イントロダクション
アニメーション映画界のアカデミー賞とも言われるアニー賞で10部門受賞を果たし、続編二作品やTVシリーズも製作された人気作『ヒックとドラゴン』(10)。ドリームワークス・アニメーションの代表作でもある同作が、ユニバーサル・スタジオとの強力タッグで実写映画化。人間の少年ヒックとドラゴンのトゥースの友情が、今夏、新たな形で日本のスクリーンを羽ばたく。
物語は、バイキングが宿敵のドラゴンと戦いを繰り広げてきたバーク島を舞台に描かれる。戦いが苦手で周囲に馴染めずにいた少年ヒック、そして傷つき飛べなくなったドラゴン・トゥース。それぞれの世界で言わば“はみ出し者”だった者たちの出会いが、敵同士だったバイキングとドラゴン、それぞれの運命を変えていく。
監督はアニメーション版三部作を手掛け、「ヒックとドラゴン」の世界を知り尽くすディーン・デュボア。本作では北アイルランドやアイスランドなどでの大規模なロケ撮影を敢行し、最新のIMAXカメラや緻密なCG技術も導入。アニメーション版の世界観を土台にしながら、実写版ならではのリアリティあふれるビジュアルを構築した。白雲を突き抜け、断崖の狭間を優雅に舞う“ドラゴンライド”はぜひ劇場で体験してみてほしい。
主人公ヒックに扮するのは『ブラック・フォン』(21)のメイソン・テムズ。ヒックのチャーミングな一面と10代ならではの繊細さを磨きがかる演技力で体現。また、アニメーション映画版でヒックの父ストイック役を演じたジェラルド・バトラーが実写版でも続投しているほか、ニコ・パーカー、ジュリアン・デニソンら注目の新鋭、製作中のドラマ版「ハリー・ポッター」のハグリッド役を演じるニック・フロストまで注目のキャスト陣が共演を果たしている。
日本に先駆けて世界中で公開されているが、その累計興行収入は6億ドルを突破し(*記事執筆時点)、すでに続編製作も決定済。そんな話題あふれる本作の魅力に本特集では迫ってみよう。
About 「ヒックとドラゴン」
今回の実写版やアニメーション映画の原作は、累計800万部以上が発行されている、イギリスの児童文学作家クレシッダ・コーウェルによる同名の児童文学シリーズ。2010年からのアニメーション映画三部作では、世界累計興収16億ドル超を記録し、テレビシリーズも展開されている。子どもから大人まで幅広い世代に愛される大人気作品。
ストーリー
バイキングとドラゴンの戦いが長きにわたり繰り広げられてきたバーク島。この島に住む少年ヒック(テムズ)は、族長であるストイック(バトラー)のような勇敢な戦士になることを夢見ていたが、戦いは苦手で周囲からは弱虫扱いされていた。ある日、そんな彼が出会ったのは、傷を負い飛べなくなった伝説のドラゴン“ナイト・フューリー”。名を上げる千載一遇の機会だったが、ヒックはそのドラゴンを殺すのではなく、助けることを選ぶ。ドラゴンに“トゥース”と名付け、絆を深めていくヒック。トゥースとの交流でドラゴンの特性を学んだヒックは、ドラゴン退治の訓練でも好成績を残し注目の的になっていく。しかし、敵であるはずのドラゴンを庇っていることが周囲に露見してしまい……。
驚きの世界を生み出した裏側とは? 『ヒックとドラゴン』制作秘話

雄大な景色を映すロケ&作り込まれたセット
豊かな自然に囲まれたバーク島を表現するにあたり、北アイルランドのスタジオを中心に撮影が行われ、アイスランドやスコットランド、そしてデンマークのフェロー諸島などの手つかずの風景も取り入れた。セットも作り込まれ、素材や置かれた工芸品は、バイキングの貿易ルートを反映し、モロッコやインドなどから調達。また、ハーブや鉱物、植物などから抽出した色素を用い、歴史を考慮した色づかいに。
スタントにも果敢に挑んだ新鋭キャストたち!
メイソン・テムズ(『ブラック・フォン』)は、スタントチームも驚くほどの身体能力を発揮。回転や戦闘をこなしながら、ヒックならではの“ぎこちなさ”まで加える芸達者ぶり。勇敢なアスティ役のニコ・パーカー(『ダンボ』)はボクシングのトレーニングを重点的に行ったほか、約18mを高速降下するなどハードなアクションに挑戦。ジュリアン・デニソン(『デッドプール2』)ら、他のキャストも大胆なスタントに挑んだ。

注目キャスト陣はスタントにも挑戦
実写ならではの迫力と感情の深みを捉えた撮影
撮影監督には『マトリックス』『スパイダーマン2』『ベイビー・ドライバー』などのビル・ポープ。ドラゴンの飛行シーンではラージフォーマットのIMAXカメラを活用し、観客が一緒に空高く舞い上がっていると錯覚するような迫力ある画作りを実現。また、人物の感情にフォーカスするような落ち着きあるシーンではアナモルフィックレンズを使用。キャラクター達の親密さや心の機微を繊細に映し出している。

ドラゴンの炎にも注目
CG×パペット×特殊効果でドラゴンをリアルに表現!
人間と並んだときの違和感をなくし、よりリアルなドラゴンとすべく、制作陣は“動き”から再検証。トゥースはトカゲや黒ヒョウを参考にするなど、各ドラゴンはそれぞれ特定の動物の動きを参考に描いた。また、撮影時のリアリティを出すために、各ドラゴンの実物大の頭部が制作されたほか、ドラゴンが吐く炎には、実際の火薬の爆発も利用するなど、デジタルとフィジカル両面を活用。

実物大のドラゴンの頭部が制作された
アニメ版の魅力を継承しつつリアリティも両立した衣装
衣装は、リサーチに基づいたバイキング時代のフォルムに、強調した色彩やファンタジーの要素を取り入れることで、アニメーション版の精神を大切にしつつ、歴史的なリアリティも両立。メインキャラクターたちには、それぞれの相棒のドラゴンを思わせる特徴も。3Dプリントも活用され、鎧は軽量化されたものの、ジェラルド・バトラー演じるストイックの鎧は重くなってしまい、バトラーは約34kgの鎧を長い時で12時間も着こむことに。

アニメ版の魅力とリアルさを両立した衣装
おなじみの楽曲たちが実写版に合わせて再誕!
本作の音楽を手掛けるのは、アニメーション版第一作と『ウィキッド ふたりの魔女』でアカデミー賞作曲賞候補に輝いたジョン・パウエル。アニメーション版三部作でも音楽を手掛けたパウエルは、実写版のリズムに合わせてアニメーション版の楽曲のタイミングやペース、強弱などを細かくアレンジ。実写版に合わせた楽曲へ生まれ変わらせている。さらにヒックとティースの感情面を際立たせるために新曲も。どこで流れるかはお楽しみに。
『ヒックとドラゴン』
2025年9月5日(金)公開
アメリカ/2025/2時間6分/配給:東宝東和
監督:ディーン・デュボア
出演:メイソン・テムズ、ニコ・パーカー、ガブリエル・ハウエル、ジュリアン・デニソン、ブロンウィン・ジェームズ、ハリー・トレヴァルドウィン、ピーター・セラフィノウィッツ、ニック・フロスト、ジェラルド・バトラー
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