カバー画像:『バック・トゥ・ザ・フューチャー』撮影中のゼメキスとマイケル・J・フォックス © 1985 Universal Studios. All Rights Reserved.
ロバート・ゼメキス(監督)
「これはいい」スピルバーグのひとことがゼメキス監督の運命を決めた
(『バック・トゥ・ザ・フューチャー』)
ロス発独占インタビュー
ロバート・ゼメキスは、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の大ヒットで、最も注目される若手監督・作家の一人となった。だがその成功をすんなりと掴んだわけではない。彼が監督した「ロマンシング・ストーン/秘宝の谷」が全米で公開される3週間前のこと、実は『コクーン』の監督を任されていたのだが、突然、映画会社からおろされ、ロン・ハワード監督と交代している。
「なぜおろされたのか理由はまったくわからない。とにかくこれで自分の映画界でのキャリアが終わるのではないかと思った。今回の作品がやれたのはとてもラッキーだ」
ゼメキスがもし『コクーン』を手がけていたら『バック・トゥ…』は誕生しなかったかもしれない。
──『バック・トゥ…』の基本的なアイディアはどこから生まれたのか?
「う〜ん、難しいな。私もボブ・ゲイル(共同脚本)もタイムトラベル映画を熱心に見ていたわけじゃない。ただ、過去が変われば現在はどうなるか、というのは昔からいわれている仮説なんだ。すべてが、こうなったらいいなあとうことで決めた」
──タイムマシンにデロリアンを選んだのはなぜ?
「その大きな理由はデロリアンのドアがちょうど翼のように開くことだった。この車が突然、裏庭に降りてくると、50年代の人たちには宇宙船のように見えるだろう」
──撮影途中で主役のマーティをエリック・ストルツからマイケル・J・フォックスに交代させたいきさつは?
「私のキャスティング・ミスだ。最初から第1希望はマイケル・J・フォックスだったが、彼のスケジュールがいっぱいだった。エリックをおろすことに決めると、あとはマイケルがあくのを待つしかなかった。幸運にもマイケルのスケジュールがとれることになり、彼の出演シーンは夜間に撮影した」
──『コクーン』の監督をおろされたあなたが、今度は主役のエリックには何と言っておりてもらったのか?
「真実を話した。エリックはいい俳優だけど、私が間違った役につけたのだから」
──ところでUSC(南カリフォルニア大学)の出身だけど、どんな学生だった?
「フランク・キャプラ、ジョン・フォード、アルフレッド・ヒッチコック、ビリー・ワイルダーがお気に入りの監督だった。その頃からボブ・ゲイルとコンビを組むようになったが、二人共、映画にすごい情熱を持っていた。とにかくエキサイティングな時代だったね」
──製作総指揮のスティーヴン・スピルバーグと知り合ったのは?
「70年代だった。私はまだ学生でスティーヴンは『ジョーズ』を監督していた。学校で作った短編を見せたら、彼がとても気に入ってくれたんだ。それからお互いにアイディアを交換するようになった。私とボブが書いた『抱きしめたい』の脚本を批評してほしくて読んでもらったら“これはいい。できるだけのことは私がするから、監督してみたら?”と彼が言ってくれた。私はもちろん“イエス!”と答え、最初の映画が作れたんだ」
──『グーニーズ』はスピルバーグが第2班の監督をしたそうだけど、この『バック・トゥ…』ではどうだった?
「スティーヴンは、セットに2時間もいなかったと思う。だけど映画全体をどうするか、キャスティングをどうするか、予算などの大切なことは十分話し合ったね」
──パート2の予定は?
「たぶん作るよ。まだ真剣には考えていないけど、やるだろうな。私自身が続編を見たいと思っているから(笑)。シリーズはたとえば『スター・ウォーズ』や『ロッキー』などを私も楽しんでいる。大切なのは素材とテーマ。お金が目的でパート2を作っても、観客はそれを見抜いていると思う」
──『バック・トゥ…』の大成功はあなたの人生を変えたか?
「さあ、どうかな。もしトップに立ったとしたら、あとは落ちるだけさ(笑)。これまで何度も、誰も私に映画を作らせてくれなくなるんじゃないかと思っていた。だが結局、私は作ってきた。これからだって、映画作りを続けていくさ」
(1986年2月号より。インタビュアー:ヤニ・ベガキス、翻訳:垣井道弘)