佐久間大介(Snow Man)主演『スペシャルズ』は殺し屋たちが暗殺ミッションのためにダンス大会出場を目指して奮闘する姿を描くダンス・アクション・エンタテインメント。原案・脚本も務めた内田英治監督によるオリジナル作品である。殺し屋とダンスという意外な組み合わせはどう思いついたのか。内田作品が続く佐久間大介とはどのようにキャラクターを作っていったのか。佐久間担を自認する内田監督に熱い思いを語ってもらった。(取材・文/ほりきみき)

エンターテイナーとしての“いいスパイス”をたくさん持っている佐久間大介

──主演の佐久間大介さんは『マッチング』(2024)『ナイトフラワー』(2025)に続いて3作目ですが、今回主演に迎えた決め手、彼に期待していたことは何でしょうか。

彼とは4年前に『マッチング』(2024)で初めてご一緒して、もう4年が経とうとしています。その間にいろいろな作品を一緒にやってきましたし、「また一緒にやっているね」と周囲から言われることも多い。実際、気も合います。

今回、アクション映画をやりたいと思ったときに、「ダンスとアクション」となると、できる人は本当に限られてくる。アクションだけならまだ選択肢はありますが、ダンスは特殊技能です。そう考えたとき、必然的に「彼でやろう」という発想になりました。企画自体が彼ありきで動き出し、脚本も彼を前提に書いています。

これまでの『マッチング』や他の作品で演じてきたキャラクターとは真逆の役柄なので、本人にとっても、僕の映画では初めてのタイプの役だったと思います。やりづらい部分もあるのではと想像していましたが、現場に入ると意外なほどぴたりとはまり、役にしっかりのめり込んで演じてくれていたように感じました。

──ダンスは特に期待していた部分だったのですね。

ダンスに関しては、もちろん期待はしていました。でも、正直に言うと、期待していた以上に上手かったですね(笑)。

Snow Manのライブも観ていますし、実力があることは分かっていましたが、目の前で見るとやはり違う。僕自身、「ダンス甲子園」で本当にうまい人たちを間近でたくさん見てきましたが、その中に入っても遜色ないレベルだと感じました。

画像1: エンターテイナーとしての“いいスパイス”をたくさん持っている佐久間大介


──ダンスとアクション、似ているようで違う動きが求められるかと思いますが、そのあたりはいかがでしたか。

ダンスができる人がアクションをやると、どうしても少しダンスっぽい動きになってしまうことがあるんです。でも彼の場合は、たぶん本人も意識していたんだと思いますが、そうした兆候はほとんど感じられませんでした。

ひとつだけ困ったことがあるとすれば、動きが速すぎたことですね。普通のアクション俳優よりも、圧倒的にスピードがある。リアリティは増すのですが、その分、カメラが捉えきれない瞬間が出てくるんです。「少しスピードを緩めてほしい」とこちらからお願いしなければならなかったのは、正直、歯がゆかったですね。せっかくあれだけ速く動けるのに、抑えてもらうのは少し悔しい気持ちもありました。

──今回、単独初主演ということで、内田監督から演出面でサポートしたことや、言葉をかけたことはありますか。

初主演というのは、とても大切なものだと思います。だからこそ、何かサポートできることがあればという気持ちはもちろんありました。

ただ、最初にご一緒してから4年が経って、彼は人としても本当に大きく成長したと感じています。目に見えてしっかりした。だから今回は、特別に「支える」という感覚はあまりなかったかもしれません。

むしろ、彼のプロ意識を間近で見聞きして、「自分ももっと頑張らなければ」と思わされることのほうが多かったですね。彼のほうが僕の100倍くらい忙しいはずなのに、それでもあれだけ真摯に向き合っている。その姿勢には刺激を受けました。

──佐久間さんとは友達のように会話がポンポンポンポンと繋がっていくそうですね。

彼は僕だけでなく、誰にでも優しく接するのです。これはものすごい魅力の一つ。自分もあんな風になりたいといつも思いますね。

──ダイヤというキャラクターを作るうえで、佐久間さんと実際に共有したイメージやキーワードとかはありましたか。

やはり“殺し屋”という職業は、現実にあるのかもしれませんが、基本的にはとてもファンタジックな存在ですよね。『マッチング』の殺人鬼や、ほかの作品で演じた等身大の青年とはまったく違う役柄です。だからこそ、その部分についてはかなり話し合いました。

とはいえ、僕自身、実際に殺し屋に会ったことがあるわけではありません。普段は取材を重ねながら作品づくりを進めていきますが、さすがに殺し屋は取材のしようがない(笑)。

その代わりに、これまでに作られてきた数多くの“殺し屋映画”を資料として共有しました。昔の作品で面白いものを一緒に観たり、資料を調べたり。どんな佇まいが説得力を持つのか、拳銃の持ち方ひとつをとってもさまざまな表現がありますから。

例えば『ジョン・ウィック』(2015)のような作品も参考にしました。実は僕もこれを機に初めて観たのですが、結果的に過去のアクション映画を研究する時間になって、とても面白かったですね。

画像2: エンターテイナーとしての“いいスパイス”をたくさん持っている佐久間大介

──特に影響の強かった映画は?

やはり参考にしたのは、80年代から90年代の香港映画ですね。

いまはああいうタイプの作品はあまり作られていませんが、アクション映画の流れを振り返ると、まず香港映画があって、そこから韓国映画へと受け継がれていった部分があると思います。

だからこそ、アクションの演出に関しては、古き良き香港映画をかなり意識しました。あの時代ならではの熱量や身体性は、大きな参考になっています。

──確かにノスタルジーというか、その雰囲気を 『スペシャルズ』に感じます。

そうですね。椎名桔平さん演じる熊城が松本伊代の「センチメンタル・ジャーニー」(1981)というノスタルジックな曲を好む設定も含めて、作品全体にどこか懐かしさを感じさせる空気はかなり意識しました。キャラクターの趣味や佇まいにも、そうしたノスタルジーを滲ませることで、物語全体のトーンにも独特の味わいが生まれればと思っていたのです。

──佐久間さんに、役作りであえて抑えてほしかった部分はありましたか。

「抑えて、抑えて」と伝えることは、初めて一緒に映画をやった頃から、現場ではわりと多いかもしれません。これは彼に限った話ではないのですが、どうしても気持ちが高まってくると、セリフや感情表現が少しオーバーになる瞬間があるんです。

そういうときには、「少し気持ちを抑えて」「目の強さを抑えて」といった細かな調整をお願いすることがあります。彼はとてもパワフルな人間で、常にエネルギーがみなぎっているタイプ。だからこそ、抑えるべきところは抑えてもらう。そのコントロールは、わりと頻繁に行っているかもしれません。

いわば“Snow Manパワー”が出すぎてしまうこともある(笑)。エネルギーが有り余っていて、「いったいいつ休んでいるんだろう」と思うくらいです。その溢れる力を“作品にとって最適な形に整えていく”という作業ですね。

──作品を撮る際にSnow Manのファンの想いを意識しましたか。

Snow Manのファンのことは、パンフレットにも書きましたが、この映画界にも“佐久間担”がいるんですよね。世の中にはいろいろな“◯◯担”がいると思いますが、その中に“佐久間担”がたくさんいらっしゃる。その一人に、僕もなってしまった、という感じです。

もちろん、Snow Manというグループも大好きです。でもそれ以上に、彼がSnow Manであるかどうかに関わらず、“佐久間大介という人間”そのものが好きなんです。そこは変わらないですね。

──殺し屋としての鋭い顔と、児童養護施設あじさい園で働く職員としての優しい顔。この切り替えについてはいかがでしたか。

その切り替えは本人もかなり苦労していたと思いますし、僕自身も現場でいろいろと考えました。

児童養護施設の前で子どもたちと一緒に踊るワンカットがありますが、あそこは「とにかく素でやってほしい」と伝えたんです。子どもたちにも特別な段取りはなく、台本にも細かい指定はありませんでした。もともと詳細な演出プランがあったわけではなく、現場でみんなが自然に集まって、一緒に踊っている、という空気を大事にしました。子どもたちも本当に素で楽しんでいましたし、彼の人柄もそのまま表れていたと思います。

一方で、殺し屋として敵と対峙する場面では、まったく違う顔を見せる。その落差がとても良かった。家でピストルを手にイメージトレーニングをする、作り上げた表情と、子どもたちと踊るときの素の表情。その差をしっかりと作品に刻めたことは、大きな収穫だったと感じています。

画像3: エンターテイナーとしての“いいスパイス”をたくさん持っている佐久間大介

──本作で、佐久間さんの俳優としての底力をどう感じましたか。

僕は基本的に、音楽をやっている人がすごく好きなんです。彼らはステージの上で、1時間、2時間という時間を一気に集中して、感情をフルに使って表現しますよね。その感覚は、映画の現場にも通じるものがある。だからスイッチの入り方がとにかく速いし、しかも深い。音楽をやっている人には、そういうタイプが多いと感じています。

グループの一員として活動している経験も、芝居に入るうえで大きく作用していると思います。役に入った瞬間の入り込み方が、本当に深い。ぐっと一気に潜っていく。その集中力は、俳優として大きな武器になっているのではないでしょうか。

通常、役に入るまでにはある程度時間がかかるものです。現場でも徐々に作っていくことが多い。でも音楽をやっている人は、その切り替えが本当に早い。普段からステージで瞬間的に感情を高める訓練をしているようなものですから。これまでにも歌手活動をしている方々と何人も仕事をしてきましたが、総じて集中力が高く、スイッチが入るのが早いという共通点があります。人前で何かを作り上げるという経験の賜物でしょうね。僕にはとても真似できないと思います。

佐久間さんも、その資質が俳優としての魅力につながっている。もちろん、人柄が良くて優しいというのも大事ですが、それだけではエンターテイナーとしては足りない。そこに技術的なスパイスが加わって、初めて強い表現になる。彼はその“いいスパイス”をたくさん持っていると思いますし、まだまだ秘めているはずです。

次の作品では、そこをさらに掘り下げてみたいですね。「やりすぎだろう」と言われるくらいに(笑)。次はキラキラした映画になるかもしれません。

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