作品選びにお悩みのあなた! そんなときは、映画のプロにお任せあれ。毎月公開されるたくさんの新作映画の中から3人の批評家がそれぞれオススメの作品の見どころポイントを解説します。(デジタル編集・スクリーン編集部)

〜今月の3人〜

稲田隆紀
映画解説者。花粉に悩まされ、身体の不調を憂う。それにしても不景気。仕事が元気の源なのだが。

北島明弘
映画評論家。ブルーレイ録画機の生産が停止。CSで放送した映画を録画して楽しむ派なので、将来が不安です。

松坂克己
映画ライター・編集者。今年も相変わらず公開本数は多いが、その中でヒットする洋画は少ないのが寂しい。

稲田隆紀 オススメ作品
『レンタル・ファミリー』

オスカー俳優ブレンダン・フレイザーが
自然体の好演を見せるヒューマン・コメディ

画像1: 稲田隆紀 オススメ作品 『レンタル・ファミリー』

評価点:演出4/演技5/脚本4/映像5/音楽5

あらすじ・概要
日本にいる売れない俳優、フィリップはふとしたことで他人を演じる”レンタル・ビジネス”の存在を知り、その一員となる。さまざまなファミリーのもとで他人を演じるうちに、細やかな日本の喜怒哀楽、機微に触れていく。

2022年、『ザ・ホエール』の主演でアカデミー賞に輝き、みごとな復活を遂げたブレンダン・フレイザーが選んだ、日本を舞台にしたヒューマン・コメディ。歌手、ダンサー、画家、写真家など多彩な貌を持つ監督、HIKARIが、レンタル家族を題材に日本並びに日本人の心を前面に押し出しつつ、現在の絆の在りようを軽やかに紡ぎ出す。撮影、美術など日本人スタッフの技をみごとに活かし、嫌味なく日本の美を背景にしているあたりも巧みな戦略である。

かりそめであっても、幸せな人間関係を生み出す大切さ。ドラマチックな盛り上げよりも、淡々と家族の現実を浮かび上がらせる。もちろん、ブレンダン・フレイザーの素晴らしさは言うまでもない。自然体、あまり装うことなく、画面に現れて日本の家族たちに接触し、戸惑いを含め温もり、善良さを発散する。登場するだけで好感度が上がるといいたくなる。柄本明をはじめ、平岳大との掛け合いも臭くなく、まことに好もしい。日本人キャストの英語も含めていささかも違和感を覚えない仕上がりだ。

画像2: 稲田隆紀 オススメ作品 『レンタル・ファミリー』

公開中、ウォルト・ディズニー・ジャパン配給
©2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

北島明弘 オススメ作品
『ブルームーン』

傑作ミュージカル誕生の夜を背景に
伝説的作詞家の「時代の終焉」を描く

画像: 北島明弘 オススメ作品 『ブルームーン』

評価点:演出5/演技5/脚本5/撮影4/音楽5

あらすじ・概要
「オクラホマ!」初演の夜。作詞家ロレンツ・ハートはかつての相棒リチャード・ロジャースの成功を見せつけられ、饒舌なまでに「オクラホマ!」をけなし、そして絶賛し、コンビ復活のためにかき口説く。

月をテーマにした歌曲は数多いが、「ブルームーン」以上に有名な曲はほかにない。本作はその作詞者ロレンツ・ハート(1895〜1943)の人生、人となりを一夜の出来事に凝縮したドラマである。

ブロードウェイで「オクラホマ!」が初演された1943年3月31日。四半世紀にわたってハートと組んでいた作曲家リチャード・ロジャースが、オスカー・ハマースタインの作詞で作り上げたミュージカルだ。ハートは有名レストラン・バーのサーディーズで、相手かまわず話しかけ、「オクラホマ!」をくさす。だがロジャース、ハマースタインがバーにやってくると、「傑作だ」とほめちぎる。変わり身の早さにはあきれるが、ロジャースとの絆を維持したい彼の思いが垣間見られ、同時に彼の時代の終焉を象徴する場面と言えよう。

ほとんどのシーンがバーに終始するワン・シチュエーション構造だが、窮屈な感じはない。ハーツを演じたイーサン・ホークの好演と、登場人物に合わせて場所と話題が移動するリンクレターの絶妙な演出のなせる業だろう。

公開中、ロングライド配給
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松坂克己 オススメ作品
『しあわせな選択』

監督パク・チャヌク×主演イ・ビョンホンの
ケミストリーが最高!

画像: 松坂克己 オススメ作品 『しあわせな選択』

評価点:演出5/演技5/脚本4/映像4/音楽4

あらすじ・概要
製紙会社で管理職を務めていた平凡な中年男マンスは、会社の買収劇に伴うリストラで解雇されてしまう。再就職は難航。思い余ったマンスは「ライバルがいなくなれば自分が採用される」と思い込み、ある行動を取る。

韓国映画界で独自の地位を築いているパク・チャヌク監督(『別れる決心』)が、主演に『非常宣言』『コンクリート・ユートピア』と好調のイ・ビョンホンを迎えて放ったブラックコメディだが、いまのこの二人の顔合わせでなければ出せないケミストリーが全編に充満していると感じられる。

リストラで幸せだった生活を失い、再就職を焦る中年男が思いついたのは……という展開が、突飛なようでいながらいかにも現代的な発想。これをいかに見せるかが監督と主演者の力量を問われるところだが、見事にエンターテインメントに仕上げてくれている。さすがというべきだろう。

原作はアメリカの小説家ドナルド・E・ウェストレイクの「斧」だが、舞台を現代の韓国に移し替え、グローバル化やAIの導入といった視点も取り入れた脚色にはもちろんパク監督も参加しており、“いまの時代”らしい作品に仕上げている。次第にエスカレートしていく主人公の行動を、ディテールも含めて見せ切るのは、いまのイ・ビョンホンならではの演技といえるだろう。

公開中、キノフィルムズ
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