チェックポイント
この映画が作られた理由

この映画が監督デビュー作となるアルテュスは、子供の頃、大好きな友人で障がいのある子がいたが、それは当たり前のことと思っていて、知的障がいのある人がどんなことができるのかを描きたいと考えていたと言う。同時にアルテュスは「彼らの」映画を撮りたかったのではなく、「彼らと」映画を撮りたかったのであるとも言う。1996年に作られた『八日目』という、本物のダウン症患者が主演を演じた映画に魅了されたアルテュスは、「ついに扉が開いた」と思ったが、すぐに閉じてしまった。そこで「もう一度扉を開けようと考えたんです」と明かす。障がいそのものがテーマではなく、あくまでサマーキャンプの物語を普段あまり銀幕で観かけることのない人たちが演じているだけと言い、自分を「その話題に触れるなと言われたら、かえって飛び込みたくなるタイプ」と明かしている。
シルヴァンはすでに存在していた

アルテュスはすでに舞台、SNSで知的障がいのある“大きなお調子者”シルヴァンというキャラクターで人気を得ているフランスのコメディアン。この役は元々ベイルートのタクシーの中で即興で生まれたキャラ。内輪で楽しんでいた人物だったが、モントルーのフェスティバルでパラスポーツをテーマにしたコントを演じた時、舞台でこの役を演じたら、おそらく批判されるだろうという予想に反して、ハンディスポーツ連盟や当事者たちからも好評を得たと言う。そのシルヴァンを映画に出した方がいいとプロデューサーや友人たちから勧められ、脚本に彼を登場させたのだとか。内心、彼らと一緒に演じたいという気持ちもあって決断したとアルテュスは白状している。
どうやって演技指導を?

オーディションで選ばれたキャストたちはもちろん撮影現場やルールを知らないし、実のところあまり気にしてもいなかった。彼らはただ演じるためにやって来たので、健常者俳優の方が彼らを活かすように動き、適応する必要があったと言うアルテュス。例えば出演者のひとりルドヴィグにはイヤホンを通してセリフを伝えるやり方が合っていたし、アルノーには監督が先にセリフを言って、それを繰り返させる方法がやりやすかったというように、出演者によって演出法も異なる複雑な現場だったとか。撮影監督のジャン=マリー・ドルージュにも「何があっても常にカメラを廻して、現われた瞬間を撮るように」とアルテュスは指示していたそうだ。映像に映っているのはまさに本物の瞬間なのだ。
『サムシング・エクストラ!やさしい泥棒のゆかいな逃避行』
2025年12月26日(金)公開
フランス/2024/1時間40分/配給:東和ピクチャーズ
監督・出演:アルテュス
出演:クロヴィス・コルニアック、アリス・ベライディ、マルク・リゾ、セリーヌ・グルサール
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