カバー画像:『バック・トゥ・ザ・フューチャー』撮影中のゼメキスとマイケル・J・フォックス © 1985 Universal Studios. All Rights Reserved.
1作目を愛してくれたファンのためにパート2を製作
(『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』)
「パート2は一作目をこよなく愛してくれたファンのために作ったんだ。だから、一作目を見ていないと色々な伏線がわからないと思うよ」
監督のロバート・ゼメキスはあたかも当然のようにこう言った。つまり熱心なファンへの彼からのお返しなのである。
──パート2と3を続けて撮っている理由は、経済的だからですか?
「そうじゃない。一作目のエンディングはジョークだった。あれは計算していたものじゃないんだ。だから公開一年後に続編を作ることが決まって、ボブ・ゲイルと頭を抱えてしまった。段々とアイディアを出していくうちに、とても一本の映画では納まりきらないとわかって、ユニヴァーサル映画に2本撮りたい、と話した。キャストやスタッフの契約にも2本撮るという項目が加えられて、それで初めてゴーサインが出た。経済的か?っていうと同じセットを2と3で使う時は経費が浮くというくらいで、実際は2本分の製作費がしっかりかかっている」
──ではどうしても2本続けて撮る必然性はなかったのですね。
「確かに2の後に2年後くらいに3を撮ることは可能だ。しかし僕はキャストの経歴の邪魔はしたくなかったんだ。続けて撮って、あとはそれぞれのキャリアを拡げていってもらいたいと考えた。それと、同じ役者に出演してもらいたいと思っていたから、続けて撮った方が有利だった」
──一作目でジョージ・マクフライを演じたクリスピン・グローヴァーが続編に出ないとわかっていて脚本を書いたのですか。
「オリジナルキャストが出演するかしないかとても重要だった。マイケル・J・フォックスやクリストファー・ロイドが出ないと言えば続編は作れない。だから誰が出られるか調べて書き出した。クリスピンが出ないという理由はよくわかった。それで、彼のシーンは使えないとわかっててストーリーを書き始めたわけだ」
──続編を作るのは難しいですか。
「観客が作り上げたイメージがあるから、それをぶち壊すわけにはいかない。そうかといって同じことを繰り返すのは嫌だ。続編はちゃんとストーリーが発展していかなくちゃいけない」
──パート2の終わり方に理由があるのですか?
「いわゆるクリフハンガー(事件の中途で終わるやり方)にはしたくなかった。スポーツ年鑑は燃えたし、85年はノーマルに戻った。今回の終わり方はパート3の新たな始まりだ。僕は『スター・ウォーズ』3部作や『ゴッドファーザー』2作(共に当時の時点で)を見て勉強したよ。好きな作品であると同時に、優れた続編ものでもあるから」
──30年後の2015年については?
「ポップ・カルチャー的に進んだと仮定して描いた。そんなにひどい所ではないよ。未来というのは我々の手にあるんだ。過去を良く勉強すれば未来がわかるはずだ。何もタイムマシーンがなくったって未来はわかる。未来を良くするのも悪くするのも我々次第だ」
──2015年にはスケートボードじゃなくてホバーボードなんですね。
「あれは実際にあるんだよ。磁石で宙に浮く。だけどPTAみたいなものが反対して商品化できない。それをいただいて使ったんだ」
──パート3の後に続編はありますか。
「パート3はしっかり、キッチリと終わる予定だ。“4”を作るくらいなら3は作らない。3の中にすべてを注いだつもりだ」
──プロデューサーのS・スピルバーグとはどんな仲ですか?
「ごく普通の友だち付き合いで、仕事もライバル意識とかそんなものはないよ。スティーヴンはプロダクション(撮影中の作品)をコントロールしたりしないよ」
──もしタイムマシーンがあったらどうしますか?
「パート2を良く見てもらうとわかるが、マーティは自分の未来の姿を見ていない。占い師の所なんかへ行っても、いつもいいことしか言われないだろう? 未来へ行きたいとは思わないが、過去へは行ってみたい。歴史的な出来事をそばで見るのは面白いと思う。が、未来を知るのは危険だよ」
(1990年2月号より。インタビュアー:鉄屋彰子)