唯一無二の世界観に観客を引き込む奇才ウェス・アンダーソン。その最新作は、謎の大富豪と、その娘の旅を描くロードムービー。親子の絆という原点回帰ともいえるテーマを紡いでいます。(文・平沢薫/デジタル編集・スクリーン編集部)
カバー画像:『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』より
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チェックポイント

1)ウェスの原点回帰?“家族の絆”がテーマに

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父と娘がやがて互いの絆に気づくストーリーは、アンダーソン監督を人気監督にした第3作『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(01)や第5作『ダージリン急行』(07)も、家族の絆がモチーフだったことを思い出させて、監督の原点回帰を感じさせる。

また監督は、実生活で自分に娘がいることが本作のテーマに影響を与えたかもしれないと発言。また、主人公コルダには、監督の妻の父親のレバノン人実業家と共通点があるとも語っている。本作は監督自身の体験が反映された個人的な作品にもなっているのかもしれない。

2)常連スター大集合! 往年の名優へのオマージュも

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今回も監督作の常連俳優たちが大挙出演。主役のベニチオ・デル・トロ、秘書役のマイケル・セラ、海運王役のジェフリー・ライト、はとこ役のスカーレット・ヨハンソンは、監督が彼らに出演してもらいたくて、それぞれに似合う役を脚本に書いたとのこと。

また、往年の名優や名画へのオマージュも。主人公は、アンソニー・クイン、リノ・ヴァンチュラ、ジャン・ギャバンが演じたような役のイメージ。マチュー・アマルリックが扮したクラブオーナーの着想源は『賭博師ボブ』(56)や『現金に手を出すな』(54)だと監督が語っている。

COMMENT

ウェス・アンダーソン

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「物語の出発点は、オナシスやニアルコスといった1950年代のヨーロッパ人大富豪を題材に何かを作ろうというアイデアでした。アールパード・プレシュやカルースト・グルベンキアン、ジャンニ・アニェッリについての本も読みました」

「アンソニー・クインなら、こういうキャラクターを演じられたかもしれません。あるいはリノ・ヴァンチュラやジャン・ギャバンでもいけたかも。ベニチオに断られていたら、誰が他の候補になったか想像できません。映画史をさかのぼるしかなかったでしょう」

「成功は重要だが相手を負かすことは本質ではないと、ザ・ザは謙虚さを身に着けるにつれて知っていきます。負かされる必要はありませんが、かといって負かすことを最優先にする必要もないんです。」

ベニチオ・デル・トロ

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「ウェスが20ページほどの脚本を送ってきた。読んですぐに心をつかまれました。ザ・ザと娘が初めて出会うシーンだったけど、細部まで丁寧に描かれた、豊かなシーンで、オリジナリティにあふれたものでした。ユーモアと哀しさが同居していた。とても多層的で、まさに役者が追い求めるような役。だからこそ、こんなチャンスは絶対に逃したくなかった。この役をもらえて本当にうれしかったし、即決で引き受けました」

「ウェス監督には、あれだけのレベルのキャストを引き寄せる力がありますが、それに加えて、彼の脚本力や演出力によるところも大きいです。作品には、内なる子どもの遊び心がにじみ出ていて、役者もまた、その童心を大切にしなければならない。ウェスの映画は、まさに素晴らしい『遊び場』なんです。」

『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』9月19日(金)公開
アメリカ=ドイツ/2025年/1時間42分/パルコ ユニバーサル映画配給
監督:ウェス・アンダーソン
出演:ベニチオ・デル・トロ、ミア・スレアプレトン、マイケル・セラ、リズ・アーメッド、トム・ハンクス、ブライアン・クランストン、マチュー・アマルリック、リチ
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