カバー画像:『ボディビルダー』 ©2023 LAMF Magazine Dreams LLC All Rights Reserved.
イントロダクション
ボディビルという肉体改造のハードな世界に切り込んだ異色のヒューマンドラマ。主人公は、ボディビル大会での優勝を目指して体を鍛え続ける黒人の青年。金もコネもなく、ただただ筋肉の増強に励む彼に、厳しい現実が次々と立ちはだかる。すべての希望を失ってしまったとき、彼に残されていたものとは何か⁉
ティモシー・シャラメ主演の『HOT SUMMER NIGHTS/ホット・サマー・ナイツ』で注目を集めたイライジャ・バイナム監督が、肉体改造へのこだわりを極限までつきつめようとする若者の数奇な人生を活写。狂気ともとれるドラマの緊張感に魅入ってしまう。若い彼をサポートしたのは、ジェニファー・フォックスやダン・ギルロイら『ナイトクローラー』のプロデューサー陣。
主演は『クリード 過去の逆襲』で、主人公クリードとリングでの対決を熱演したジョナサン・メジャース。同作以上に筋肉を増強した姿は圧倒的な存在感を放つ。共演に『ティル』のヘイリー・ベネット、『ビバリーヒルズ・コップ:アクセル・フォーリー』のテイラー・ペイジ。主人公が憧れるボディビルダー役を、世界選手権“ミスター・ユニバース”で4度の優勝歴を誇るブラッド・ヴァンダーホーンが演じ、ヒーローの表と裏の顔を体現している。
あらすじ
アメリカの田舎町で祖父の介護をしながら、成功を夢見るボディビルターの青年キリアン。しかしその道は険しく、審査員は容赦なく失格のレッテルを貼り付ける。さらに悪いことに失恋し、職場もクビになってしまった。どん底で唯一の希望となったのは憧れの世界チャンピオン、ブラッドからの返信だった。それが失望に変わるとき、彼がとった行動は?
登場人物
キリアン・マドックス(ジョナサン・メジャース)
キリアン・マドックス(ジョナサン・メジャース)
ボディビルダーとしての成功を夢見てスーパーマーケットで働く。アンガーマネジメントの問題を抱えている
ジェシー(ヘイリー・ベネット)
ジェシー(ヘイリー・ベネット)
キリアンの同僚で、彼が思いを寄せている女性。彼との初デートで得体の知れない恐怖を体験してしまう。
みどころ
1)キリアン役に魂を燃やしたジョナサン・メジャース
『クリード 過去の逆襲』でボクサー役の筋肉をつくったジョナサン・メジャースが、さらに肉体を改造。4か月にわたり、1日に6度の食事と3度のトレーニングを欠かさずに行ない、ボディビルダーの体を築き上げた。キリアンとは異なり、ステロイドは使用していないとのこと。
2) “認められたい”という欲求が加速する恐怖
主人公のキリアンは“ボディビル雑誌の表紙を飾るほど有名になりたい”という欲求を抱えている。それは他人に見下されることに対する激しい怒りによって、次第に狂気へと変化。強烈な承認欲求がねじれていく過程の、ち密な描写がスリルを感じさせずにおかない。
イライジャ・バイナム監督 COMMENT
イライジャ・バイナム監督 Photo by Corey Nickols/Getty Images for IMDb
主人公キリアン・マドックスは、現代の傷ついた男性たちの象徴です。孤独で、世間から不当に扱われていると感じている男性たちは、愛を返してくれないこの世界で愛を探し求めています。「仲間に入れてほしい」「認められたい」という欲求は人間の根源的なものですが、膨れ上がるとそれらは時に化膿し、鬱血し、やがて流血に至ります。キリアンの肉体は計り知れないほどの破壊力を持っていますが、その内部には、脆く幼い少年のままの自分が囚われています。彼の肉体は傷ついた魂を覆いつくす鎧なのです。この“脆弱な魂と強靭な肉体”という視覚的には相反する二つを、本作では描きました。
『ボディビルダー』はキリアンの心を深く掘り下げましたが、普遍的な事象を描いた物語だと思っています。これは、ある一人の青年の誤った“アメリカン・ドリーム”への渇望を描いた物語です。永遠に語り継がれてゆく世界中の物語のように、この物語も、“人間であること”について考え、その意味を少しでも照らし出したいという思いから生まれました。
『ボディビルダー』
2025年12月19日(金)公開
アメリカ/2023年/2時間3分/トランスフォーマー配給
監督/イライジャ・バイナム
出演/ジョナサン・メジャース、ヘイリー・ベネット、マイク・オハーン
©2023 LAMF Magazine Dreams LLC All Rights Reserved.






