LINK1:それは“リプリー” から始まった——「エイリアン」シリーズ女性主人公の系譜

エレン・リプリー(写真は『エイリアン2』)
「エイリアン」シリーズは、SF映画のヒロイン像に大きな影響を与えた。それまでのSF映画の主人公のほとんどは男性だったが、第1作『エイリアン』のヒロイン、リプリーは〈戦う女性主人公がカッコいい〉ということを実証してみせた。リプリーがいたから、『ターミネーター』のサラ・コナー、『マトリックス』のトリニティ、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のフュリオサが生まれたとも言える。
第1作のリプリーは、宇宙船の二等航海士で、特別な能力はないが、絶対に諦めないという強い意志と行動力で、宇宙最凶生物エイリアンに対峙し、最後まで生き残る。彼女がエレンという名前ではなく、苗字のリプリーで呼ばれるのは、乗組員同士が苗字で呼び合っているからだが、彼女を性別からくる先入観に左右されずに、人間として描くためでもあるだろう。
リプリーはシリーズ第4作まで主人公を務め(第4作はクローンだが)、このシリーズのヒロイン像を決定づけた。演じたシガニー・ウィーバーは、第1作出演時は無名の新人だったが、この役で人気俳優になり、今も「アバター」シリーズなどで活躍中だ。

エリザベス・ショウ(『プロメテウス』)
第1作以前の出来事を描く2作のヒロインたち、『プロメテウス』のエリザベス・ショウ、『エイリアン:コヴェナント』のジャネット・ダニエルズも、リプリーの系譜。意志の強さと行動力、苗字で呼ばれるところもリプリーと同じだ。特にショウが自分の体内からエイリアンの胚を摘出する手術をするシーンの意志力は強烈。また、ショウは考古学者、ダニエルズはテラフォーミングの専門家で、どちらも論理的思考が身についている。

ジャネット・ダニエルズ(『エイリアン:コヴェナント』)
演じた2人はどちらも当時話題の俳優。ショウ役のノオミ・ラパスはスウェーデンの映画「ミレニアム」シリーズのクールな天才ハッカー、リスベット役で注目を集め、ダニエルズ役のキャサリン・ウォーターストンは、ポール・トーマス・アンダーソン監督の『インヒアレント・ヴァイス』で、ホアキン・フェニックス演じる主人公を翻弄する元恋人役で話題になっていた。

レイン・キャラダイン(『エイリアン:ロムルス』)
しかしこのヒロイン像は『エイリアン:ロムルス』で少し変化したかもしれない。主人公レイン・キャラダインは、苗字ではなく名前の「レイン」で呼ばれ、大人ではなくまだ成長期。彼女の目的は、ただ生き延びることではなく、アンドロイドのアンディを救うことと、より環境のいい別の惑星に行くこと。生存の先に、目的がある。演じたケイリー・スピーニーは、ドラマ「メア・オブ・イーストタウン/ある殺人事件の真実」で注目されたばかりの新進女優だったが今は『シビル・ウォー アメリカ最後の日』などで活躍中。
また、印象的な女性はヒロインだけではない。『エイリアン2』の植民地海兵隊上等兵バスケスは、筋肉系女性キャラの先駆者。演じたジェニット・ゴールドスタインは元重量上げの選手で、キャメロン監督の『ターミネーター2』でもジョンの里親役を演じている。悪役系アンドロイドもこのシリーズのお約束だが、例外として『エイリアン4』ではリプリーに協力する人間的なアンドロイド、アナリー・コールが登場、『シザーハンズ』のウィノナ・ライダーが演じた。悪役系では、『プロメテウス』でシャーリーズ・セロンが演じた、いつも無表情な冷徹なプロジェクトの責任者だが、実は父親に愛されたいと願っている、メレディス・ヴィッカーズも強い印象を残す。

アレクサ・ウッズ(『エイリアンVS.プレデター』)
また、関連作「AVP」シリーズもヒロインは女性。『エイリアンVS.プレデター』の主人公アレクサ・ウッズは、登山家。『AVP2 エイリアンズVS.プレデター』の主人公ケリー・オブライエンは米陸軍兵士。どちらも行動力のある女性で、最後まで生き残るところも「エイリアン」シリーズと同じだ。

ケリー・オブライエン(『AVP2 エイリアンズVS.プレデター』)
こうしてリプリーを継承する多様な女性たちに彩られてきた「エイリアン」シリーズだが、最新作「エイリアン:アース」のヒロインは、人間ではなく、人間の意識を持つ進化型ロボットのウェンディ。彼女がリプリーの何を引き継ぐのかを見届けたい。
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