15億ドル弱、日本でも137億円の興収を記録。数字だけでなく、出口の見えないパンデミックの世を生きる人々を勇気づけるかのような物語も忘れ難い。

近年も『アンジェントルメン』(24)、そして『F1®/エフワン』と話題作を放ち続けているブラッカイマーだが、テレビシリーズの分野でも辣腕を発揮しており、2000年から15年にわたって続いた「CSI:科学捜査班」とその分派シリーズはとりわけ有名。DCコミックスに基づく「LUCIFER/ルシファー」(16〜21)も話題となった。

画像: 妻のリンダとジェリー Photo by Steve Granitz/FilmMagic

妻のリンダとジェリー
Photo by Steve Granitz/FilmMagic

2番目の妻である作家リンダ・コッブ・ブラッカイマーとは93年の結婚以来、30年以上連れ添い、現在もロサンゼルスでともに暮らしている。

製作に参加した主な作品 Part2

『60セカンズ』(2000)
『コヨーテ・アグリー』(2000)
『タイタンズを忘れない』(2000)
「CSI:科学捜査班」(ドラマ/2000-15)
『パール・ハーバー』(2001)
『ブラックホーク・ダウン』(2001)
『9デイズ』(2002)
「WITHOUT A TRACE/FBI 失踪者を追え!」(ドラマ/2002-09)
「CSI:マイアミ」(ドラマ/2002-12)
『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』(2003)
『ヴェロニカ・ゲリン』(2003)
『バッドボーイズ2バッド』(2003)
「コールドケース 迷宮事件簿」(2003-10)
『キング・アーサー』(2004)
『ナショナル・トレジャー』(2004)
「CSI:ニューヨーク」(ドラマ/2004-13)
「女検察官アナベス・チェイス」(ドラマ/2005-07)
『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』(2006)
『デジャヴ』(2006)
『グローリー・ロード』(2006)
『ナショナル・トレジャー リンカーン暗殺者の日記』(2007)
『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』(2007)
「イレブンス・アワー」(ドラマ/2008-09)
『お買いもの中毒な私!』(2009)
『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』(2010)
『魔法使いの弟子』(2010)
「CHASE チェイス/逃亡者を追え!」(ドラマ/2010-11)
『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』(2011)
『ローン・レンジャー』(2013)
「HOSTAGES ホステージ」(2013-14)
『NY心霊捜査官』(2014)
「CSI:サイバー」(ドラマ/2015-16)
「LUCIFER/ルシファー」(ドラマ/2016-21)
『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』(2017)
『ホース・ソルジャー』(2018)
『ジェミニマン』(2019)
「ハイタウン」(ドラマ/2020-21)
『バッドボーイズ フォー・ライフ』(2020)
「CSI:ベガス」(ドラマ/2021-24)
『トップガン マーヴェリック』(2022)
「ファイア・カントリー」(ドラマ/2022-25)
『アンジェントルメン』(2024)
『バッドボーイズ RIDE OR DIE』(2024)
『ヤング・ウーマン・アンド・ザ・シー』(2024)
『ビバリーヒルズ・コップ:アクセル・フォーリー』(2024)
『F1®/エフワン』(2025)

ブラッカイマー’s Rule 旬を見抜くキャスティング

俳優の旬の時期を見抜き、作品の強みに変えるのもブラッカイマーの流儀。『トップガン』では、『卒業白書』でブレイクしたトム・クルーズをいち早く起用し、トップスターの座に押し上げた。「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズで、それまで低予算映画主体に出演していたジョニー・デップを大物俳優へと引き上げたことも忘れてはいけない。

ブラッカイマー’s Rule 大作の予算は惜しみなく

ブラッカイマーが手がけたスペクタクル映画は、とにかく派手で豪快。それもそのはず、この手の作品には予算を惜しみなく注ぎ込む。1億ドルの巨費は当たり前。「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズは回を追うごとに製作費が上がり、4作目では3億7千万ドルを投入した。もちろん大作限定で、小品には予算を抑えることも心得ている。

This article is a sponsored article by
''.