公開40周年記念で再上映される『ターミネーター』でハリウッド注目のディレクターとなり、以来『ターミネーター2』『タイタニック』『アバター」シリーズと映画史を塗り替えるような革命的な作品を生み出してきたジェームズ・キャメロン。映画界唯一無二の存在であるヒットメーカーのこれまでの道のりを振り返ってみましょう。(文・渡辺麻紀/デジタル編集・スクリーン編集部)
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それまでの興行記録を塗り替えた『タイタニック』の大成功

デビュー作で苦い経験をしたキャメロンが次に取り掛かったのが『ターミネーター』だった。予算を抑えるためにSFXが最小限で済みそうな現代のロサンゼルスを舞台にしたストーリーを考えたのが本作で、脚本の完成までに2年間を要している。これで失敗したら次がないと思い、まさに背水の陣で挑んだ脚本だった。本作にゴーサインが出たのはニューワールドで出会い後日、結婚したプロデューサーのゲイル・アン・ハードが、ヘムデール・フィルムのジョン・デイリー(のちに『プラトーン』や『ラストエンペラー』を製作)にシノプシスを読ませたから。彼が気に入り製作が現実味を帯びてきたのだ。

『ターミネーター』がスマッシュヒットのみならず高評価を得たキャメロンは一躍、ハリウッドの時の人となった。映画会社の重役たちからランチの声がかかり身辺が騒がしくなったというが、この時はすでに次回作が決まっていた。『エイリアン2』である。『ターミネーター』の脚本を気に入ったプロデューサーのウォルター・ヒルたちがキャメロンに『エイリアン2』の脚本を依頼。完成した『ターミネーター』を観てメガホンも任せることになったという。

画像: アクション演出が際立った『エイリアン2』 『エイリアン2』ディズニープラスのスターで配信中 © 2025 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.

アクション演出が際立った『エイリアン2』
『エイリアン2』ディズニープラスのスターで配信中
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画像: 『エイリアン2』演出中のキャメロン(左)

『エイリアン2』演出中のキャメロン(左)

リドリー・スコットの『エイリアン』は深宇宙の恐怖を描いたSFホラーの傑作だったが、キャメロンによるシリーズ2作目はジャンルを変え、ミリタリーアクションになっている。これについてスコットはキャメロンから「あなたのような恐ろしい映画は作れない。だから私は自分が得意なミリタリーアクションにした」と言われたそうだ。

続編となると通常、物量にモノ言わせただけで同じような作品になりがちなのだが、キャメロンは自分の得意分野へ近づけることでその危険性を回避。結果、大成功を収めることになった。『ターミネーター』で注目された才能がホンモノだったことを、ここで見事に証明したのだ。

その後、高校時代に考えたショートストーリーをもとに念願の海洋映画『アビス』を撮り、もっとお金をかけて撮った『ターミネーター2』をスーパーヒット作にし、『トゥルーライズ』でも成功を収め、ハリウッドのトップ監督の仲間入りを果たしたキャメロンが大きな賭けに出たのが『タイタニック』だった。

画像: 念願の海を舞台にしたSF『アビス』 『アビス』ディズニープラスのスターで配信中 © 2025 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

念願の海を舞台にしたSF『アビス』
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画像: 『ターミネーター2』は巨額の製作費をかけ大ヒット

『ターミネーター2』は巨額の製作費をかけ大ヒット

『ターミネーター2 4K Ultra HD Blu-ray』
7,480円(税込) 発売・販売元:KADOKAWA
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画像: シュワルツェネッガーと3度目のコンビを組んだ『トゥルーライズ』 『トゥルーライズ』ディズニープラスのスターで配信中 © 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

シュワルツェネッガーと3度目のコンビを組んだ『トゥルーライズ』
『トゥルーライズ』ディズニープラスのスターで配信中
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キャメロンがタイタニック号とその悲劇に興味をもつようになったのはやはり海への熱い想いから。完成した映画でも、海底に眠るタイタニック号の残骸を捉えた映像があるが、それを自分で潜って撮ることが大きな原動力になったといっている。

とはいえ、製作中は悪い意味で常に大きな注目を浴びる映画だった。膨れ上がった製作費は約2憶ドル(今のレートだとおよそ300憶円!)。本人曰く「私にとっては初の歴史もの」という理由から徹底的にタイタニック号の再現にこだわりまくった。豪華客船の内装を当時と同じ業者に頼んだり、食器にロゴが入っていたと知るとそのシーンを全部撮り直し、実物大のタイタニック号(の片側)のレプリカを実際の設計図を基に建造した。「私は100%、実際のタイタニックと同じものを作りたかった」からだ。

これでキャメロンの監督生命はおしまいだろう──というのがハリウッドと世間の一致した予想だったのだが、蓋を開けてびっくり。映画史を塗り替える超絶ヒットとなり、アカデミー賞でもキャメロン自身の監督賞と作品賞を含め11部門で受賞という素晴らしい成績を残した。

キャメロンが賢かったのは、タイタニックの再現に注力する反面、物語は王道のラブストーリー。主演にレオナルド・ディカプリオ&ケイト・ウィンスレットという人気者を選び、誰もが感情移入できる物語を語ってみせたところ。ストーリーではオタク要素を封印したのだ。

画像: 映画史に残るヒットとなった『タイタニック』 『タイタニック』ディズニープラスのスターで配信中 © 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

映画史に残るヒットとなった『タイタニック』
『タイタニック』ディズニープラスのスターで配信中
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画像: 『タイタニック』演出中のキャメロン(右)

『タイタニック』演出中のキャメロン(右)

『タイタニック』でアカデミー賞を受賞

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