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2)全米に衝撃が走ったロブ・ライナー監督夫妻殺害事件
ライナー監督と夫人を自宅で殺害したのは
2人の次男だった
2025年12月14日午後3時40分(現地時間)、映画監督ロブ・ライナーの自宅から緊急通報を受けたロサンゼルス市警は、現場へ急行。間もなく、ライナー(78)と妻のミシェル(70)の死が報じられ、地元LAはもちろん、全米に衝撃が走った。米国民にさらなるショックを与えたのは、ライナー夫妻の次男ニック(32)が両親を刺殺した容疑で逮捕されたという報道だった。
ニックは、ティーンエージャーの頃から薬物依存症でリハビリ施設の入退院を繰り返し、事件当時は両親宅の来客用離れに住んでいた。2015年には、自分の薬物中毒の経験を基にして、父が監督した『ビーイング・チャーリー』(日本未公開)の脚本を共著するまで立ち直っていたニックだったが、最近は母ミシェルが彼の精神状態を心配していたという友人の証言もある。また事件前夜には、友人のコメディアン、コナン・オブライエン宅のホリデー・パーティで、ライナー親子が口論していたところが目撃されていた。
(左から)ミシェル夫人、ライナー監督、次男のニック
コメディアン、カール・ライナーの長男として生まれたロブ・ライナーは、1960年代に俳優としてデビュー。1974年、レギュラー出演していたシットコム「オール・イン・ザ・ファミリー」で助演男優賞部門のエミー賞を受賞。1984年には、『スパイナル・タップ』で映画監督デビュー。以来、『スタンド・バイ・ミー』、『プリンセス・ブライド・ストーリー』、『恋人たちの予感』、『ア・フュー・グッドメン』等、名作、ヒット作を手がけていく。
『スタンド・バイ・ミー』が公開された翌年の1987年、ライナーは、同作の舞台になった架空の町キャッスル・ロックに因んだ自分のプロダクション会社キャッスル・ロック・エンターテイメントを創立。ハリウッドの有力監督・プロデューサーとして意欲的に創作活動を続けていくが、同時に社会・政治活動にも積極的に参加。リベラル派として民主党の政治家たちを支援するに留まらず、1998年にカリフォルニア州におけるタバコの課税収入を子供の早期教育予算に充てる提議を通す運動、そして2009年には同性間の結婚を禁止する提議を却下させる運動の中心的人物として貢献。その活躍ぶりが大いに注目された。
代表作の一つ『スタンド・バイ・ミー』
映画界だけでなく社会的にも大きな貢献を残し
讃えられる稀有な存在
優れた映画作家として、そして行動的な社会・政治運動家としてのライナーの原動力になっていたのは、彼の人間的優しさと共感力だったと、ロサンゼルス・タイムズ紙の文化評論家のメアリー・マクナマラは指摘する。それゆえ、ライナー逝去のニュースに際しては、『ア・フュー・グッドメン』に自分を抜擢してくれた思い出をインスタグラムで涙ながらに語るケヴィン・ベーコンをはじめ、デミ・ムーア、ケイリー・エルウィズ、ジェームズ・ウッズら、ライナー作品の出演者は全員、ライナーの人柄の素晴らしさを讃え、その死を悼むコメントを残している。
前述したように政治活動に積極的だったライナーゆえ、オバマ元大統領やクリントン元大統領、カマラ・ハリス元副大統領ら民主党の政治家たちはもちろん、共和党の政治家たちでさえ、ライナーの人柄や功績に敬意を払うコメントを残している。例外は、ライナーが生前、手厳しく批判していたトランプ大統領で「“トランプ錯乱症”という不治の病で死んだ」などとSNSで発信。あまりにも不適切な発言に左派・右派を問わず厳しい非難の声が挙がったが、トランプ本人は例によって非を認めないまま。極右の活動家、チャーリー・カークの暗殺事件へのコメントを求められたライナーが「政治的見解に関わらず誰であってもあのように痛ましく殺されるべきではない」と応えたのとは実に対照的である。
生前関わった名作ゆえにその死を惜しまれる映画人は珍しくはないだろうが、映画界に残した功績だけでなく、社会に大きく貢献した足跡をも讃えられると同時に、関わった人々からこれほど人柄を賞賛されるロブ・ライナーは、ハリウッドでも稀有な存在であった。
『ア・フュー・グッドメン』でトム・クルーズを演出中のライナー
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