作品選びにお悩みのあなた! そんなときは、映画のプロにお任せあれ。毎月公開されるたくさんの新作映画の中から3人の批評家がそれぞれオススメの作品の見どころポイントを解説します。(デジタル編集・スクリーン編集部)

〜今月の3人〜

大森さわこ
映画評論家。著書「ミニシアター再訪」が「キネマ旬報」の≪映画本大賞・第2位≫。応援して下った方々に感謝。

杉谷伸子
映画コラムニスト。『罪人たち』の音楽にも濃密な人間ドラマにも痺れまくり! ライアン・クーグラーの才能に惚れた。

松坂克己
映画ライター・編集。『28年後…』の続編がどのような展開になるのかいまから楽しみ。日本はいつかな?

大森さわこ オススメ作品
『28年後…』

画像1: 大森さわこ オススメ作品 『28年後…』

ダニー・ボイル復活! パンデミック後の乱をサバイブする未来への思いを込めた一作

評価点:演出5/演技5/脚本4/映像4/音楽5

あらすじ・概要
未曽有のパンデミックで、文明は崩壊し感染を逃れた人々はウィルスに汚染された本土を離れ、孤島で暮らす。12歳の息子スパイクは父親に連れられ、本土での初の危険な任務につくが…。

ダニー・ボイル監督とアレックス・ガーランド(脚本)が組んだ人気ホラー『28日後…』の新シリーズの第一弾(3部作の予定)。以前の世紀末的な世界観を引き継ぎつつ、現代の危機感も重ねることで、終始、目が離せないスリリングな展開となる。

孤島で暮らす12歳の主人公が父と共に感染者のいる本土に行き、初の任務を遂行。その後も病気の母と本土を再訪する。少年の通過儀礼の物語で、正気を失ったかに思えた医師(レイフ・ファインズ、好演)が少年に語る「メメント・モリ(死を思え)」の思想に哲学的な深みがにじみ、後半はヒューマン・ドラマの要素が強まる。ボイルが好む〈サバイバル〉のテーマを中心にして、アフター・コロナの乱世を生きぬく少年(=新世代)に未来への思いが託される。

画像2: 大森さわこ オススメ作品 『28年後…』

子役のアルフィー・ウィリアムズが印象的で、ピュアな瞳の少年の変化に心をゆさぶられる。エッジの効いた音楽(ヤング・ファーザーズ)とiPhone撮影もまじえたシャープな映像に監督らしい映画的興奮あり。ボイルの復活に心から拍手を送りたい。

公開中、ソニー・ピクチャーズ配給

杉谷伸子 オススメ作品
『F1®/エフワン』

F1®の臨場感が半端なく自然とアドレナリンが湧いてくる本物志向のレース映画

画像1: 杉谷伸子 オススメ作品 『F1®/エフワン』

評価点:演出5/演技5/脚本4/映像5/音楽4

あらすじ・概要
 旧友ルーベンの誘いでF1®に復帰した伝説のレーサー、ソニー。同僚の新人レーサーが敵対心を燃やすなか、大胆な戦術と百戦錬磨のテクニックで低迷を続けていたチームに新風を吹き込んでいく。

俳優がプロ仕様のレーシングカーに乗り込んで実際にサーキットを走行する。『トップガン マーヴェリック』の製作チームがあの大ヒット作でトム・クルーズがこだわった本物志向を踏襲した本作は、F1®全面協力によるレースの臨場感が半端ない。撮影機材と技術の進化が可能にしたコックピットからの景色が体感させてくれる世界には、モーターレース・ファンならずともアドレナリンが湧いてくる。

それも、一度は将来を嘱望されながらもF1®を離れざるを得なかったソニーが抱える苦い想いや、そんな彼の経験が培ってきた老獪な戦術に刺激を受けるチームスタッフや新人ドライバーとの人間ドラマが丁寧に描かれているからこそ。

画像2: 杉谷伸子 オススメ作品 『F1®/エフワン』

それにしても、大組織内の異端児が似合うトム・クルーズとは対照的に、ブラッド・ピットには自由を愛する男のロマンがよく似合う。あるレース中のシーンとともに、しばしばソニーの脳裏に浮かぶ夕暮れの海辺の風景が意味するものが明かされたときには、その魅力を再認識せずにいられない。

公開中、ワーナー・ブラザース映画配給
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松坂克己 オススメ作品
『ストレンジ・ダーリン』

全6章の時系列の操作で生み出された予測できない展開とエンディング

画像1: 松坂克己 オススメ作品 『ストレンジ・ダーリン』

評価点:演出4/演技5/脚本5/映像3/音楽3

あらすじ・概要
シリアルキラーが街を恐怖に陥れていた頃、その夜に知り合ったばかりだという一組の男女がモーテルで一夜を過ごすことになり……。時間の流れがシャッフルされ、ここから予測不能の凶悪な連続殺人が始まる。

女が銃を持った男に追われている。これが映画の冒頭だが、実は全6章のうちのここは第3章。ストレートに時間の流れを追うのではなく、全体をシャッフルして観る者を混乱に陥れてくれる。もう映画は公開されているのでネタバレしても構わないのだが、これから観る方のためにはやはり最低限の紹介で、実際に観た時の驚きを残しておきたい。とにかく、最初の印象と進行していく事態がまるで違うのだから。

ジャンル的にはサスペンスアクションと言っていいのだろうが、時系列を操作することによって作品にまるで違った顔を与えている。これまでにも時間軸をシャッフルした映画はあったが、ここまでガラッと印象を変えさせる作品はなかったと言える。Rotten tomatoesで100%FRESH!!というのも頷ける。

画像2: 松坂克己 オススメ作品 『ストレンジ・ダーリン』

個人的にはバーバラ・ハーシーとエド・ベグリーJr.が老夫婦役で登場しているのがうれしかった。主演の二人は日本ではほぼ無名だが、うまくキャラクターを演じていて、監督の狙い通りの効果を観客に与えてくれている。

公開中、KADOKAWA配給
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