パワーにあふれているキャラクターが白石晃士監督作品の魅力
──バットで殴るなど、怪異現象に“物理”で立ち向かう人物が現れるのが白石作品らしさだとファンの方からも支持されていますね。本作オリジナルエピソードの中で、千紘のある行動にそういった監督っぽさを感じました。
監督:キャラクターが何かに対峙したときに、その何かが物理的に力を及ぼそうとしている霊的存在であれば、物質化しているはず。そうなれば、キャラクターも物理的な反応をするのが自然です。
背筋:監督の作品は生きている人も死んでいる人もとても生命力が強く、パワーにあふれている印象があります。それこそが監督が作られる作品の魅力です。それが生きている人であれば、キャラクター性に繋がりますし、死んでいる人であれば、その力強さが強烈な怖さや悲しみに変わると思っています。この作品を見たときに「これぞ!」という感覚がありましたし、原作を監督の作品にしていただいて、とてもうれしく思っています。
──背筋さんは完成した作品をご覧になって、文字では表現できない、映像ならではの怖さなどを感じられたところがありましたか。監督は映像として表現したくてもできなかった、文字ならではの怖さというものはありましたか。
背筋:たくさんあります。いちばん強く感じたのは俳優の方々の繊細な演技です。最初に観たときには気づかなかったような微妙な表情や仕草が、2回目には「あっ!ここでこういう反応していたんだ!」とわかるんです。感動しましたね。もちろん、文章でも丁寧に書けば伝えられるかもしれませんが、空気感も含めた表情や声色、仕草の微妙な機微は映像でなければ万人に共通のイメージを持たせるのは難しいと思いました。
また、怪異の描写にしても、迫力のあるシーンは文字で書くとダサくなってしまいますが、映像で見ると「すげー!」と圧倒されてしまいます。恐怖と畏怖と迫力が合い混ぜになったものはやはり映像でしか得られない体験だと思いました。
監督:恐怖は人間の想像力の賜物なので、曖昧で抽象的なものほど想像力を掻き立てます。そういう意味では、文字や言葉による表現は読み手や聴き手が自分の想像力でイメージを膨らませて、際限のない怖さを作れるんですよね。映像はそのイマジネーションに太刀打ちできないと思っています。ただ、映像には音があるので、音の表現で想像力を刺激して、映像表現ならではの恐怖というものはあると思うので、そこで何とか拮抗できたらと思います。
原作には文章で読むと怖いのですが、映像にすると、もしかするとユーモラスに見えるかもしれないところもあります。例えば、文章がずっと書いてある中で「こしいれせよ」という言葉が出てくると、前後の流れもあって、「気持ち悪い。怖い!」となりますが、その言葉が文字として画面の中に出てくると、ぷぷっとなる人がいるかもしれません。映像には映像なりの抽象性があるとは思いますが、バランスを取るのが非常に難しかったです。

<PROFILE>
監督:白石晃士
2005年『ノロイ』、2007年『口裂け女』、2009年『オカルト』『グロテスク』、2012年〜ビデオシリーズ『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』、2013年『カルト』、2014年『ある優しき殺人者の記録』、2016年『貞子vs伽椰子』、2018年『不能犯』、2019年『地獄少女』、2022年『オカルトの森へようこそ THE MOVIE』『愛してる!』、2023年『戦慄怪奇ワールド コワすぎ!』、2024年『サユリ』配信ドラマ『外道の歌』
原作:背筋
ホラー作家。Web小説サイト「カクヨム」に掲載した「近畿地方のある場所について」がネットで話題となり、2023年にKADOKAWAより書籍化されデビュー。同作は「このホラーがすごい!2024年版」(宝島社)国内編第1位を獲得。近著に「穢れた聖地巡礼について」(KADOKAWA)、「口に関するアンケート」(ポプラ社)がある。
『近畿地方のある場所について』8月8日 (金) 全国公開
- YouTube
youtu.be<STORY>
「行方不明の友人を探しています。」… から始まる衝撃展開の連続!
これは、あなたを“ある場所”へと誘う、禁忌の物語。
行方不明になったオカルト雑誌の編集者。彼が消息を絶つ直前まで調べていたのは、幼女失踪、中学生の集団ヒステリー、心霊スポットでの動画配信騒動など、過去の未解決事件と怪現象。
彼はなぜ消息を絶ったのか?いまどこにいるのか?
同僚の編集部員は、女性記者ともに彼の行方を探すうちに、恐るべき事実に気がついた。
すべての謎は「近畿地方のある場所」へとつながっていたのだった… 。
<STAFF&CAST>
監督:白石晃士
原作:背筋
脚本:大石哲也 白石晃士
脚本協力:背筋
出演:菅野美穂、赤楚衛二
主題歌:椎名林檎「白日のもと」( EMI Records / UNIVERSAL MUSIC )
配給:ワーナー・ブラザース映画
©2025「近畿地方のある場所について」製作委員会