積み重ね方を逆算して考え、盛り上げる前に静寂を作る
──ホラー演出において「見せる恐怖」と「見せない恐怖」のバランスはどのようにされましたか。
そこは一番難しいところですね。年齢を重ねると、どうしても「見えない怖さ」のほうが好きになってくるんですけど、子どもの頃は潔く見せてくれる表現もやっぱり好きだったんです。その頃の感覚も思い出しながら、「ここは潔く見せよう」とか、バランスを考えて作っていきました。
──観客に「音」で恐怖を与えるために、どのような工夫をされましたか。
やっぱり囁き声ですね。どこからともなく聞こえてくる囁き声といったものはとても効果的だと思っています。
ホラーなので、いつも以上に音の強弱を意識し、盛り上げるところは思いっきり盛り上げました。それは単純に音を大きくすることではありません。そこに至るまでの積み重ね方を逆算して考え、盛り上げる前に静寂を作る。メリハリをつけることが大事だと思います。

──編集は韓国でされたそうですが、いつもと違うスタッフと組んだことで、何か気づきはありましたか。
すべて言葉にしなければならない、ということですね。昔から一緒にやっている『658km、陽子の旅』の堀善介さんや、『#マンホール』や『ゼンブ・オブ・トーキョー』で組んだ今井大介さんとは、ほとんど阿吽の呼吸で作業ができますが、韓国の編集スタッフには「こうしてほしい」だけでなく、「なぜそうするのか」を論理的に説明する必要がある。それは自分にとっていい訓練になりました。
──本作を撮ったことで、監督ご自身のホラージャンル鑑賞に変化はありましたか。
以前は純粋に楽しんで観ていたんですが、今は「ここで一回安心させておいて、次で来るんだな」とか、演出の仕組みやタイミングを考えながら観てしまうようになりました。「ホラーって本当にテクニックの映画なんだな」ということを改めて実感しました。
──今後は観客としてよりも、監督の目線でホラー映画を見ることが増えそうですね。
そうですね。でも、やっぱりホラーは好きです。先日、ロバート・エガース監督の『ノスフェラトゥ』(2025)を観たんですが、ジョニー・デップの娘でもあるリリー=ローズ・デップさんの芝居が本当にすごくて感動しました。

──監督のフィルモグラフィの中で、本作はどのような位置づけになるとお考えですか。
それは正直、まだ分からないです。「またホラーが撮れたらいいな」とは思いますけれど、かといってホラー専門になるとも思っていないので、どうなるかは本当に分からないです。公開してから、観客の方々の反応を見て、決まってくる部分もあると思います。
──最後にひとことお願いします。
今回、本格的なホラー映画に初めて挑戦しました。かなり気合を入れて作りましたし、自分が思っていた以上に、不思議な熱量を持った映画になったと思っています。ぜひ多くの方に観ていただけたらうれしいです。
<プロフィール>
監督:熊切和嘉
1974年北海道帯広市生まれ。大阪芸術大学芸術学部映像学科卒。卒業制作『鬼畜大宴会』(97)が、ぴあフィルムフェスティバル準グランプリを受賞。同作は第48回ベルリン国際映画祭パノラマ部門をはじめ、10カ国以上の国際映画祭に招待され、第28回イタリア・タオルミナ国際映画祭ではグランプリを受賞。早くから国際的な注目を集める。以降『空の穴』(01)、『ノン子36歳(家事手伝い)』(08)、『海炭市叙景』(10)など、社会の周縁に生きる人々や、極限状況に置かれた人間の感情を繊細かつ鋭利に描く意欲的な作品を発表し続けてきた。桜庭一樹の直木賞受賞作を映画化した『私の男』(13)では、第36回モスクワ国際映画祭最優秀作品賞・最優秀男優賞を受賞。近年も『658km、陽子の旅』(22)では第25回上海国際映画祭にて最優秀作品賞・最優秀脚本賞・最優秀女優賞の三冠を達成し、『#マンホール』(23)が第73回ベルリン国際映画祭ベルリナーレ・スペシャル部門に正式招待された。『神社 悪魔のささやき』(25)は、熊切監督にとって初の韓国映画であり、本格的なホラー映画への挑戦となる一作。日韓を横断した制作体制のもと、新たなホラー表現に挑んだ意欲作である。

『神社 悪魔のささやき』2月6日(金)より新宿バルト9ほか全国公開
2.6公開『神社 悪魔のささやき』本予告
www.youtube.com<STORY>
神戸の山中に佇む廃神社で、日韓文化交流プロジェクトに参加していた大学生たちが忽然と失踪した。その中には、プロジェクトの責任者であるユミ(コン・ソンハ)の妹・ヒジョンも含まれていた。知らせを受けた祈祷師ミョンジン(JAEJOONG)は大学時代の後輩でもあるユミのもとへ韓国から駆けつけ、失踪事件の調査に乗り出す。二人は地元の牧師ハンジュ(コ・ユンジュン)や、大家の佐藤(木野花)の協力を得ながら手がかりを追うが、事態は思わぬ方向へと転がり、やがて真の恐怖と対峙することとなる—。
<STAFF&CAST>
監督:熊切和嘉
脚本:浪子想、チェ・ドゥクリョン
出演:JAEJOONG(ジェジュン)、コン・ソンハ、コ・ユンジュン、木野花ほか
2025年/韓国/カラー/シネマスコープ/5.1ch/原題:신사: 악귀의 속삭임/英題:THE SHRINE/96分/R-15/字幕翻訳:福留友子
配給:クロックワークス
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公式サイト:https://klockworx-asia.com/jinja/
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