イントロダクション
タイトルの“ブラックバッグ”とは、「スパイ同士の間でも共有できない極秘情報」の呼び名。スパイの夫がスパイの妻に出張の理由を聞いても、「ブラックバッグ」と答えられれば、それ以上は何も聞けない。そんなブラックバッグを持つスパイ集団の中で、スパイである主人公が、二重スパイの正体を探る謎解きサスペンス。容疑者はみな、同僚のスパイ。誰もが嘘をつき、罠を仕掛け、互いに心理的駆け引きを繰り広げる中で、主人公のスパイの妻も容疑者になってしまう——。スパイ同士の夫婦の心理の綾を演じる演技派俳優2人、マイケル・ファスベンダーとケイト・ブランシェットの競演ぶりも見逃せない。
スパイものだが、アメリカではなく英国ロンドンが舞台。登場人物はみな複雑な内面を持つ大人で、人間心理の微妙さが鍵になるストーリーも大人向け。展開に無駄がなく、94分というタイトな尺も魅力だ。
監督は「オーシャンズ11」三部作でも粋なドラマを描いたスティーヴン・ソダーバーグ。脚本は、監督と3度目のタッグとなる『ミッション:インポッシブル』のデヴィッド・コープ。ロンドンの夜の気配に似合う音楽は、監督作の常連、英国出身のデヴィッド・ホルムスが手がけている。
ストーリー
ディナーで露わになる本性——二重スパイはこの中にいる
英国の国家サイバーセキュリティセンターの諜報員のジョージは、組織内部の二重スパイを探し出すため、妻のキャスリンを含む容疑者5人を自宅のディナーに集わせ、言葉のゲームを仕掛ける。ゲームの中で、隠されていた人間関係が明らかになっていくが、二重スパイの正体は不明。やがて彼は妻に疑問を抱かせるような事実を見つけてしまう。果たして彼の妻は二重スパイなのか。そして、ジョージはどう行動するのか。
CHECK1 腕利きの演技派が静かに散らす火花
アカデミー賞2度受賞のブランシェット、ベネチア国際映画祭男優賞受賞のファスベンダーをはじめ実力派が結集。ソダーバーグ監督は、ファスベンダーと『エージェント・マロリー』(11)で組んで以来、ずっと再タッグを熱望。また、監督とブランシェットは、『さらば、ベルリン』(06)、『オーシャンズ8』(18)に続く3度目の顔合わせ。監督が信頼する俳優2人が初共演し、互いに本心を表面には出さない役柄で、巧みな演技力を見せつける。
脇を固めるのが、英国の演技派たち。「007」シリーズのナオミ・ハリス、ドラマ「ブリジャートン家」のレゲ=ジャン・ペイジ、『Back to Black エイミーのすべて』(24)主演で注目のマリサ・アベラらが、一つのテーブルを囲むシーンの演技合戦も熱い。
CHECK2 重奏し合うサスペンス
信用×疑念

スパイ同士の夫婦は、夫婦の間でも、仕事の内容は明かさない。なので、仕事のせいにしてウソをつくのは簡単。一方、相手のことを、スパイの技術を使って調べることもできる。一緒に暮らすもっとも親しい人間が、自分に見せている顔は本心からのものなのか。スパイ同士の夫婦だからこその複雑な心理が見もの。
プロ×プロ

二重スパイは誰なのかを探し出す謎解きミステリーだが、何しろ容疑者は、全員がスパイ。つまり、全員が、嘘をつくプロで、嘘を見破るプロ。なので、どの発言も、それが事実なのかウソなのかわからない。しかも、スパイは、お互いに罠を仕掛ける習性がある。スパイ同士だからこその、心理ゲームがスリリング。
WHO IS THE TRAITOR? 裏切り者は、この中にーー

(左から)ジェームズ、ゾーイ、ジョージ、キャスリン、フレディ、クラリサ
キャスリン(ケイト・ブランシェット)
凄腕のスパイ。夫ジョージを熱愛しているが、職務上の秘密は夫にも明かさない
ジョージ(マイケル・ファスベンダー)
凄腕のスパイ。妻キャスリンを熱愛しているが、妻に二重スパイの容疑がかかる
ゾーイ(ナオミ・ハリス)
ジョージたちの局の心理カウンセラー。職業柄、スパイたちの秘密を知ってしまうことがある
フレディ(トム・バーク)
ジョージの同僚のスパイ。かつては前途有望だったが、私生活の乱れから昇進を逃す
ジェームズ(レゲ=ジャン・ペイジ)
ジョージの後輩のスパイ。上昇志向が強く、上司にも将来を有望視されている
クラリサ(マリサ・アベラ)
ジョージたちの局の情報分析官。この中で最年少で、感受性が強い。恋愛経験が豊富
『ブラックバッグ』
2025年9月26日(金)公開
アメリカ/2025/1時間34分/配給:パルコ ユニバーサル映画
監督:スティーヴン・ソダーバーグ
出演:ケイト・ブランシェット、マイケル・ファスベンダー、マリサ・アベラ、トム・バーク、ナオミ・ハリス、レゲ=ジャン・ペイジ、ピアース・ブロスナン
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