SFファンのみならず、世界の映画ファンから注目を集めて大ヒット中の本作。映画のみどころとあわせて、一大プロジェクトを背負うライアン・ゴズリングにも光を当て、本作の全貌に迫ります。(文・平沢薫(作品紹介)、荻原順子(ライアン・ゴズリング キャリア)/デジタル編集・スクリーン編集部)*この記事はSCREEN5月号(3月19日発売)掲載の記事を再編集したものです。

映画界の一大プロジェクトは彼だからこそ託されたーーライアン・ゴズリング

世界が注目する大作の顔に抜擢されたライアン・ゴズリング。本プロジェクトの成り立ちを追いながら、彼が選ばれた必然性をキャリアから読み解きます。

出版前に映画化決定——大争奪戦となった原作小説

コロナ禍が全世界に広がる様相を見せ始めた2020年3月、アメリカのエンターテイメント業界メディアは、SF小説「プロジェクト・ヘイル・メアリー」が映画化されることになったと報じた。

「プロジェクト・ヘイル・メアリー」の著者は、初の映画化作品『オデッセイ』(2015)がレビュー的にも興業的にも大成功を収めて以来、ハリウッドで注目されるようになった小説家のアンディ・ウィアー。近年、小説を映像化した作品はオリジナル脚本映画の1.5倍の興行成績を挙げているというデータもあり、原作や著者の知名度があらかじめ獲得済みの小説の映画化は、ハリウッドでは「手堅い」ビジネスと目されている。それゆえ、新著「プロジェクト・ヘイル・メアリー」は2021年5月出版予定だったが、その1年以上前に映画化権の争奪戦になり、300万ドルの値段でMGMが競り落とす結果になった。MGMは、その2年後の2022年3月にアマゾンに買収され、「プロジェクト・ヘイル・メアリー」は、大手映画スタジオの劇場作品から、配信大手が劇場公開を強化するための戦略的作品への色合いを濃くしていくことになる。

ライアンが監督コンビを推薦!各分野の“星”が集った一大計画

「プロジェクト・ヘイル・メアリー」映画化企画をまとめたのは、大手タレント・エージェンシーのCAAで、CAAのクライアントであるライアン・ゴズリングが主役の宇宙飛行士グレース役を演じると同時に製作も担当。原作者のウィアーもCAAのクライアントであることは、この企画の関係者たちにとって非常に好都合だったことは想像に難くない。単なる出演者ではなく、企画の推進力としても製作に参加していたゴズリングは、ウィアーの原稿を読み終える前に、本作の監督として、フィル・ロードとクリス・ミラーをMGMの重役たちに強く推薦したという。『くもりときどきミートボール』(2009)で監督デビューし、『21ジャンプストリート』(2012)や『LEGO®ムービー』といったヒット作を手がけたロードとミラーの起用について、当時MGMの重役だったマイケル・デ・ルーカとパメラ・アブディは「ドラマとアクション、そしてユーモアの絶妙なバランスを取るのが非常に上手いフィルとクリスは、このユニークな作品の監督には完璧な人選」というコメントを残している。2020年6月には、『オデッセイ』の脚本でアカデミー賞脚色賞にノミネートされたドリュー・ゴダードが原作の脚色を担当することが決定。このニュースを報じたハリウッド・レポーター紙は「輝ける星がまた新たにこの星座に加わった」と表現して、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を成功へと導く立役者が揃ったことを示唆している。

どんな役にも“馴染む”。だからこその抜擢か

その“星座”の中心で輝いているのは、主演のライアン・ゴズリング。宇宙に飛び立つのは、月面に降り立った初めての人として有名なニール・アームストロング役に次いで2回目ということになるが、俳優としての役の幅の広さには定評がある。カナダ出身のゴズリングは、12歳の時にディズニーのミッキーマウス・クラブのオーディションに合格して芸能界入り。実年齢より若く見えるルックスを活かして、20歳を過ぎても『完全犯罪クラブ』(2002)や『16歳の合衆国』(2002)にティーン役で出演した後、2004年、『きみに読む物語』が大ヒットしてブレイクを果たす。作品がヒットすると、主演俳優には類似作への出演オファーが次々と舞い込むことが多く、ゴズリングの場合も同様だったに違いないが、続く出演作としてゴズリングが選んだのは情緒不安定気味で謎めいた青年を演じた『ステイ』(2005)や薬物依存症の中学校教師を演じた『ハーフネルソン』(2006)だった。後者の演技は映画評論家たちから称賛を集め、アカデミー賞主演男優賞に初ノミネートを果たす。その後も、ロマンスもの(『ブルーバレンタイン』2010)、政治ドラマ(『スーパー・チューズデー〜正義を売った日〜』2011)、アクション・サスペンス(『ドライヴ』2011)、ドラメディ(コメディ調のドラマ、『マネー・ショート 華麗なる大逆転』2015)、ミュージカル(『ラ・ラ・ランド』2016)、SF(『ブレードランナー 2049』2017)、コメディ(『バービー』2023)、アクション・コメディ(『フォールガイ』2024)と、まるで映画全ジャンルをほとんど網羅しているかのような幅の広い出演作が並ぶ。ゴズリングについてもう1つ特筆すべき事は、さまざまなジャンルの作品に出演している一方で、容貌をドラマチックに変えること無く、作品ごとに雰囲気をガラリと変えることができる自在な演技力とカリスマを備えていること。ゴズリングならではの個性を発揮しながらも、どんな作品でも演じるキャラクターにすんなり馴染んでしまう才能は貴重なものだと言えよう。そんなゴズリング、アカデミー賞に3度ノミネートされているものの、いずれも受賞は逃し、メジャーな映画賞の受賞は『ラ・ラ・ランド』のゴールデン・グローブ、コメディ/ミュージカル部門男優賞と、『ハーフネルソン』のインディペンデント・スピリット賞主演男優賞だけというのは、ファンとしては納得いかない。とはいえ、2026年3月現在まだ45歳という年齢なので、息の長い俳優として今後の活躍は充分期待できるだろう。

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』
全国公開中
アメリカ/2026/2時間37分/配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
監督:フィル・ロード、クリストファー・ミラー
出演:ライアン・ゴズリング、ザンドラ・ヒュラー、ライオネル・ボイス、ケン・レオン、ミラーナ・ヴァイントゥルーブ、ジェームズ・オルティス(声)

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