(文・米崎明宏/デジタル編集・スクリーン編集部)
カバー画像:『プロセキューター』より © 2024 Mandarin Motion Pictures Limited / Shanghai Huace Pictures Co., Ltd. All Rights Reserved
イントロダクション
「正義とは何か」を突きつけるドニー・イェン製作・監督・主演のアクション・サスペンス
真実が認められなかったある事件を機に、香港警察の警部から律政司(香港の法律行政を統括する官庁)の検事に転職した主人公フォクが、麻薬密輸容疑で起訴された青年の担当事件に疑惑を持ち、極秘捜査を続けるうちに巨悪の存在に気づいていく…。『ジョン・ウィック:コンセクエンス』のドニー・イェンが主演のほか、監督、製作も手掛けたアクション・サスペンス。実話を基に「イップ・マン」シリーズのエドワード・ウォンが脚本を書いた法廷サスペンスでもあり、『はたらく細胞』の大内貴仁がアクション監督を務め、ドニーの超絶アクションがオープニングから展開する。
共演者も豪華で、裁判長役を「Mr.BOO!」シリーズのマイケル・ホイが演じるほか、フランシス・ン、ケント・チェン、ジュリアン・チョンといった香港ベテラン勢、さらにマイケル・チョン、ロッカー・ラム、ジャーマン・チョンら次世代スターも参加し、ゲスト出演でドニーの実父、クライスラー・イェンもフォクの父親役で登場している。
あらすじ
事件の首謀者を捕えながら、証拠不十分で有罪にできなかった香港警察のフォク警部(ドニー・イェン)は、部下のリー(マイケル・チョン)等に別れを告げ、7年後、律政司の検事となってコカイン密輸事件を担当することになった。彼が担当した事件の第一被告人キットは貧しい青年で、第二被告のチャンに住所を貸しただけというが、弁護士たちに減刑が期待できると耳打ちされ、有罪を認めてしまった。だが結局キットは27年の禁錮を宣告され、チャンは無罪になる。フォクは上司のヨン(フランシス・ン)に疑問を呈するが、それは検事の仕事ではないと一蹴されてしまう。
それでも納得がいかなかったフォクは独自で調査を続け、キットの無料弁護を引き受けたリーやアウに黒社会と繋がる裏の顔があることをつかみ、凶悪な麻薬組織も絡んでいることを嗅ぎつけていく。職務内容を逸脱したフォクの行為に、ヨンは彼の異動を匂わせるが、果たしてフォクは巨悪の陰謀を明かし、無実のキットを救うことができるのか…?
登場人物
香港検察・警察・裏社会の狭間で正義を問う者たち
フォク(ドニー・イェン)
フォク(ドニー・イェン)
香港警察から律政司に転身した新米検事。担当事件に隠されていた闇に挑む。
アウ(ジュリアン・チョン、写真左)
アウ(ジュリアン・チョン)
弁護士助手の顔の裏で弱者を利用して麻薬取引を行っている狡猾な人物。
ホイ判事(マイケル・ホイ)
ホイ判事(マイケル・ホイ)
高等裁判所判事。フォクに対して疑念を抱くものの次第に見方が変わっていく。
ヨン次長検事(フランシス・ン)
ヨン次長検事(フランシス・ン)
フォクの上司で長年に渡り律政司で検察官を務めてきた規則に厳格な次長検事。
リー(マイケル・チョン)
リー(マイケル・チョン)
フォクの部下だった熱血若手刑事。正義感に燃え犯罪撲滅の最前線で勤務する。
パウ(ケント・チェン、写真左)
パウ(ケント・チェン)
新人フォクの教育係だったが、次第にフォクに影響され極秘捜査に関わる検事。
チェックポイント
ドニー・イェンが挑む香港映画の新たな可能性を秘めた社会派エンタテインメントとは

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1)アクション監督は日本の第一人者
ドニー・イェンが今回のアクション監督として白羽の矢を立てたのは、日本の大内貴仁。「HIGH &LOW」シリーズや『はたらく細胞』などで知られる第一人者だ。ドニー自身のアクションチーム「甄家班」のユー・カンとタッグを組んで、さらに日本からA-TRIBE、WORSAL、BOSといった精鋭スタントチームが参戦し、香港&日本の強力チームが結集。ドニー扮するフォクの目線から撮影した一人称によるPOV(主観)アクションに始まり、高層ビル屋上での1対100人のかちこみアクション、地下鉄内での肉弾戦、ドローンと手持ちカメラを併用したナイトクラブでの対決シーンなどなど迫力あるものばかりだが、ドニーの「CGに頼らないリアルな動きこそ観客の心を打つ」という主義により、CGは一切使用されていないところも大内監督の持ち味と一致している。
2)「イップ・マン」製作チームと再タッグ
ドニーは「イップ・マン」シリーズや『導火線 FLASH POINT』で一緒に仕事をした製作チームから本作の主演依頼を受けた当初は「自分の得意分野でないし、法廷ドラマを自分が撮るなど考えられない」と思ったという。しかし「法廷劇とアクションを融合させた新しいジャンルとして再構築するなら価値がある」と再考し、主演以外にも自ら監督と製作を志願。脚本を担当したのはやはり「イップ・マン」シリーズでドニーとタッグを組んだエドワード・ウォン。彼は実際に起きた事件をモデルに現職法律関係者の監修の下、リアルな法曹界のディテールをストーリーに反映させ、事実に根差したドラマを構築。ドニーと共に香港映画に新たな可能性を切り拓いている。
3)香港映画ファンも唸る新旧スター・アンサンブル
本作のもう一つの見どころはドニーを囲む新旧スターたちの顔ぶれ。これは香港映画ファンには垂涎もの。裁判長役には大ヒット喜劇「Mr.BOO!」シリーズで日本でも人気者だったマイケル・ホイが扮しているのを始め、フォクの上司ヨン役に『エグザイル/絆』のフランシス・ン、フォクを支えるベテラン、パウ検事役に「イップ・マン」シリーズのケント・チェン、事件の黒幕アウ役に『ホーク/B計画』のジュリアン・チョンなどおなじみの俳優陣が物語に厚みを加える。さらにフォクの元部下であるリー刑事役にミュージシャンとしても活躍するMCことマイケル・チョン、被告人となる青年キット役にメイソン・フォンなど新世代の俳優陣も配置。新旧スターたちのアンサンブルが見事だ。
4)香港の現在地点を示す社会派エンタテインメント
本作のモデルとなったのは2016年に香港で起きた麻薬密売冤罪事件。ある青年が住所を貸して自宅で荷物を受け取ったことから麻薬密売未遂で起訴されたもので、貧しい青年の人のよさにつけ込んだこの事件は本国で大きな話題を呼んだ。これを基にした本作は香港の司法制度や社会構造の矛盾をついている、さらに現代香港の制度疲労や社会不信といった問題をも背景に含んで、法曹と裏社会の密着、警察と検察の緊張関係などの構造もリアルに描く。ドニーは「この作品は、香港の現在地を映す鏡だ」と語り、この物語を通じて「正義とは何か」という問いかけを観客に向けている。手に汗握るアクションと共に現代社会の様々な問題を考えさせる社会派エンタテインメントだ。
『プロセキューター』9月26日(金)公開
香港=中国/2024年/1時間57分/ツイン配給
監督・出演/ドニー・イェン
出演/ジュリアン・チョン、フランシス・ン、マイケル・ホイ、ケント・チェン
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