カバー画像:『アバター:ファイヤー・ アンド・アッシュ』より © 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

エイワに憎しみを抱くアッシュ族のヴァラン
【 レビュー 】
エモーショナルな家族ドラマから凝りに凝った究極の映像体験まで
見どころだらけのジェームズ・キャメロン最新作
「シリーズ中、最高傑作」「シリーズ史上最も規模が大きく、重厚で、壮大」などすでに本国から絶賛の声が聞こえているジェームズ・キャメロン監督最新作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』。そうした評価も納得のスペクタクルが大画面に展開する。これこそ巨大スクリーンで見なくてはならない類のエンタテインメントだ。そして娯楽作であると同時に様々なテーマが盛り込まれているところも、やはりキャメロン監督らしい。家族愛、戦争と平和、大自然と人間など、誰にでもわかりやすい普遍的な問題があちこちに盛り込まれることで、3時間を超える長尺ながら、息つく暇もない展開になっている。
サリー一家に影を落とす長男の死
人類がその豊かな資源を狙う惑星パンドラで先住民のナヴィとして生きる道を選んだ元海兵隊員ジェイク・サリー。彼はナヴィのネイティリと恋に落ちて結ばれ、子供たちにも恵まれた。しかし彼らの属した森の民、オマティカヤ族の領域に人類が侵攻し、故郷を逃れ海の民、メトカイナ族の元に身を寄せたジェイクたちだったが、そこまで人類軍のクオリッチ大佐率いる人間の魔手が伸び、戦いのさなか、ジェイクとネイティリの長男ネテヤムが命を落とす悲劇が起きる…。というのが大まかな前作までの内容だが、その先に待っていたジェイクたちの運命はさらに過酷で、壮大なものだった。
今回ジェイクやネイティリと同様に作品の重要な役割となるのが子供たちで、長男ネテヤムの死に責任を感じている弟ロアクには、父ジェイクとの間に軋轢も生まれている。そして人間のグレース博士から誕生した養女のキリ、ナヴィの敵であるクオリッチ大佐の実子ながら養子となったスパイダーの2人がパンドラの運命を握るような存在となる。身体が人間のままのスパイダーは酸素マスクをつけてパンドラの世界で暮らしているが、彼のその状態にこれ以上危険を冒せないと考えたジェイクがスパイダーの生きる道を考えたところから、一家の新たな運命が転がり出す。
人間を憎むネイティリがなかなかスパイダーを愛することができずにいる葛藤も加え、団結して生きることが身上のサリー一家には数々の問題が浮上。そんなところにナヴィの体となったクオリッチ大佐が再びジェイクへの復讐心をたぎらせながらパンドラに戻ってくる。だが彼にはスパイダーへの複雑な父性愛が芽生えていて、これがジェイクとの関係にこれまでになかった要素を発生させることに。さらにスパイダーとパンドラのつながりを一層濃いものにするのがキリ。彼女にはパンドラ全体を覆うような神経線維ネットワーク、エイワとの不思議なつながりを持ち、その秘められたパワーがある奇跡を呼び起こし、そのためにますます人類が危険な行動を取るようになるのだ。

心に大きな葛藤を抱えるネイティリ
大画面での没入感は現時点で究極のもの
サリー一家だけでもこれだけのエモーショナルな物語があるのだが、今回新たに登場するナヴィのアッシュ族が前作までになかったテイストをプラスする。彼ら一族は自分たちの住む村がエイワの裏切りで守ってもらえず全滅したと恨んでおり、他の部族が自然を愛するのとは違い攻撃的で、盗賊行為なども行っている。その首領であるヴァランが異色のキャラクターで、パンドラが人類に狙われていることを逆手に取って、人間が使う銃や火炎放射器などの武器を得ようとする。そのため利害が一致するクオリッチと急接近。その他のナヴィたちを絶体絶命の危機に追い込んでしまう。
大自然に対する物質的な人間の脅威が加速していくのだが、これに対抗するジェイクたちの強い味方になるのが、鯨のように巨大なトゥルクンや、大空を飛ぶイクランといったパンドラ固有の生物たち。さらには明かされる時を待っていたかのようなパンドラの隠された真実とは…。
ナヴィを演じる俳優たちの演技も作品が進むにつれ一層情感がこもっており、一家の長、一族のリーダーとして苦悩するジェイクを演じるサム・ワーシントンはじめ、長男を失った悲しみと人間への憎悪に揺れるネイティリを演じるゾーイ・サルダナ、ティーンのキリの心情とパンドラへの崇拝の気持ちを表現するシガニー・ウィーヴァー、これまでになかった父親的な面を見せてくれるクオリッチ役のスティーヴン・ラングらベテランの熱演が「アバター」を単なるイベント映画とは異なるクラスの作品に押し上げている。初登場のヴァラン役ウーナ・チャップリンの悪役ぶりも鮮烈だし、子役たちの活躍も見逃せない。

キーパーソンとなるキリとスパイダー
彼らが演じる数々のドラマと背景となる世界観を描写するジェームズ・キャメロンならではのビジュアルがまた素晴らしく、ウィンド・トレーダーズ(風の商人)の空中移動手段など見たこともない世界の映像が次々と目の前で展開する。クライマックスはともかく「総力戦」という言葉が相応しく、一体この画面にどれだけのエネルギーが注がれているのかと呆れてしまうほど。それも3Dならではの立体感と奥行きで、大画面での没入感は現時点での究極のものと言えるだろう。巨大作品のディテールまできっちりと演出するキャメロン一流のこだわりは、大画面で見てこそその真価を隅々まで確認できるというもの。これはなるべく大きなスクリーンで体験するしかないだろう。ちなみに本作は製作途中に亡くなった名物プロデューサー、ジョン・ランドーに捧げられている点にも注目してほしい。

大空を移動するウィンドトレーダーズ

パンドラの生物たちも大活躍
『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』
2025年12月19日(金)公開
アメリカ/2025年/ウォルト・ディズニー・ジャパン配給
監督・脚本:ジェームズ・キャメロン
出演:サム・ワーシントン、ゾーイ・サルダナ、シガニー・ウィーヴァー、ウーナ・チャップリン
© 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

